「イスラエル・フィルハーモニック・オーケストラ」&主席指揮者ラハフ・シャニ。
ベートーベン、ピアノコンツェルト5番、ソリストはサー・アンドラーシュ・シフ。チャイコフスキー、シンフォニー5番。とてもいいプログラム。
楽しみにしてたのだけれど、怖くて恐ろしい演奏会になる…。

イスラエルのガザ攻撃やこのオーケストラのプロパガンダとしての側面に対し、数日前から公演中止を迫る文章が出るなど不穏な中、フィルハーモニーの前には警官いるし、セキュリティもいつもより厳しい。客席にも警備員多く、ピリピリな雰囲気の中、20分遅れで開演。


入り口に人が溢れてるのは、いつもより警備が厳しいから

何事もなければいいと願いながら、美しいベートーヴェンが始まってうっとり聴くこと数分、耳を擘くサイレンや笛みたいな音がして、オケピット横奇数席からビラみたいなのをたくさん撒きながらわめく女。会場騒然、演奏中止。こわいよお。

左上で起こった騒ぎが落ち着き、みんなスタンディングして奏者にエール
すぐに連れ出されて演奏再開するも、さらに数分後、今度は舞台後方席偶数側で、なんと火炎瓶を手にした男が叫び始める。燃えている時間かなりあって、おそろしすぎる…。男は、周りの人たちに取り押さえられたり殴られたり、遠目にも恐怖…(驚いたのは、近くの席の人たちがわりと動じずにいたこと。マニフェスタシオンでこういう光景見慣れてるのか、フランス人)。奏者も舞台から避難。
この時点で、帰ってしまう観客もちらほら。気持ちわかる、落ち着いて聴いてられない。

右奥で火炎瓶騒ぎ。実行犯は、激怒した観客に追いかけられ、一番前の列まで逃げてきた
このあと、警備に連れ去られたけど、遠目にも怖すぎるシーン…

一度舞台を去る奏者たち
シャニとシフは肩を組んで退場

数分後、演奏会再開のため、戻ってくる奏者たち
会場総立ち
なんとか収束し、再び奏者たちが戻り、大喝采の中、演奏スタート。と、またしても横奇数側から、火炎瓶。さっきほど大ごとにはならなかったものの、ひぃぃぃ〜、なことにはかわりない。
その後は何事もなくベートーヴェンの素晴らしいピアノコンツェルトが終わり、壮大なブラヴォーと拍手。シフはアンコールもやって、前半終了。

再び左で火炎瓶。会場に煙が漂う
ここ、演奏会会場だよね…

どうにかコンツェルトを終え、拍手に応える
落ち着いて聴いていられなかったけれど、音楽感想をメモしておくと、シフはミスタッチが多かったり推進力は弱かったりするけど、高音のキラキラ響く音色や表現はまあまあ。
オーケストラは、弦が見事。前回、メータで聴いた時には、弦と木管とくにファゴットとクラリネットに感動したけど、今回のトップは違う人たち。
シャニの指揮は、端正な中にワクワク感を少し加えたイメージ。ただ、コンツェルトなので、そこまではっきり特色は出ない。


後半、チャイコフスキーで一番好きなシンフォニー。楽しみなのに、またなにか起こるかも、と気もそぞろ、警備員の無線が鳴ったりもして、100%集中できなくて悲しい。久々に5番を聴けるの、楽しみにしていたのにな…。
一楽章は力強くワクワク、二楽章はちょっとテンポが好みではない、四楽章ラスト、壮麗でいいね!全体的に、軽快で端正でかっこいい。少し拳を聴かせてメロディアスにするところもあるけれど、それほど個性を出さずにまとめたイメージ。金管、弦(特にコントラバス)、素晴らしい。比較するとやっぱり木管がちょっぴり弱いかな。このシンフォニー、木管、肝。


再び、割れるような歓声と拍手がオーケストラと指揮者に降り注いだ後、アンコール(なんだった?)で弦の素晴らしさを再確認。
さらなる喝采を受け、シャニが再び指揮台に立ち、奏者全員(セロ以外)立ち上がる。会場に響き始めるのは、イスラエル国家。かすかに歌声も聞こえる。

お見事ホルントップ

他の金管も素晴らしい


芸術と政治は別、と思いたいけど、歴史を振り返っても、そういうわけにはいかないのでしょうね。
こんな美しい音楽を聴いて、よくもまあ暴力で妨害しようという気持ちでいられるものだ、と考えてしまうのは、きれいごと? 音楽は、主張のためでなく快楽のためにあると思う。
多分今、ヨーロッパツアー中。他の都市ではどんなことになった(なる)のかしら。
長くなった演奏会を終えて外に出て、少しかけた満月を眺めながら、いろいろ考えてしまう。
それにしても、フィルハーモニー、被害者ではあるけれど、もう少しセキュリティーしっかりして欲しい。どうして火炎瓶を何本も持ち込めたのか…。あの火炎瓶が舞台に投げ入れられてたらどんな大惨事になってたことかと思うと、ゾッとする。
素晴らしい音楽を、世界中で平和に楽しめますよう。

編集部より:この記事は加納雪乃さんのブログ「パリのおいしい日々6」2025年11月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「パリのおいしい日々6」をご覧ください。







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