保守系の一部から「秋篠宮バッシングは中国の陰謀である」といったプロパガンダがされているが、根拠薄弱であるのみならず、中国政府は皇室に対してネガティブになる動機がなく、皇室にとっても迷惑なことだと思う。
たしかに、「秋篠宮皇嗣殿下ご一家バッシング」は呆れ果てた卑劣なものである。最近はそれが、秋篠宮ご一家との密接さが格別な美智子上皇后陛下にも飛び火して、少し前までは触れてはならない存在だった美智子さまへの攻撃もひどいものだ。

秋篠宮家の皆様 2025年 宮内庁HPより
そして、その類いのサイトの多くが香港を発信拠点にしているのは事実だ。しかし、それは多くのセンセーショナルな金儲け目的のサイトに共通することであり、中国政府の関与の証拠にはならない。
また、秋篠宮バッシングのネタ元(情報源)はすべて国内だ。さらにその根っこは、上皇后陛下美智子さまバッシングだ。その発信源はひとつは学習院関係者(藤澤志穂子さんの「学習院女子と皇室(新潮新書)」は、学習院関係者にとって教職員の娘である紀子さまが秋篠宮妃になられたことへの違和感とか、同窓会の活動に協力的でないこと、悠仁さまが学習院を選ばれなかったことへの恨み辛みが満載だ)。もう1つは、小和田家不良勝手応援団(週刊「女性自身」は愛子天皇は江頭豊元チッソ社長の悲願だったから実現すべきだと記事まで載せた)。さらにもう1つは、フェミニストグループで、美智子さまや紀子さまを「良妻賢母」を実践しているとして目の敵にしている。
中国は皇室に総じて好意的である。なかんずく訪中された上皇陛下御夫妻にはそうである。上皇陛下の訪中は1992年10月である。宮澤喜一首相は一時帰国した橋本恕駐中国大使に「党内や国民の間に亀裂が生ずるような形で実施したくない」と不安を明かし、橋本に対中工作を命じ、その結果、中国側は対立をあおる言動を控えるようになった。
上皇陛下は積極的に訪中を受け止め、陛下は北京で行われた楊尚昆中国国家主席主催の晩餐会において日中戦争などの過去の両国の歴史問題について「わが国が中国国民に対し多大の苦難を与えた不幸な一時期がありました。これは私の深く悲しみとするところであります」との「おことば」を述べられた。
当時、中国大使館公使であった槙田邦彦は「おことばができあがったということで私のところに送られてきた。それは外務省が起案したものとはちょっと違っていた。天皇陛下がみずから手を入れられたところがあると聞きました。過去の戦争、それによって中国の人たちに与えた被害、そういうことを、かえりみて天皇陛下が自分のことばで手を入れられたということです」としている。
また、この訪中を事務方として推進したのが小和田恆事務次官だが、この3か月後に当時の皇太子殿下である陛下と雅子さまの婚約が発表されていることは、この訪中への満足も背景にあった。
マッカーサーが天皇を東京裁判にかけないことにしたにもかかわらず、東京裁判のときに蒋介石が送り込んだ中国代表検事・梅汝璈は、昭和天皇の責任を糾弾していた。まして、その後に政権に就いた中国共産党の立場から言えば、昭和天皇の戦争責任を追及しても不思議ではなかった。
しかし、昭和天皇が合祀を機に靖国参拝を止めたらしいとか、上皇さまが訪中して適切なかたちで遺憾の意を示し、その後も反戦主義に徹しておられることで、中国政府の皇室への好意的評価は確立した。
そうしたことから、中国政府は、日本の政治家よりは皇室の方を好ましく受け取っていることがうかがえる。
しかし、そうは言っても、戦争の被害を受けた中国民衆のなかには、大元帥であった天皇や多くの大将などを出した皇室に対する敵意は根強く存在する。中国政府はそれを強く押さえ込むことはしないが、燃え盛ることのないように慎重にコントロールしている。
そのあたりは、歴代の陛下や日中両国の心ある人たちが非常な苦労をしながら、歴史の負の遺産と向き合ってきたのである。
こうした経緯からすれば、少なくとも指導者層が美智子上皇后陛下や上皇御夫妻に考え方が近い秋篠宮皇嗣殿下ご一家を攻撃する動機はまったくない。
もちろん、日本の与党勢力や支持者にも跳ね上がりがいるのと同じで、中国人や下っ端工作員が勝手にいろいろする可能性までは否定しないが、少なくとも中国政府が秋篠宮バッシングに利益を見いだすとは考えにくいのである。
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