米イスラエル軍が先月28日、イラン攻撃を開始して以来、世界のメディアの報道は一斉に中東情勢に集中し、世界の原油市場に大きな影響をあるホルムズ海峡の封鎖を巡るイラン側の動向が刻々と報じられている。
一方、先月24日で戦争勃発から4年が経過したウクライナ戦争の動向については報道は減少してきているが、ロシア軍のウクライナへの軍事攻勢は継続され、激しさすら増してきている。今年に入り和平交渉が開かれたが、成果らしい成果はなく、次回の交渉日程も決まらないまま戦いは今日まで続いている。2月中旬にジュネーブでロシア、ウクライナ、アメリカの代表による三者協議が行われたが、具体的な成果は得られなかった。

ウクライナのオレナ・ゼレンスキー統領夫人は、米国訪問中にウクライナ書籍コーナーの開設式典とウクライナ語音声ガイドの発表会に出席。2026年3月27日、ウクライナ大統領府公式サイトから
ロシアとの和平交渉に取り組んできた米国がイラン戦闘に次第にのめり込み、戦況が米国の予想を超えて厳しくなってきたこともあって、トランプ米政権の優先順位がイラン戦闘への対応となって以来、ウクライナ問題は影を薄くなっていった。
それだけではない。ワシントン・ポスト紙によると、米国政府はウクライナ向け兵器を中東地域に転用することを検討しているというのだ。その理由はイラン内戦によって米軍の特に重要な弾薬備蓄が枯渇しているためだという。
パリ郊外で開催されたG7外相会談に参加したルビオ米国務長官は27日、米国がウクライナに既に供与した武器を転用する可能性について、「今のところ転用は行われていないが、可能性はある。米国が必要とする場合、我々はそれを何よりもまず米国のために確保する」と述べている。
同国務長官はまた、ウクライナのゼレンスキー大統領が「米国が安全保障の保証の条件としてウクライナ東部ドンバス地域全域のロシアへの割譲を要求している」と発言していることに、「ゼレンスキー大統領はウクライナ和平交渉における米国の立場について嘘をついている」と非難し、「ゼレンスキー大統領は単にウクライナに対する安全保障は戦争が終わるまで発効しないと告げられただけだ。ウクライナによる領土譲歩とは一切関係がない」と述べている。
ちなみに、モスクワは、4年以上続く侵略戦争を終結させるためには、ウクライナがドンバス地域全体と現在ロシアが占領している領土を割譲しなければならないと主張しているが、キーウはこの要求を断固として拒否している。両者の和平へのスタンスで何の変化もないのが現状だ。
キーウ側は和平交渉では米国がロシア側の主張を支持していると感じ、領土譲歩を強いられるのではないか、といった懸念を払拭できないでいる。トランプ米大統領がイラン戦闘を理由に米国がロシア産原油供給に対する一部の制裁措置を停止したことに対し、ゼレンスキー大統領は「モスクワがその収入を侵略戦争の資金源として利用する可能性がある」と指摘し、トランプ氏の決定に強い不満を表明したばかりだ。
一方、トランプ大統領は北大西洋条約機構(NATO)の欧州加盟国が「イラン攻撃は我々の戦争ではない」と主張し、トランプ大統領が提案した、ホルムズ海峡の海上封鎖を解除するための軍事作戦への参加に応じていないこともあって、「ウクライナ戦争は欧州の戦争だ」と強調し、ウクライナ問題の関与を急減させている。実際、米国は2025年以降、ウクライナへの軍事・人道支援をストップさせている。
米国がウクライナ問題への関与を減らす一方、イラン戦闘の停戦への出口模索に腐心している中、ロシアのプーチン大統領はイラン戦闘で世界の原油・ガス市場が急騰、外貨収入が増加してきたことを歓迎、米イスラエルのイラン戦闘の長期化を図るために様々なルートを通じ、イランを支援してきている。その一方、ロシア軍はウクライナへのミサイル、無人機攻撃を続けている。
以下、27日から28日にかけウクライナ軍とロシア軍の戦闘状況を報告する。
ウクライナ当局によると、ロシア軍が夜間にオデッサ市をドローンで攻撃し、子供を含む少なくとも10人が負傷した。オデッサ州知事のセルヒー・リサク氏は「キーフ・インディペンデント」紙に対し、ドローンが産科病院と3つの教育機関の屋根に命中したと語った。当局によると、住宅ビルも攻撃を受け、4階と5階の間が「部分的に破壊された」という。リサク知事は、負傷者10人のうち少なくとも2人が重体だと述べたが、攻撃の詳細については明らかにしなかった。
一方、ロシア中部でウクライナのドローンによる大規模攻撃あった。当局によると、ロシア中部ヤロスラヴリ州でウクライナのドローンによる攻撃があり、子供1人が死亡した。同州のミハイル・エヴラエフ知事は、テレグラムのメッセージサービスで、他に3人が負傷したと発表した。複数のアパートと小売店も被害を受けた。
子供は攻撃当時、アパートの建物内にいた。両親は重体で入院している。近隣の建物の住人も負傷した。ロシアの防空部隊は、攻撃中に30機以上のウクライナのドローンを迎撃した。ロシア国防省は、モスクワ州を含むロシアの複数の地域で、一夜にして155機のウクライナのドローンを破壊したと発表した。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年3月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。







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