玉木党首にみる謝罪文化:自衛隊員の中国大使館侵入は謝罪すべきか

先般の自衛隊員の中国大使館侵入事件に絡み、国民民主の玉木代表が「受け入れ国として(日本が)きちんとした保護の義務を果たせなかったことについては、相手国がどこであろうとも謝罪すべき案件だ」(産経)と発言、議論となっています。

玉木雄一郎代表 国民民主党HPより

対外国の謝罪に関する話題としては村上春樹氏が「相手国が納得するまで謝罪すべき」と発言して話題になったのが2015年4月です。当時、日韓関係が戦後最悪と言われるほど冷え切った状態にあり、安倍氏が朴槿恵氏との会談ができず、歴史問題が噴出していた頃であります。

そこを比較ポイントとすると今回の玉木党首の発言は日中関係が冷え切った中でこんな問題が起きるのはまずいだろうという姿勢からでた話でしょうし、国民民主の与党入りの話があったあの時とすっかり様変わりした今、高市首相とは最近はやや疎遠にも見えるところから間接的には首相の対中政策へのジャブとも言えるのでしょう。

日本の謝罪文化は独特であり、不祥事が起きるたびにフラッシュがたかれる中、長々と頭を下げ、詫び口上を述べるのは風物詩とも言ってよいのですが、外国からはまず理解できないシーンであります。

私が19歳の時、アメリカに初めて行った際、誰かから「アメリカでSorryなんて言ってはダメだよ」と言われ、なぜだろうと思っていたら謝ったほうが訴訟やクレームで負けるのだ、ということを学びました。特に身近な例では車をぶつけた時、相手には「保険会社が査定する」と述べ双方の連絡先だけを交換して終わるというのが基本です。私がレンタカー屋をやっていた時、何度かお客様が車を破損させたのですが、謝られたことはないです。あくまでも「自分の運転は正しい。相手が想定外に突っ込んできたんだ」というスタンスです。

それでもカナダはまだSorryの文化は残っています。特に非常に些細な事、例えば歩いていて人とぶつかった時などはSorryです。一方、アメリカは基本がExcuse meだと思います。カナダの報道で時折、事件の犯人や被疑者が謝罪(applogize)すると大きく報道されます。カナダであっても報道されるような大きな事件で謝罪することは全面降伏を意味するものであり、特異なことであるとみられています。

Sorryの語源はsoreという「心を痛める」「人の感情を害する」という意味で、自分の内面を表現する言葉とされます。一方、Excuse me の語源はラテン語のEx-Causa (原因を外へ→私の失礼を不問にせよ)で法律用語としても原因の外部追及という意図で使われるので一種の責任転嫁であります。つまりやや哲学的になるのですが、自分自身が非を内面から認めるのがSorryであり、一方のExcuse meはある不便が生じたことは認めるが、それは必ずしも私もせいではないのでこれ以上構わないでくれ、というニュアンスになります。

では自衛隊員が中国大使館に侵入したケースは日本政府が謝罪すべきか、といえば私の感覚では謝罪の必要はないです。この話、実は続き話があります。産経の記事の続きに中道の泉健太議員が「実は中国政府は謝罪を求めていない。中国メディアが謝罪を求めただけ。なぜか。それは過去、反日デモで日本大使館に被害があったとき、中国自身も謝罪せずに『遺憾』と表明してきたからだ」と発言しています。玉木氏と泉氏の双方の意見を聞くと一体どっちが保守系でどっちが革新系かわからなくなるような感じがします。

泉健太氏 立憲民主党HPより

では遺憾とは何でしょうか?憾(うらみ)を遺(残す)で「期待通りにならず、非常に残念だ」という意味です。英語では微妙でregret ないしunacceptableとなるのですが、それぞれの意味は割と乖離しています。Regretは例えば面接に来た人を不採用とする際に使う表面的で客観的な事実として使う一方、unacceptableは相当怒りまくっている時に使い、普段はあまり使うことがないのですが、ビジネスや外交でかなり強い口調として使うと思います。上記の中国が遺憾としたというのはregret のニュアンスです。

日本は謝罪を潤滑油的に使います。つまり企業の不祥事は「今回はこんなことになり、大変申し訳ないけれど今後も弊社をよろしくご贔屓ください」という意味で使うのです。わかりにくいともいえ、確かに日本文化の奥深さと言えるかもしれません。

玉木氏が中国に謝れというは私には解せないです。防犯体制をすり抜けたことは事実で、それは今後の対策としてこういう風に強化したということで十分な説明になるし、中国側もそこまで本件に目くじらを立てることはないはずです。玉木氏の個人の信条なのか、そこはわかりませんが、私は日本が国内向けも含め、謝罪しすぎるのもどうなのかと思います。メディアがそれを叩く文化もおかしいし、それぞれの表現の仕方があってよいと私は思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年4月15日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。

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