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アメリカでは「その髪型、素敵!」など、日常のなかで気軽に明るく、さりげない褒め言葉を交わす文化があります。アメリカ在住30年の起業プロデューサー・上野ハジメ氏は、これを「プチ褒め」として提唱しています。ポジティブな言葉のやり取りは豊かな人間関係の構築に役立ちます。
今回は、この「プチ褒め」が実際にアメリカでどのように交わされているのか、『人づき合いが超ラクになる「プチ褒め」の魔法(上野ハジメ プレジデント社)』から再構成してお届けします。
アメリカ生活では「プチ褒め」が日常茶飯事
ある日、前庭の垣根の手入れをしていたら、三輪車で通った近所の3歳男児が、何か話しかけてきました。
ここはテキサス。大きめの一軒家ばかりが並ぶ住宅地。とっさのことに彼の英語が聞き取れないでいると、隣にいたお母さんが、「あなたの家、とっても素敵だよって言ったのよ」と、微笑みながら伝えてくれたのです。
猛暑の中、大汗をかきながら庭仕事をしていた私は、その言葉に感動。まさかの3歳児の褒め言葉に心がパッと晴れやかになって、疲れも吹き飛んでいきました。
お次は床屋に行った翌日のこと。ジムのクラスで、私に向かい、女性インストラクターがみんなの前で言いました。「ワオ!そのヘアスタイル最高に素敵!ベリーセクシー!」瞬間、カァ〜ッと顔が熱くなってしまいましたが、かろうじてお礼を返すことだけは忘れませんでした。
アメリカ在住歴はとっくに30年を過ぎた私ですが、「プチ褒め」は日常の思いがけない場面で突然やってくるので、毎回、心地よい驚きが伴います。
アメリカ人は、本当に褒める天才なんだなと気づいたのは、ハワイに移住して、すぐの頃でした。スーパーで買い物をすると、レジの人は必ずと言っていいほど話しかけてきます。それがアメリカ流のサービスなのか、フレンドリーで、昔からの顔馴染みのように接してくるのが常。
そして絶対に「褒め攻撃」がやってきます。「そのiPhoneのケース素敵ね!どこで買ったの?」「セーターの色がとってもきれい!今年、その色、流行りなのよね〜」彼らの観察力はすさまじく、思いもかけないことから会話の糸口を見つけてきます。
犬のおやつを買えば、「どんな犬を飼っているの?写真ある?わ〜、最高に可愛い!あなたも彼女も幸せな巡り合わせね!」と、口元もついほころぶ陽気な会話へと発展していくのはいつものことです。
日本にはリップサービスという言葉があり、お世辞だとか、口先だけで喜ばせるという使われ方をするので、褒められると何か下心があるのではないか、本心じゃないのではないか、と警戒心が働いてしまう場合もあるでしょう(英語のリップサービスは「口約束」という意味なので使われ方が異なります)。
でも、本来、褒めるって、心の温度がふわっと上昇するような効果がある素敵な行為。思いついたポジティブなことを、さりげなく伝えるだけです。
私の提唱する「プチ褒め」も、大げさなことではなく、気軽で明るく、さりげない褒め言葉を交わすこと。SNSやチャットで、文字の会話をすることが多いからこそ身につけておきたい、これからの時代のコミュニケーションスキルです。
身内だからこそ褒めるべきアメリカ的理由
多くのアメリカ人は、人を会話で楽しませることに長けているだけではなく、「沈黙は悪」という価値観を持っているかのようです。エレベーターで二人きりになれば、必ず話しかけてきます。どんなに気配を閉ざし、「私に話しかけないで!オーラ」を出しまくってみたところで、彼らは強力なバリアをくぐり抜け、天才的に会話のきっかけを見つけてきます。
週末の予定、今夜の予定、何を食べるのか、誰と会うのか、何か特別なことをするのか……。軽妙な会話の中で、ひとつでもきっかけとなる情報を聞き出すと、必ずポジティブな言葉を返してきます。「今夜は、観光地のステーキ料理で日本からの客をもてなすのだ」と言えば、「あのレストランは美味しいわよね、センス抜群!」と、褒めてくれる。会話に困って、「ヘアカットの予約があるくらいかなあ」と言えば、「あなたのヘアスタイルは清潔感があって素敵。腕のいいサロンなのね」と、また褒めてくる。
たった数十秒の会話なのに、ポジティブな言葉のやり取りがそこにあるだけで心が通い、温かな感情で全身が潤っていくような感覚に浸ることができます。
彼らはまた、身内を褒めることの達人でもあります。日本語では、愚妻、愚息、お口汚し、つまらないものなどと、身内や自分を一段下げることで相手を上げる、という手法で敬いを表現します。が、英語世界にはそのような文化的背景はありません。ダイレクトに、一番大切な人やものこそ素晴らしいと、みんなの前で最大限に褒め称えるのです。
「私のワイフは、子どもができるまでは銀行の広報マネージャーとして活躍し、その経歴を生かして学校のウェブサイトのボランティアとしてニュースレターを送ったりしてるんだ」
「忙しい中でも、健康に気を遣った極上の料理を作る天才でもあるんだ。今日は、彼女が朝から料理を仕込んでくれた。どうぞ堪能していってください」
みんなに、ありったけの言葉を尽くして褒めるのですが、あまりにも当然のこととして振る舞うし、作為的なところがまったくないので、こちらもごく自然に受け取れるものです。
また、アカデミー賞やグラミー賞などの授賞式で、受賞したスターたちがスピーチの場面で、長々とお世話になった人たちの名前を読み上げるシーンがありますよね。そして、いかに彼らの応援や貢献が自分の成功にとってかけがえのないものだったか、ひとりでは決してなし得なかったことだと、深い感謝の念を表現します。
謙虚さと感謝、そして周囲のスタッフや共演者の手放しの称賛。短いけれども、しっかりと「プチ褒め」を挿入し、最後は配偶者や子ども、肉親への感謝で結ばれる。ここで、名前を言うのを忘れようものならば、家庭不和の危機にもなりかねないと、まことしやかなジョークにもなるほど、重要なことなのです。
これこそが、周囲のみんなからも応援され、支えられ、より良い仕事を続けていくための、アメリカ流の感謝のマナーなのでしょう。
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上野ハジメ 起業プロデューサー/NLPライフコーチ/イムア・プロジェクトLLC代表
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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2025年10月7日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。







