ここ20年の間の欧州における日本というのは非常に存在感が薄く、ニュースとして取り上げられる話題は日本の少子高齢化が主流でしたが、日本の国債の急激な利上げで、日本が再び金融ニュースで大きく取り上げられており、中国よりも注目されています。
しかしこの注目は決して良い意味ではありません。
2025年12月9日発売の私の最新書籍である『世界のニュースを日本人は何も知らない7』でも解説していますが、これまで長い間日本があまり取り上げられてこなかったのは、日本は政治的に安定しており暴走しない国であるという前提があったからです。
民主的に選ばれた自民党が長い間政権の座にあり、資本主義国でありながら社会主義的な側面も強く、政府の決定や先行きが予想しやすい国だったからです。
ビジネスや投資家からすると日本というのは大きく儲けることができないが、安定性が高く安心感がある国でした。安定は良いことであり悪いことではありません。
これを一般の生活で例えれば、市役所に勤めている従兄弟のようなものです。大きく稼がないし面白みもないが、安定した雇用に給料があり、約束はちゃんと守ってくれる地味な従兄弟です。
しかしこの日本が国をどうやって運営しているのかということは常に「ある程度は」注目されていました。
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世界で最も高齢化が進む国で、一体どうやって社会福祉に使う財源を確保しているのかということです。それをどう使うかも注目されていました。
これはなぜかといいますと、欧州もアメリカも少子高齢化に悩んでおり、ここ50年で支出が大きく増えているのが高齢化対策費用だからです。
FTがまとめたグラフによれば、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、オーストリア、日本の6カ国では1970年代から高齢者の福祉に対する政府支出が急激に増加し、似たようなパターンになっています。その一方で公共投資はマイナスになっています。
高齢者の福祉に対する政府支出の上昇が最も大きいのは日本です。
そして今回の日本の総選挙では自民党をはじめ、どの政党も公共支出を増やすということが公約の中心で、そのターゲットは明らかに高齢者や低所得者です。
仮に今回の総選挙で有権者の支援を得て、景気の刺激と構造改革を進めることができれば問題は無いかもしれませんが、世界の市場はどうもそのようには見ていないようです。
これまでは静観してきた海外も今回は日本の能力に疑問を抱いているわけです。
最近の日本の国債の短期間での金利の急騰は、2022年のイギリスの「トラスショック」以上だという見方もあります。欧州では、日本政府はもっと現実的になるべきだという声が主流です。
公的支出による経済の刺激と、AI、半導体、防衛への投資を優先した生産性と輸出の向上という構造改革で景気が上向きにするという方針は、日本と同じく少子高齢化に苦しむ他の先進国も注目しています。
しかし日本政府が提示している策は問題を解決する可能性が高いとは言えないとみられています。特に問題は支出の削減が甘すぎるということです。相当大胆なことをやらなければ信頼は取り戻せないでしょう。
しかし日本は民主主義の先進国の抱えるジレンマの代表のような国です。ある意味最先端です。
有権者の多くは高齢者で福祉による支援や医療補助を歓迎し増税は望んでいません。少子化支援や教育にも興味が薄く、産業復興策も彼らの日常生活には無縁です。高齢者の多くは資産はあっても売ることができない住宅なので実はそれほどお金を持っていません。消費欲も薄く投資にも興味がありません。
しかし多くの票を握っているのは高齢者であって、政治は彼らの支援を受けなければ国民の代表になることができません。
若い世代や国全体に良いことを提案しようと思っても高齢者の好むことではないので票を失う。大胆な支出削減も反発される。
民主主義なので独裁政権のようなことをするわけにはいきません。しかし民意は反映しなければならない。
そして生活が苦しい中年や若い世代はどんどんと激化しておりどの先進国でも極右が大人気になっています。政府は彼らの生活を改善する施策には興味が薄く、老人優先なので不満が溜まっているのです。しかし民主主義は数を重視するのでどうしようもありません。日本が何か創造的な施策を実施して状況を改善すれば真似する国が出てくることでしょう。
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