「スロベニア」といえば、「スロバキアではないですよ」と言われる。当方が住む「オーストリア」はオーストラリアではないようにだ。旧ユーゴ連邦共和国は6共和国、2自治州から構成されていた。その中でスロベニア共和国は最北部に位置し、最も経済発展していた共和国だった。人口は全体の10%にも満たなかったが、国内総生産は全体の20%、外国貿易では30%を占める文字通り旧ユーゴ連邦の国民経済を支える共和国だった。自主管理社会主義システムを積極的に推進し、経済は潤っていた。他共和国からは“優等生”として羨まれていたほどだ。

「勝利宣言」をしたスロベニアのゴロブ首相、スロベニアTVから(PopTV)
スロべニアは地理的にはオーストリアに近く、首都リュブリャナはオーストリアの南部ケルンテン州のクラーゲンフルトとその町の風情がよく似ている、ただ、人口は211万人と小国であり、政治情勢は他のバルカン諸国と比べると、安定していることから、日本のメディアでスロベニアが登場する機会が少なかった。ただ、トランプ米大統領の奥さん、ファーストレディのメラニア夫人はスロベニア出身だということで、スロべニアに関心を持つ人が増えたともいわれている。
前口上はこれで終え、コラムのテーマであるスロべニア国民議会(下院、定数90)の結果を報告する。欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)の加盟国スロベニアでの選挙は接戦となった。 スロベニアで22日、国民議会の投開票が実施され、ロベルト・ゴロブ首相が率いる中道左派「自由運動党(GS)」が中道右派のヤネス・ヤンシャ党首「スロベニア民主党(SDS)」に僅差で勝利した。ただし、暫定結果によると、ゴロブ首相率いる連立政権は過半数を失ったため、連立交渉が難航することが予想されている。連立交渉次第ではSDSの政権交代のチャンスはある。
開票率99.9%の時点で、自由運動党(GS)は28.6%の得票率で社会民主党(SDS)27.95%を破り、勝利を収めた。党に対する中傷キャンペーンの圧力にさらされながらも、ゴロブ氏は最終局面でSDSを抜いた。これにより、GSは29議席、SDSは28議席を獲得した。ゴロブ首相は22日夜遅くに勝利宣言を行った。
ゴロブ氏は22日夜、首都リュブリャナの党本部で、「有権者は自由運動だけでなく、民主主義そのものに投票した」と述べた。その後、議会で記者団に対し、政権樹立に向けて「議会内のすべての民主政党」と協議する意向を表明した。同氏は、可能な限り幅広い政党による連立政権を目指すという。
59歳のゴロブ氏は、2022年に政界の新人として政権に就き、現在は3党による中道左派連立政権を率いている。一方、ヤンシャ氏は2004年から3期にわたり首相を務めたが、2022年の選挙でゴロブ氏に大敗を喫した。
GSとSDSに加え、5つの政党が議席を獲得した。その中には、親ロシア・反欧州政党のResni.ca(真実)が議席を獲得した。第3党にはキリスト教民主派NSiが率いる保守連合で、次いで社会民主党、そして元副首相アンジェ・ロガル氏の民主党が続いた。いずれの二大政党も単独では90議席中46議席という絶対多数を獲得する見込みがないため、4%の得票率を突破した小政党がキングメーカーの役割を担うことになる。
社会民主党と左派によるこれまでの連立政権はもはや過半数を維持できない。しかし、ヤンシャ氏が右派ブロックと組んだとしても過半数を確保できる見込みはない。ヤンシャ氏はすでに僅差の選挙結果に異議を申し立てる意向を示している。STA通信によると、同氏は「すべての投票所のすべての票を再集計する」と述べた。
両陣営は選挙前、今回の選挙を国の将来を左右する重要な決定だと位置づけていた。ゴロブ政権下では、スロベニアは社会改革に重点を置いた自由主義的で親欧州的な路線を歩んできた。ゴロブ政権下でスロベニアでは同性婚が合法化された。外交政策においては、パレスチナ独立国家を支持し、イスラエルに対する武器禁輸措置を課した。
一方、ヤンシャ氏は法人税減税を掲げ、政府の財政浪費を非難し、今回の選挙を「腐敗に対する国民投票」と位置づけた。さらに、「伝統的な家族」といった「スロベニアの価値観」の回復と、一部の非政府組織への国家補助金の削減計画を発表した。ヤンシャ氏はハンガリーのオルバン首相の盟友であり、ドナルド・トランプ米大統領の強力な支持者と目されている。そのため、ヤンシャ氏が勝利すれば、スロベニアの外交政策は大きく方向転換する可能性が高い。
なお、選挙運動は、外国による干渉疑惑が表面化した。当局は、イスラエルの企業ブラックキューブが、ゴロブ政権の腐敗ぶりを描いた動画作成に関与していたかどうかを捜査している。ヤンシャ氏はブラックキューブの代表者と会ったことは認めたものの、動画の公開への関与は否定した。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年3月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。







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