久々に起業ネタを書いてみようと思います。そう思った理由は産経の「『金利ある世界』で2025年倒産は2年連続1万件超 焼き肉店など最多更新業種も相次ぐ」という記事を拝見したからです。このブログでも焼肉屋などの倒産が増えているという話題は時折触れてきました。株価が高値乱舞する中で2025年の企業倒産数が1万件を超える報道に「あれ?」と思う方も多いでしょう。なぜ倒産するのか、そして個人の起業は今後どうなるのか考えてみたいと思います。
記事によると倒産件数で上位の業種は経営コンサルタント(159件)、訪問介護(85)、焼肉(51)、菓子小売り(46)、スポーツ教授(36)、調剤(35)となっています。
個人的におかしいなぁ、と思うのは経営コンサルタントやスポーツ教授業種で、本来は資本をあまり必要としない業種のはずです。つまり経営者が全て。もちろん、幅広くやっている方は数名の人を抱え、事務所を持ち、事務所の人材も雇う方もいらっしゃるでしょう。ではなぜ倒産するのでしょうか?
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7,8年前だったと思いますが、どこかの記事に経営コンサルタントの起業顛末の話題が報じられていました。大手企業を定年退職して意気揚々とコンサル事業を立ち上げます。まず事務所選びは長いサラリーマン時代の経験から大手町のような場所とピカピカの建物で眺望もある部屋を選びます。自分は外を出歩くことも多いので事務員兼留守番も雇います。正に理想の定年退職後の第二の人生です。ですが、その夢心地は瞬く間に崩壊します。大手企業に勤めた経験を生かして現役時代のつてをたどっても仕事なんて取れないのです。取引先は自分の腕を買ってくれていたわけではなく、自分の所属する会社の名前と組織を買っていたことに気がつくのです。
大手企業にお勤めの方の強みは名刺であります。取引相手から見ればその判断はその有名企業とビジネスができるかどうかであって営業担当者は失礼ですが、あまり重要ではないのです。その証拠に日本の名刺は企業名、部署名、肩書、そして最後に個人名です。これ、重要度の順番なのです。北米の名刺は真逆。名前、肩書、部署名、会社名の順です。この違いに気がつかず、退職金をはたいて事務所のリースを数年間コミットしたという方もいらっしゃるでしょう。思うに経営コンサルやスポーツ教授業種の方は財務力は退職金や親、親せきから借りた資金といったレベルの方が多いのでちょっとした失敗に案外あきらめも早いのだと思います。
もちろんAIが多くの問題を解決してくれたという時代の変化もあります。皆さん、気がついていると思いますが、労賃が一番高いのです。だから労賃をかけない方法を考えることがビジネスでは重要な考え方です。
次にいわゆる個人事業主が経営する飲食系ビジネス、つまり焼肉、菓子小売り(街のケーキ屋)、ラーメン店、小料理店、弁当屋、おにぎり屋の類はどうでしょうか?私は8割が腕自慢のノリのビジネスだと思うのです。焼肉屋とかラーメン店経営者は自分が焼肉やラーメンが大好きで「俺様流の店を作る!」という方が多いのだと思います。
もう一つのトリックは雑誌やメディアで取り上げられる店の経営失敗です。ユーチューバーやインスタグラマーは必死で新しいネタを探しています。新店開店となれば一目散に店に行き、「動画廻してもよいでしょうか?」と店主にアプローチ。店主はもちろん「どんどん宣伝してください。今日はサービスしますね」という具合。各方面に取り上げられて店主は「千客万来」かと思いきや、割とヒマ。結局店はユーチューバーやインスタグラマーに利用されただけで彼ら彼女らのファン層を喜ばせるだけなのです。つまり彼らの作品を見る側からすれば「へぇ、こんなのもあるんだ」で終わり。
焼肉、ケーキ、ラーメンの類はレッドオーシャンを通り超えて血みどろの戦いであります。また飲食業の潜在的集客力を測るにはとても便利なフェアシェアの理論を使い、徒歩5分圏内の居住人口数と競合店舗から引き出すビジネスの潜在的価値計算もせず、「店、開けちゃった」ではダメなのであります。特に日本の場合、地域により昼間の人口と夜の人口がまるで変わるのでこの潮の満ち引きのような人流も計算しないとアウトなのです。
お前は個人事業主や起業家の将来をどう見ているのか、と聞かれたら「厳しい」と言わざるを得ないと思います。起業に必要なもの6つ。
財力、圧倒するノウハウ、人脈、改善し続ける熱意、人が驚くビジネス、オタク度
だと思います。「人が驚くビジネス」って何?と言われるでしょう。誰もやっていないビジネスのことです。ブルーオーシャンとも言います。もちろん、やみくもにブルーオーシャンに飛び込んでもそこにサメがいるかもしれません。しっかりした戦略と5年後のビジネスのピクチャーを描くこと、失敗した時の打開プランをあらかじめ考えておくことかもしれませんね。
私はカナダで書籍事業をしています。昔はいくつか日系の書店もあったけれど全部なくなったから私は参入したのです。黄昏時のブールで一人で泳ぐようなもの。売り上げのうち、小売りは1/3程度。残りは卸業で取引相手は学校とか法人です。法人を口説くのは楽じゃないのです。「あんた誰?」からスタートしますので信用を一歩ずつ築くことが大事です。
ローマは一日にしてならず、という諺はすべての起業を目指す方に捧げたい言葉です。開店初月から黒字でウハウハなんてないし、仮にそうだとしたら6か月後には閑古鳥かもしれません。また店がいつも満員なのに赤字続きでもう無理、という経営者もいらっしゃるでしょう。値上げすれば客が逃げるという恐怖心があるからです。日常食べる焼き鳥とかランチ定食では差別化が図りにくく、あの店はランチに行ったからディナーはいかないという人もいます。真の意味での千客万来ができる実力あるビジネスは10のうち1つあるないかで今後は更に厳しくなるのでしょう。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年1月16日の記事より転載させていただきました。