米軍救出作戦が暴いた日本安全保障の危うい現実

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今回のイラン戦線で行われた米軍パイロット救出作戦を見て、私は改めて痛感した。米軍は自国兵士の命を守るためなら、どれほどのリスクやコストが発生しようとも、最後まで責任を放棄しない。

これは日本人には多分信じがたいレベルの徹底ぶりであり、単なる軍事文化ではなく、国家としての揺るぎない原則である。

自衛隊トップ幹部が語った「米軍がCSARを開示しない理由」

現役を退いた航空自衛隊のトップクラスの幹部は、先ほどこう語った。

「日本周辺で米軍パイロットが脱出した場合、救助に向かうのは空自救難隊だ。だから米軍のCSAR(戦闘捜索救難)のプロシージャーを開示してほしいと何度も求めたが、米国防総省は頑として応じなかった。退役した米軍将官は『本来は開示すべきだ』と理解を示したが、現役の国防総省は動かなかった。今回の作戦を見れば、その理由がよく分かる」

米軍は、どの国であれ、自国兵士の生死を他国の判断に委ねることを本質的に信用していない。

私は日本人としては例外的に、40年近く米軍を現場で直接取材してきた。その経験から断言できる。

米軍は「自国兵士の命を守る責任」を、いかなる同盟国にも委ねない。例外はあるが、これは揺るぎない大原則である。

日本の「手続き優先」が米軍の不信を招いてきた

日本の法律上、日本領域内での救難は空自が担うことになっている。

しかし現実には、日本側の法的制約や手続き優先の姿勢が、米軍の信頼を損ねてきた歴史がある。

象徴的なのが、日航123便墜落事故である。

  • 米軍は墜落地点を早期に特定した。
  • 夜間救出は米軍の得意分野である。
  • 日本当局は夜間の捜索ができず、現場特定が夜明けまで遅れた。
  • 日本政府は「主権」「手続き」「プライド」を理由に米軍支援を拒否した。
  • 生存者の証言では、夜中じゅう助けを求める声があった。
  • 夜明けまで十数名が生存していた可能性が指摘されている。

この出来事については以前から懐疑的な見方もあるが、米軍に「日本は緊急時に頼れない」という印象をさらに強く残した。

米軍は「1人のために10人死ぬ」ことを厭わない

ここからが、日本人がかなりの程度理解しにくい部分である。

米軍には「We leave no one behind(誰一人置き去りにしない)」という絶対原則がある。

そのために、実際に複数名が命を落とした救出作戦がいくつも存在する。

● ロバーツ・リッジ(アフガニスタン、2002年)
SEAL隊員ロバーツが敵地に取り残される。
救出に向かったヘリが撃墜。
救出側7名が死亡。
米軍内部では「1人を救うために7人が死んだ」と語り継がれる。

● レッドウィング作戦(アフガニスタン、2005年)
映画『ローン・サバイバー』の元になった事件。
偵察チームが包囲され救援要請。
救出ヘリがRPGで撃墜。
救出側16名が死亡(SEAL 8名、ナイトストーカーズ8名)。
生存者は1名のみ。

● モガディシュの戦闘(ソマリア、1993年)
映画『ブラックホーク・ダウン』の元になった事件。
私は犠牲になった米軍兵士の弟を1カ月以上密着取材して詳細を聞いた。
撃墜された仲間を救うために市街戦へ突入。
救出側18名が死亡。

● バット21救出作戦(ベトナム、1972年)
撃墜された電子戦士官を救うために多数の航空機を投入。
救出側11名が死亡。

これらはすべて、「1人の仲間を救うために、複数名が命を捧げた」という事実である。

米国社会はこれを「当然」と受け止める。独立国家としての覚悟が違うのだ。

日本社会の「安全保障観」との落差

一方、日本では、極端な事例ではあるが、

  • 自衛隊員が制服で電車に乗れば後ろ指をさされる。
  • 訓練をすれば「人殺しの訓練をするな」と叫ばれる。
  • 「9条を掲げていれば平和が続く」と信じる人が多い。

という現実がある。

日米安全保障条約という「軍事条約」の現実はこうだ。

本来は互いが血を流して守り合うはずである。

  • 米国は日本を守る義務を負う。
  • だが米国が有事の際、日本は「9条」と戦争しない「平和主義」を理由に何もしない。
  • 日本人はテレビで米軍の作戦を眺めているだけである。

今回の救出作戦は、米国が最優先するのは「自国兵士の命」であり、同盟国の政治事情ではないという事実を突きつけた。

日本が「動かない国」だと判断されたら何が起きるか

今回のイラン情勢でも、米国大統領が日本を名指しで批判した。

中間選挙、弾劾可能性。米国の政治状況は不透明だが、トランプ政権が今後3年続く可能性は高い。

台湾有事の可能性は高くはないが、起きるとすれば向こう1〜3年という分析が多い。中国が過去10年以上実際にやってきたことを見れば、安心などできないことが理解できる。

その時、米国が「日本は動かない」と判断し、日本防衛を見送る決断を下したらどうなるか。

  • 海上封鎖 → 日本経済は数週間で機能不全
  • 尖閣 → 中国に実効支配される
  • 日本の安全保障は根底から崩壊

これは決して誇張ではない。

今回の救出作戦は、日本への「警告」である

今回の米軍救出作戦は、単なる軍事ニュースではない。

日本が70年以上「自国の安全を他国任せにしてきた」ことの危うさを突きつける警告である。

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