ゼレンスキー大統領と亡命イラン皇太子の話

ウクライナ大統領府公式サイトには「ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、亡命中のイラン皇太子と会談」というニュースが配信されていた。「パリで13日、ゼレンスキー大統領は、亡命中のイラン皇太子レザー・パフラヴィー氏と会談した。大統領は『ウクライナはイラン国民の自由のための闘いを支持する』と強調する一方、『イランによる中東および湾岸諸国への攻撃を非難した』と述べた。両者の会談は今年2月のミュンヘン安全保障会議(MSC)以来、約1ヶ月ぶり2回目だ。

亡命中のイラン皇太子レザー・パフラヴィー氏(右)と会談するゼレンスキー大統領、ウクライナ大統領府公式サイトから、2026年3月13日

ゼレンスキー大統領は「ウクライナはロシアと協力しない自由で民主的なイランを望んでいる。そのようなイランはウクライナだけでなく、ヨーロッパと中東地域全体の安全保障に貢献するだろう」と強調した。

一方、レザー・パフラヴィー皇太子は、イラン政権とロシア連邦の協力関係を非難し、ウクライナの主権と領土保全の承認を改めて表明した。また、イラン政権とその同盟国、特にロシアに対する国際的な圧力を強化することの重要性を指摘した。

最後に、パフラヴィー氏は今後のより直接的な対話を求め、ゼレンスキー氏との密接なコンタクトを打診している。

ちなみに、今回の会談は、ロシアの主要な武器供給源であるイラン現政権の弱体化を狙うウクライナ側の戦略的な動きとして注目された。

ところで、ウクライナとイランの関係は、2022年のロシアによるウクライナ侵攻以降、緊迫した状態にある。ウクライナとイランの対立の最大の原因は、イランによるロシアへの武器供与だ。イランはロシアに対し、自爆型ドローン「シャヘド」などを大量に提供しており、これがウクライナのインフラ攻撃や民間人の犠牲に直結している。また、イランがロシアへ弾道ミサイルを供給しているとの指摘もあり、欧米諸国とともにウクライナはこれを強く非難している。これらを受け、ウクライナは2022年にイラン大使の承認を取り消し、外交関係を事実上の断絶に近い状態まで格下げした。

中東での軍事衝突はウクライナ情勢にも複雑に影響している。イランとイスラエル・アメリカ間の緊張が高まる中で、ゼレンスキー大統領は「ロシアとイランの連携」が世界的な脅威であると訴え、国際社会にさらなる支援を求めている

なお、ゼレンスキー大統領によると、ロシアはイランにシャヘド戦闘ドローンを供給しており、イランはこれを米国とイスラエルへの攻撃に使用しているという。ゼレンスキー大統領は15日、CNNのインタビューで、「イランがロシア製のシャヘドを使って米軍基地を攻撃したことは100%事実だ」と述べた。イランは当初、ウクライナとの戦争のためにロシアにドローンを供給していた。ウクライナの情報筋によると、ロシアは現在、自国でドローンを製造しているという。

ロシアとイランは昨年1月17日、包括的戦略パートナーシップ条約を締結している。同条約は、ウクライナ戦争や中東情勢を背景とした実質的な防衛同盟に近い性質を帯びている。ロシアと北朝鮮の条約と同様に、一方が武力攻撃を受けた際の軍事的支援を含む内容が明記されている。

パリでの両者会談について、イラン当局側は強く反発し、ウクライナを「攻撃の正当な標的」と見なすなど、極めて険悪な応酬が続いている。 ゼレンスキー氏は、イラン現体制崩壊への期待を込め「イランの人々がテロ政権(現政権)を排除し、自由を手にすることは正当なことだ」と述べ、「現体制の終焉がウクライナだけでなく世界全体の安全保障に寄与する」と強調している。

それに対し、イラン当局は、ゼレンスキー氏が亡命皇太子パフラヴィー氏と公式に会談したことを「主権への侵害」および「敵対行為」として激しく非難している。イラン議会の国家安全保障・外交政策委員長エブラヒム・アジジ氏は、「ウクライナはイスラエル(シオニスト政権)へのドローン支援などを通じて戦争に実質的に加担しており、国連憲章第51条に基づき、ウクライナ全土がイランの正当な攻撃対象となった」とSNS上で警告した。イラン外務省や当局に近いメディアは、ゼレンスキー氏を「ピエロ」と呼び、パフラヴィー氏との会談を「失敗者同士の無意味な会合」として切り捨てている。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年3月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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