米イスラエル軍のイラン戦闘は「我々の戦争」か?

米イスラエル軍のイラン戦闘が始まって以来、欧州諸国の首脳陣の口からは「これは我々の戦争ではない」という発言をよく聞く。ドイツのシュタインマイヤー大統領は「イラン戦闘は国際法違反だ」と、堂々と言い切る。イラン戦闘の場合、ホワイトハウスが米議会との協議を行うことなく戦闘に踏み切った経緯もあって、同盟国からは「我々の戦争ではない」といった声が依然、支配的だ。

サウジアラビアを訪問し、ムハンマド皇太子と会談するウクライナのゼレンスキー大統領、2026年3月27日、ウクライナ大統領府公式サイトから

イスラエルは別として、米国は地理的にもイランから遠いうえ、直接の軍事的脅威は少ないが、トランプ米政権は「イランの核兵器製造は近い。中東の武装勢力に軍事支援するイランが核兵器を手に入れれば、世界の脅威だ」と説明する。イランが原油・ガスの世界の輸送ルートのホルムズ海峡を封鎖すると警告を発すると、「イランは武力で世界経済を脅かしている」と説明してきた。すなわち、イランは世界の平和と安定の脅威だというわけだ。にもかかわらず、北大西洋条約機構(NATO)の加盟国の多くは「これは我々の戦争ではない」と受け取っているのだ。

例えば、メルツ独首相はノルウェー訪問中に、「ドイツはこの戦争に関与しておらず、関与するつもりもない」と述べた。また、ピストリウス独国防相は「これは我々の戦争ではない」と強調。クリングバイル独副首相はドイツのニュースネットワークRNDのインタビューで「はっきり言っておきます。これは我々の戦争ではない」と述べている、といった具合だ。

フランスで開催されたG7外相会談に出席中のルビオ米国務長官は26日、トランプ大統領の対イラン政策を擁護し、「同盟国はイラン問題とホルムズ海峡の安全確保に関して、より多くのことを行う必要がある。米国は常に戦争への支援を求められており、ウクライナという別の大陸で起きている戦争において、世界のどの国よりも多くの支援を行ってきた。しかし、米国自身が支援を必要とした時、何の肯定的な反応も得られていない」と記者団に語っている。

G7諸国は米国と同盟関係にあるが、イランへの攻撃を明確に支持した国はいない。また、トランプ大統領がかつて提案した、ホルムズ海峡の海上封鎖を解除するための軍事作戦への参加にも、いずれも応じていない。

トランプ大統領はホワイトハウスでの閣議で、「これは我々の戦争ではない」と述べたドイツの政治家たちの発言に言及して、「これは不適切だ」と非難。「米国は我々の戦争でもないウクライナ戦争を支援してきた」と強調している。

米国側の不満は理解できる。「ウクライナ戦争では過去4年間、ウクライナ戦争に軍事、人道支援をしてきたが、欧州諸国は『イラン戦争は、我々の戦争ではない』と主張して米国やイスラエルの支援要請を無視している」というのだ。

ただし、トランプ氏の発言をもう少し検証すると、米国が過去4年間、「米国の戦争ではない」ウクライナ戦争へ支援提供してきたというが、必ずしも正確ではない。新政権は2025年第1四半期に支援を提供したが、その後、支援額はゼロに削減された。3月末までに提供された支援は、主にバイデン前政権下で委託された支援だ。

ドイツ民間放送ニュース専門局NTVは、トランプ氏の欧州への批判に対し、「米大統領は両戦争の決定的な違いを見落としている。ウクライナは4年以上にわたりロシアの侵攻から自国を守り続けている。同盟国は主に武器供与と財政支援によってウクライナを支援し、ウクライナの財政破綻を防いでいる。一方、米国とイスラエルは現在、イランに対して侵略戦争を仕掛けている。両国の説明によれば、イランが核兵器開発計画をほぼ完了させようとしていたと主張しているが、米国内外の専門家はこれらの主張に疑問を抱いている」と説明している。

また、ワシントン・ポスト紙によると、米国政府はウクライナ向け兵器を中東地域に転用することを検討しているという。その理由はイラン内戦によって米軍の特に重要な弾薬備蓄が枯渇しているためだという。この情報が正しければ、ウクライナは深刻な影響を受けるだろう。ゼレンスキー大統領は26日、軍の資金不足が差し迫っていると警告した。また、イラン戦闘を理由に米国がロシア産原油供給に対する一部の制裁措置を停止したことを批判し、モスクワがその収入を侵略戦争の資金源として利用する可能性があると指摘した。

ちなみに、現代では国連憲章により武力行使が原則禁止されているため、正面切って「戦争を始める」と宣言することは稀だ。多くの場合、「自衛権の行使」という名目で戦闘が始まる。

ところで、日本にとってウクライナ戦争は「我々の戦争」か、米イスラエル軍のイラン戦闘はどうか。ウクライナもイランも地理的には日本から遠い。ただ、後者は日本の重要な原油供給国であり、経済関係は深いだけに、その影響は大きい。

高市早苗首相は25日、国会答弁で米イスラエルのイラン攻撃について当初「戦争」と表現したが、直後に「戦闘」と言い直す場面があった。日本政府は、特定の事態を「戦争」と定義することを避ける傾向がある。これは、憲法第9条で「戦争の放棄」を掲げているため、国際法上の「戦争(War)」という言葉を使うと、日本がその当事者や支援者としてどう関わるべきかという法的議論が複雑化するためだといわれている。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年3月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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