長年プーチン政権を支持してきたブロガー、イリヤ・レメスロ氏の「転向」

プーチン大統領を称賛し、長年プーチン政権を支持してきたロシアの著名なブロガー、イリヤ・レメスロ氏(Ilya Remeslo)が突然豹変し、プーチン大統領を激しく批判し出したのだ。著名なブロガーの急激な転向にロシア国内でも大きな動揺が広がっている。

ロシアの著名なブロガー、イリヤ・レメスロ氏

レメスロ氏はプーチン大統領を泥棒であり犯罪者と呼び、即時退陣と裁判にかけるように求めだしたのだ。そしてウクライナでの戦争を非難し、制裁がロシア経済に壊滅的なな打撃を与えていると指摘しているのだ。そして自身のTelegramuチャンネル「RemesLaw」などで、現状のロシアを「ボロボロの状態」と表現しているのだ。

レメスロ氏は現在、サンクトペテルブルクの第3精神病院に拘束されているとの情報があり、すべての通信手段が途絶えているという。他の親政権派ブロガーやメディアからは、「精神疾患の悪化」や「西側のエージェント」といった非難を浴びせられている。

モスクワ・タイムズ紙は、親クレムリン派ブロガーのレメスロ氏の劇的な方針転換について、「レメスロ氏は最近、プーチン大統領を戦争犯罪人として非難し、裁判を求めるマニフェストを発表した。これまで政権の熱烈な支持者として知られていたレメスロ氏の突然の方向転換はロシア政界に衝撃を与え、エリート層内部の潜在的な亀裂の兆候と見られている」と報じているほどだ。

イリヤ・レメスロ氏のプロフィールを紹介する。ロシアの弁護士(42)であり、SNS(特にTelegram)で強い影響力を持つ政治ブロガー。法律の専門家として、ロシア連邦市民院(公的な諮問機関)のメンバーを務めるなど、現体制に近い位置で活動してきた。長年、アレクセイ・ナバリヌイ氏をはじめとする反体制派の「不正」を法的に追及することに心血を注いできた。ナバリヌイ氏の資金源を調査し、当局に告発する役割を担っていたため、野党支持者からは「クレムリンの刺客」と目されてきた。

2024年に獄死したアレクセイ・ナバリヌイ氏の裁判では検察側の証人として出廷し、反体制派を追い詰める中心人物だった。2014年のクリミア併合を「無血の統合」として熱烈に支持したように、当初はプーチン氏を「ロシアの土地の統一者」と信じていた。

彼がプーチン大統領を称賛し、体制を擁護してきた背景には、同氏が「法と秩序」を重視、プーチン政権こそがロシアに「安定」と「法の支配」をもたらしたと考えてきたからだ。1990年代の混乱を繰り返さないためには、強力な中央集権が必要であるという思想だ。

そのレメスロ氏は2026年3月17日の夜、自身のTelegramチャンネル「RemesLaw」に「私がウラジーミル・プーチンへの支持をやめた5つの理由」というマニフェストを投稿した。①憲法違反と権力の私物化、プーチン氏による任期延長(憲法改正)を「法的なペテン」と断じ、国家を私物化している。②ウクライナ戦争の泥沼化、ロシアの若者の命を無意味に浪費する大惨事になった。③経済の壊滅的打撃: 西側の制裁によりロシア経済は「石器時代」に向かっており、国民の生活水準が回復不能なレベルまで落ち込んでいる。④孤立と主権の喪失:、ロシアを国際社会から孤立させ、中国への従属を強めたことで、かえって国家の主権を損なった。⑤腐敗の深刻化: 反体制派の腐敗を叩いてきた自分が、実は政権内部の「桁違いの腐敗」を目にすることになった。

レメスト氏はマニフェストの発表直後、身柄を拘束され、サンクトペテルブルクの第3精神病院に収容されたという。ロシアではソ連時代から政治的異分子を「精神疾患」として隔離する手法が取られてきた。今回の措置も、彼の「転向」を病気によるものとして処理し、その影響力を削ぐための政治的抑圧の一環であるとの見方が強まっている。

ちなみに、. 昨日まで「同志」だったレメスロ氏の豹変に対し、他の親プーチン派インフルエンサー(いわゆる「Zブロガー」など)は一斉に攻撃を開始した。具体的には、「精神疾患」説の流布だ。 多くの親政権メディアは、彼の主張を内容で反論するのではなく、「彼は過労で精神を病んだ」「誇大妄想に陥っている」として、彼の言葉に信憑性がないと印象付けている。また、「西側のエージェント」説だ。「MI6(英情報局)やCIAに買収された」という定番の陰謀論も展開されている。そして「ナバリヌイを追い詰めた男が、今やナバリヌイ以上の裏切り者になった」として、極刑や厳罰を求める声がSNS上で溢れている。

それに対し、クレムリンは個別のブロガーの批判を無視(黙殺)することが多いが、レメスロ氏の影響力を考慮し、ドミトリー・ペスコフ大統領報道官が異例のコメントを出している。曰く「レメスロ氏の最近の発言は、深刻な精神的過労によるものであり、非常に残念な個人的悲劇だ」と述べている。内容への反論を避け、あくまで「健康問題」として片付ける姿勢を強調している。

Amnesty International などの国際人権団体は、レメスロ氏を「表現の自由に対する弾圧の最新の犠牲者」と位置づけ、即時解放を求めている。特に、彼を刑務所ではなく精神病院に収容したことについて、「政治的異分子を病人と見なして隔離するソ連時代の『処罰的精神医学』の復活である」として、強く批判している。

一方、英ガ―ディアン紙は レメスロ氏の出来事を「クレムリンが長年飼い慣らしてきた番犬が飼い主に牙を剥いた」と表現。単なる一ブロガーの批判ではなく、政権内部の論理を知り尽くした人物による反旗であるため、ロシアの権力構造に「パニック」を引き起こしている可能性を指摘している。

プーチン大統領 クレムリンHPより


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年3月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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