日本の銀行のお客様は「利用者」ではなく「金融庁」

内藤 忍

海外不動産の購入資金の送金のため銀座の海外送金に強い銀行に出かけました(写真のメガバンクではありません)。以前はネットで手続きが完了したのですが、昨年のある日突然通知があって不動産購入資金に関しては窓口でしか手続きできない対応に変わってしまいました。

出かけた支店の店頭で受付の行員に変更理由を聞くと「送金目的に以前はあった不動産購入という選択肢が無くなってしまったからです」と木で鼻を括るような他人事の回答でした。その人が悪い訳ではありませんが、「無くなった」のではなく銀行側が勝手に選択肢を「無くした」だけの話です。

なぜこのように顧客の利便性を損ねるような改悪をするのでしょうか。

チャッピー先生に聞いてみると次のような模範解答が返ってきました・

1. 金融庁による「連座制」の恐怖
銀行が恐れているのは、顧客の利便性を損なうことより金融庁からの「業務改善命令」を受けることです。

マネロン対策のガイドラインに基づき、一例でも不備が見つかれば、銀行は厳しい行政処分を受けるリスクがあります。

銀行員は、顧客のためにリスクを取るよりも、金融庁に言い訳ができる「エビデンス(証拠書類)」を集めることに必死です。

2. FATF(金融活動作業部会)という外圧
国際機関による対日審査で「日本はマネロン対策が甘い」と突きつけられた金融庁が国家のメンツをかけて銀行に世界一厳しいと言われるほどのチェックを強要しました。

いわば、官僚の不手際をカバーするために、民間の利便性が犠牲になっている構図です。

3. 採算度外視のコンプライアンス
銀行にとって、数千円の手数料しか得られない海外送金は、もはや「割に合わない業務」です。不備があれば数億円規模のダメージを受ける。それならば、少しでも「面倒」だと感じた顧客は最初から断る(デリスキング)のが、彼らにとっての経済合理性になってしまっています。

銀行の本来の目的の1つは円滑な資金移動手段の提供です。それが当局からの指導を恐れ顧客よりも彼らの顔色ばかりを伺う「ポチ」に成り下がっているのは仕方ないのかもしれませんが残念なことです。まさにドラマ「半沢直樹」の世界です。

購入資金は48回の分割払いの手続きのために毎回店頭に出向き、送金内容を手書きで作成して手続きを待つのは送金手数料が無料の銀行であっても割りには合いません。

今回の不動産の購入資金送金に関しては、こちらの銀行を使うのを諦めて「別の方法」でやることにしました。

日本の銀行のお客様は「利用者」ではなく「金融庁」。銀行の店頭で何か手続きをしようとすると、いつも血圧が上がるので毎回行くのが億劫です。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2026年2月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。

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