高市首相が消費税減税をしない可能性

選挙の時、高市首相は食品にかかる消費税を2年限定でゼロにすることを「検討する」と述べました。この検討がニュアンス的に「するのだろうな」という感じで伝わったことは否めません。一方、そうは言ってもやらないだろうという意見があったのも事実です。私はそもそもが反対派でした。

高市首相 首相官邸HPより

さて、ここにきてもしかしたらやらないのではないか、という気がしないでもありません。

まず2年の消費税減税は識者や学者などから反対の声が多く上がっています。ではそれを押し切ってまで検討する理由は何か、と言えば①選挙対策 ②それが最終目的ではなく移行期にすぎないこと のどちらかであります。私は高市氏はその両方を狙ったのだとみています。では最終目的は何か、と言えば皆様がお気づきの通り給付付き税額控除であります。

税金の仕組みは一般的に還付を受けることは可能でしたが、それは納付した金額までというのが発想の原点でした。つまり税金を3万円払った人は3万円までの還付は受けられるが、4万円には絶対にならないのが従来の仕組みです。これを変えて、収入が少ない人には4万円でも5万円でも還付できるようにするという仕組みです。これは確かに日本の税システムにおいては画期的であります。

多分、高市氏は選挙前に食品の消費税の2年間ゼロを掲げた際、これが頭にあるもののこの制度設計を実現させるためには数多くのハードルがあるので3年ぐらいかかるだろう、という読みがあったのだとみています。

私は消費税にいったん手を付けると元に戻しにくくなることと将来、再び消費税に手を付けやすい理由を生み出すのでそれはやるべきではないと考えています。もしも高市政権がこのまま数年続くことが確約ないし確実視されているならこの移行プランはアリです。ただ、私は世の中、一寸先は闇で、何が起きるかわからない中で首相のコミットメントに全面的に依存するのはリスクアリだと思うのです。

ならば議論されている給付付き税額減税を27年春から簡易版でできるようしたらどうか、という一部の案はチャレンジングですが、面白いと思います。フルバージョンにするには十分な制度設計が必要ですが、簡易版ならできるのではないか、という話です。

思い出して頂きたいのがコロナ時の各種制限。特に渡航と入国にかかる制限は異様なほどの厳しさで制度的にも途中何度かアップグレードしていきましたが、簡易版は速攻で適用ができたのです。ということは財務当局のやる気と国民会議などでの合意があればやれるのではないか、と思うのです。

そもそも食品の消費税減税の財源は5兆円規模。これを給付付き減税に回せばよいだけの話です。ただ、この場合、すべての国民がこのメリットを享受することができなくなります。消費税減税ならば訪日外国人など本来税メリットを必要としない人も含めすべての人がその恩恵に預かれます。ところが給付付き減税ならば一定以上の収入の人や短期滞在で就労していない外国人はそのメリットはありません。ここは周知する必要があります。

例えばカナダならば消費税クレジットという仕組みがあり、毎年その金額水準が変更されます。2024年のケースでいうと結婚して子供一人の場合、63161㌦の年収まで、つまり700万円程度の夫婦合算収入に満たない人はカナダの消費税(GST)相当の一部を還付してもらうことができます。またこの金額は物価スライドで毎年だいたい30万円ぐらいずつあがっています。

日本ではさすが年収700万円には手が届かないと思いますが、400万円程度で線引きする気がします。

このメリットは低所得者やシングルマザーのような方に有効な支援となることです。税体系において誰がメリットを得られるか、という発想の中に平等と格差の発想があります。広く等しく誰でも税メリットをもらえる方法は人気がありますが、その効果が限定されることはかつての現金給付で指摘されています。また日本は貧困率が割と高いのでボトムアップという意味での格差をつけることは世論的には受け入れられるのではないかと思います。

仮にこの発想が展開できれば悪手と称される消費税減税はしなくてよいので高市氏の専門家や海外からの評価は上がると思います。議論が多いところではありますが、野党、及び国民会議参加者には説得しやすい内容であり、あとは一気にその作業部隊がどこまで準備できるか次第ということになりそうです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年2月26日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。

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