
問題の本質は「失敗しなければ学べないことを、失敗する前に学んで失敗を回避することは可能か」という問いだと思っています。
「食品の消費税率ゼロ」を主張する人々は、次のように言います。
「これまで財政赤字について散々問題が指摘されてきたが、生活者目線では何も問題が起こってこなかったじゃないか。これまで問題が起きなかったのに、なぜこれから問題が起こると言えるのか。それに、消費税減税で景気が良くなって税収が増えれば、財政赤字の問題は解決するじゃないか。」
さて、これにどう反論すればいいのでしょうか。
「これまで問題が起こらなかったのだから続けていい」という主張に対しては、「実際に問題が起きる」以外に反証手段がないように思われます。
「消費税減税で景気が良くなって税収が増えれば財政赤字は解決する」という主張も、現実にそうならない事態が起こらない限り反証できないように思われます。
失敗を回避する方法その1:道理を説明する
経済学や財政学の観点から様々な問題点を指摘する人は多くいますが、「食品の消費税率ゼロ」を主張する人には届きません。そもそも聞く気がないし、理解する気も能力もないようです。
仮に説明を試みても「高橋洋一のような高名な経済学者もそう言っているじゃないか」と反論してきます。高橋洋一氏は彼らの中で「高名な経済学者」と認識されており、本人にとってもそれが生活の糧であり、学者としての矜持も捨てているので、今後も彼らの「理論的支柱」であり続けるでしょう。
また彼らは財務省を敵と認定し「敵が嫌がることをやる」という一種の憂さ晴らしとして主張している部分もあり厄介です。生活が困窮していて、たとえ自分の生活がさらに悪くなっても敵に一矢報いることができるならやってやれという心理があるのではないかと感じています。そう思っているのは私だけでしょうか。
物事には「専門家だけが知っていればよいこと」と「大衆が理解しておくべきこと」があると思います。経済学や財政学には「有権者の理解レベルが投票行動に影響する」という現実があります。選挙に立候補する政治家が当選するには、結局は有権者の理解レベルに合わせて公約を作るしかありません。
今回の「食品の消費税率ゼロ」公約合戦はその結果だと考えるのであれば、有権者に経済・財政の理解を深めてもらう努力が不足していたと言えると思います。今更どうしようもありませんが…。
失敗を回避する方法その2:失敗を学習できるレベルの問題が起こる
ある程度の円安や長期金利の上昇といった問題が起こり、「食品の消費税率ゼロ」を主張する人が「自分たちの考えは間違っていた」と認識して方向転換させることは可能でしょうか。理想は「本人たちが間違いを認めるが、実害は大きくない」というレベルの問題が起きることです。
この「ちょうどいいレベルの問題」を調整して起こすことは可能でしょうか。イギリスのトラス・ショックはある意味でこの性質を持っていたのかもしれません。結果としてイギリス経済に大きな傷跡を残さず(?)、重要な教訓を残したと言われています(私は経済の専門家ではないため、本当にどの程度のショックだったかは分かっていません)。
ここで問題となるのは、減税規模が不十分だと「規模が小さかったから効果が出なかった。もっと大胆にやれば効果が出たはずだ」と主張されることです。つまり、ある程度の規模で減税し、「見た目としては大きな問題」が起こっても「日本経済への実害は小さい」というレベルの問題を発生させることが可能なのか、私には全く想像がつきません。
最後に
現状は「世論が盛り上がってしまったのでやるしかない」という状況で、太平洋戦争前夜に似ていると思っています。太平洋戦争も多くの教訓を残しましたが、「実害は小さい」レベルではありませんでした。
また今回の選挙は、高市首相周辺が独断で読売新聞に情報をリークしたことからスタートしたという意味では、関東軍が独断で起こした満州事変にも似ています。自民党内の長老支配を打破し、下克上を狙ったのかもしれません。
ちなみに、かつて高橋洋一氏と双璧をなしていたリフレ経済のインフルエンサーである上念司氏は「供給力が増えないと食料品を減税してもインフレが起こるだけなので効果はない」として路線変更を図っています。フィットネスジム経営が本業の上念氏にとっては生活の死活問題ではないため、沈む船から脱出しているように見えます。
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井上 孝之
米国株も国内株もそこそこ仕込みが完了したので、インフレが起こっても円安になってもそこそこ儲けられる技術系サラリーマン。
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