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(前回:ANA、SFC改悪のマーケティング戦略を問う①:失われる「準プラチナ層」)
実際の出張は「往路安く、復路変更可能」が多い
前編では、東京-大阪をフレックス/Bizで26往復しても49,920PPでプラチナに80PP届かないことを示した。しかし実際の出張では、往復とも変更可能な高い運賃を使うとは限らない。

往路は予定が固まりやすいため変更不可または制限付きの安い運賃を選び、帰りは会議の終了時刻や取引先の状況が読めないため変更可能な運賃を選ぶ——これは出張者として合理的な判断である。
多くの出張者の搭乗パターンは「往路:スタンダードまたはシンプル、復路: フレックス/Biz」という非対称な組み合わせになりやすい。
混合運賃で見る「ギリギリ届かない」現実——東京-大阪
東京-大阪の各運賃の片道PPは、フレックス/Bizが960PP、スタンダードが648PP、シンプルが492PP、セールが280PP。往路をスタンダード、復路をフレックス/Bizにすると1出張あたり1,608PP。この組み合わせで31回出張しても49,848PPで、プラチナには届かない。
月に2~3回東京-大阪を出張していても、往路を安く抑えるだけでこの結果になる。

東京-大阪 区間基本マイル280、国内線路線倍率2倍で計算
混合運賃で見る「ギリギリ届かない」現実——東京-札幌
東京-札幌でも同様である。往路スタンダード・復路フレックス/Bizで1出張2,436PP。年20回出張しても48,720PPでプラチナには届かない。
この層は「飛行機に乗らないSFC会員」ではない。会社出張でANAを年間20回前後利用してきた業務利用者である。

東京-札幌 区間基本マイル510、国内線路線倍率2倍で計算
ANA Bizと法人精算——個人カード決済に出てこない貢献
法人出張者の航空券購入経路にも問題がある。ANA Bizは事前申込制の法人向け出張手配システムで、発券月ごとに一括精算するカードレス決済を採用しており、出張者の立替払いを不要にする仕組みである。出張者本人はANA便に何度も搭乗しているが、その購入額は個人のANAカード決済に一切反映されない。
旅行代理店経由の一括手配、BTM(出張管理ツール)を通じた会社精算、法人カードによる購入、請求書払いも同様である。会社出張でANAに乗っていた人が、ANAカードで年300万円決済しているとは限らない。
年300万円決済というKPIの粗さ
年300万円決済をSFC PLUSの条件とすることは、カード経済圏のKPIとしては分かりやすい。しかし航空会社としての顧客価値を測る指標としては粗い。ANAへの実質的貢献と個人カード決済額は、必ずしも一致しない。

出張者の忠誠心はカード明細ではなく、予約画面でANAを選び続けてきた事実に表れていた。ANAがSFC LITE化で切り落とす可能性があるのは、年に数回ラウンジだけ使う会員ではなく、往路は安く復路は変更可能運賃を選びながら年20~30回の出張でANAを使ってきた業務利用者である。
カード収益と航空売上は代替しない
カード決済額から得られる経済的取り分は、決済額そのものではない。決済額は売上ではなく取扱高であり、ANAに帰属するのはその一部に過ぎない。ANAカードはカード会社との共同発行であり、年会費収入や加盟店手数料のANA側取り分も限定的である。
一方、会社出張や私用旅行でANAからJALへ予約が移る場合、失われるのは航空券売上そのものである。決済経済圏で得られる収益寄与が航空売上の流出を上回るとは限らない。
まとめ
往路を安く復路を変更可能にする合理的な運賃選択をするだけで、東京-大阪なら月2~3回、東京-札幌なら月1~2回の出張者でもプラチナには届かない。加えて、会社出張の多くはANA Bizや法人精算を通じるため、個人のANAカード決済額に反映されない。年300万円決済という基準は、こうした出張者の実態を捉えていない。
次回は、JALがJGC制度とJAL Life Status Programをどのように設計し、ANAとの差をどこに作り出しているかを検討する。
(次回につづく)
【主要参照】
ANA Bizとは / ANA国内線利用運賃一覧表 / ANAプレミアムポイント計算式







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