シートベルトせよ、不況への足音:安い原油に胡坐をかいてきた「宴の後」

先般のブログで経済の最悪を想定せよ、それは経済が止まることだ、と申し上げました。「この男も大げさだよな」と思っていただければ結構。ただ、その時に記したように経済の暗雲が世界中を覆い始めていることは事実です。経済は例えれば精密機械の歯車を回す感じで、複雑系の機械時計の様なものです。政治家や中銀のプロたちは歯車を止めないように支えていると言ってよいでしょう。ところが彼らにもできる限界があります。それを超えれば「お手上げ」であり、それは制御不能になることもあるのです。

宴を終わらせたトランプ大統領 ホワイトハウスXより

中銀ウィークだった先週、日米、EU、カナダは据え置きを決定しました。予想通りなのですが、ある意味、中銀が介入するのをためらった=手に負えないというニュアンスを残したのは事実です。中銀は経済のメンテは上手なのですが、壊れたものを直すことはできないのです。今、まさにこの局面に立っていると言えるのです。

私の友人が上場大手の生保レディしているのですが、先月、店で1番を取りました。別に彼女は保険に精通しているわけでもなく、子育てから少しだけ時間的余裕ができて入社し、まだ2年ぐらいで見よう見まねの域ですが、ひたすらまじめに努力してきたのでしょう。道を外さず、ブレずに頑張っているわけです。「何にそんなに頑張るの?」と聞けば「LAに子供を連れて大谷を見に行きたい」と。手が届きそうなつま先立ちの目標があるからよりやりがいがあるのでしょう。

我々は現実離れしたAIの世界の夢に酔いしれていました。いや、AIそのものは現実にひたひたと我々の社会に浸透しつつあります。一方でイラン戦争でホルムズ海峡が封鎖され石油がない、ナフサもない、LNGの価格も急騰となれば60代以上の方しか覚えていないあの1973年のオイルショック再現か、という記憶が蘇るのです。そうなればAIよりトイレットペーペーという話です。(あの時、なぜトイレットペーパーだったのか、という話は横に置いておきます。それに今はウォシュレットがあるからその乾燥機能も使えばトイレットペーパーの消費は相当減らせるはずですがね。)

あの時は銀座からネオンの灯が消えたり、狂乱物価で日本中がパニくったのですが、今、あのシーンよ再び、となるのか、瀬戸際にあるとみています。

まず、世界経済がスタグフレーションになれば物価は上がる、雇用は落ち込むシナリオになります。そうなれば中銀は無力化します。ホルムズ海峡がいずれ開通したとしても世の中が防御的になり、物価は上昇するでしょう。そもそも以前提示したように金銀銅があれだけ上昇したのになぜ原油価格は昔のままか、という疑問に誰も答えられないのです。物価変動要素を取り込めば原油がバレルあたり150㌦になっていても本来驚くべきことではないのです。むしろ、安い原油に胡坐をかいてきた我々が躍りすぎたともいえ、今、真の意味で「宴の後」にあるという見方もできるのではないでしょうか?

私どもが開発したグループホームを建設した工事業者。1年ぐらい前にその社長と奥さんとビールを飲んだのですが、その際、奥さんから「私は今年でリタイア(FIRE)する。だって株や為替の自動売買で勝手に毎日お金が入ってくるのよ。だからこの人(ご主人)も会社を近いうちに畳ませるの。そして私とピックルボールの相手をしてもらうわ」。このご主人、脂の乗り切った40代後半で現場の仕切りはベテランなのです。もったいないと思うと同時にそんなにうまく行く株や為替自動売買システムが世の中にあるわけないのです。1年前は誰が何をやっても儲かったのです。いずれ人生の後悔をするでしょう。

日本人は概してまじめなので何かあっても忍耐力はあると思います。ただし、日本の体質として経済への耐性が脆弱である点は指摘しておきます。なぜか、その原点に立ち戻ればほぼ単一民族故に行動規範が似ているためにある予期していない問題が生じるとほぼすべての会社がそれにトラップされる弱点です。

ただ、私が見ている限り、北米経済の脆弱性の方がはるかにシリアスで体力勝負的なところになるとみています。つまり力あるところはこれで更に大きくなり、余力がないところは潰れるでしょう。AIの投資が嵩んでいる企業やメタのようにAI投資がうまく行っていない企業などこれからGAFAMでもその先頭集団は確実に崩れてくるとみています。

季節は春の入り口ですが、経済はこれから厳しい冬を迎える感じになりそうな気がします。シートベルトをしっかりすることを私は推奨します。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年3月24日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。

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