「同類婚」が主流なのに「上方婚」志向だけは残って非婚化は加速か

近年、成熟し過ぎた日本の婚活市場では「同類婚」と「上方婚」が重なり合うことで、マッチング自体が成立しにくくなっているかもしれない。男女の結婚における条件の非対称性が強まり、結果として未婚化と少子化を加速させている構造が浮かび上がる。

※上方婚(じょうほうこん、ハイパーガミー)とは、女性が自分よりも社会的地位、収入、学歴などが高い男性と結婚する通婚傾向・意識を指す。下方婚(かほうこん)はその逆。

「9割が同等以上」を求める構造

独身研究家の荒川和久氏によると、2022年の就業構造基本調査をもとにした分析では、妻が29歳までの子どものいない夫婦を結婚初期と仮定した場合、夫の年収に対する結婚の組み合わせは上方婚70%、同類婚20%、下方婚10%となる。すなわち、全体の約9割が「妻と同等以上の年収の夫」という組み合わせになっているという。

この傾向は幅広い所得層で確認されており、夫の年収が500万円台でも上方婚の割合は高く、300〜400万円台でも過半を占める。結婚においては、女性が自分より低収入の男性を選びにくい現実が明確に示されている。

恋愛段階では収入を重視しないケースも多いが、結婚となると経済条件が重要な判断基準となる。このギャップが結婚市場のハードルを押し上げている。

上方婚志向は広範に定着

若年層を対象とした意識調査でも、結婚相手に自分より高い年収を求める女性の割合は7〜8割に達している。既婚者の回顧でも同様の傾向が確認されており、この志向が一時的なものではなく、社会的に広く共有された価値観であることが分かる。

また、長期的な調査でも、結婚相手の経済力を重視する割合は長年にわたり高水準で推移しており、結婚と経済条件の結びつきは極めて強い。

同類婚が格差を固定化

同時に進行しているのが同類婚の強化である。高所得層同士が結婚することで、世帯単位での所得格差が拡大する傾向が見られる。

かつては結婚によって所得差がならされる側面もあったが、現在ではむしろ同じ階層内での結びつきが強まり、格差が再生産される構造へと変化している。結婚が社会的な流動性を高める装置ではなく、固定化を強める要因へと転じているとの分析もある。

市場からの「退出」が増加

こうした構造のもとで、結婚市場からの退出が増えているとみられる。特に、条件面で不利とされる層にとっては、結婚の成立可能性が低くなり、恋愛や婚活そのものを諦める動きが広がっている。

実際、結婚に対する期待値と現実のギャップが大きくなるほど、参加者自体が減少し、マッチングの機会もさらに縮小する。結果として、市場全体の規模が縮む悪循環に陥っている。

結婚の「トリレンマ」が示す限界

さらに、キャリア形成、子育て、上方婚志向という三つの要素が同時に成立しにくいという問題も指摘されている。

女性が高いキャリアを築くほど、同等以上の条件を持つ相手は相対的に少なくなる。一方で、男性が家庭や育児に比重を置く場合、収入面での条件を満たしにくくなる。この結果、双方にとって選択肢が狭まり、結婚の成立が一層難しくなる。

一部に集中する需要

現在の結婚市場では、条件を満たす一部の層に需要が集中する傾向が強まっている。これにより、特定の層は選択肢が豊富である一方、それ以外の層は選ばれにくい状態が続く。

この偏りは、結婚の成立数そのものを減少させる要因となり、少子化にも直結する問題として認識されている。

同類婚と上方婚の共存は可能か

同類婚の進展と強い上方婚志向が重なり、日本の結婚市場は構造的なミスマッチを抱えている。約9割が「同等以上」を求める状況の中で、条件に合致しない層は市場から退出し、結婚の成立そのものが減少している。


就職氷河期世代-データで読み解く所得・家族形成・格差 (中公新書 2825)
※この20-30年で最も就業・経済的に恵まれなかった氷河期世代の出生率が高かったというデータはとても示唆的に思われる。

この問題は単なる価値観の違いにとどまらず、少子化の根本要因の一つとして無視できない。結婚市場の前提条件そのものをどう見直すのかが、今後の重要な論点となる。

日本は出生率が人口維持レベルを下回っており、出生数よりも死亡数の方が多い状況にあります。

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