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これまでお伝えしてきたとおり、佐倉市の「ふるさと広場拡張整備事業」は、総額約30億円規模、市の単独予算ベースでも20億円を超える大型事業である。位置づけとしては観光拠点の整備であり、来訪者の増加や地域経済への波及が期待されている。
一方で、本事業には国の「都市構造再編集中支援事業」が活用されている。
この補助対象となっている事業費は約13億円規模にのぼり、事業の中核部分がこの制度の枠組みの中で評価されている。
この制度は本来、都市機能や人口の集約、いわゆるコンパクトシティの推進を目的とするものである。
すなわち、観光地開発でありながら、その評価と補助の枠組みは都市構造の再編を前提としたものになっている。この時点で、目的と制度の間に一つのズレが生じている。
成果を何で測るのか
観光事業であれば、本来は
・来場者数
・観光消費額
・税収への影響
・雇用創出
といった、実際の効果を測る指標が重要となる。
しかし本事業においては、先行する記事にある通り、これらの指標が明確な形で示されているとは言い難い。その代わりに前面に出てくるのが、「費用便益比(B/C)」である。本件では、この値が6.4とされている。
一見すれば「6.4倍の効果がある事業」と受け取られかねないが、この数値は、実測された事業効果をそのまま示すものではなく、複数の前提を置いたモデル計算の結果である。
来場者数はどのように導かれているか
本事業の費用便益分析では、「旅行費用法」と呼ばれる手法が用いられている。これは、公園など市場価格を持たない施設について、人がそこに行くために負担する時間や交通費をもとに、「利用価値」を算出する方法である。
ここで重要なのは、来場者数の扱いである。
来場者数は、実際に観測された人数ではない。分析では、
一人あたりの年間利用回数 × 対象人口
という形で、来場回数(需要)が算出されている。
この「対象人口」は佐倉市の人口ではなく、周辺自治体を含む広域の人口である。資料に基づき集計すると、およそ80万人規模となる。
すなわち、
約80万人という母集団に対して、平均的な利用回数を前提として設定し、その掛け算によって来場回数が導かれている
という構造である。
これは、「何人来たか」を測っているのではなく、「どれくらい来ると想定するか」によって結果が決まる仕組みである。
長期間の仮定と前提設定
さらに、この分析では評価期間が1990年から2079年まで、約90年に設定されている。
その中で、公園の便益は長期間にわたり安定的に発生すると仮定され、合計値として積み上げられている。また、どの公園を競合とみなすかといった前提についても、一定の条件は示されているものの、最終的には受発注者(つまり、佐倉市と、おそらくコンサルタント)の協議により決定されている。
したがって、このB/Cという数値は、
・広域人口の設定
・利用回数の前提
・長期間の便益仮定
・競合条件の設定
といった複数の前提の上に成立している。
何をもって成功とするのか
ここで改めて問うべきは、本事業が何をもって成功とされるのか、という点である。
観光事業であれば、本来は来場者数や経済効果といった実績によって評価されるべきである。しかし本件では、「利用価値」を前提としたモデルによって算出された数値が、事業評価の中心に据えられている。
その手法自体は一般的であるとしても、それが何を測るためのものなのかという点は、別途検証が必要である。
結び
本事業は、
・観光地開発でありながら
・コンパクトシティの補助制度を用い
・実測ではなくモデルによる数値で評価されている
という構造を持っている。
では、この事業は
何をもって成功とするのか。そして、その基準はどこにあるのか。
この問いから、議論を始める必要がある。







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