急に怒りっぽくなった人は「ピック病」かもしれない

「温厚だったのに、最近些細なことでどなるようになった」

「常識人だったのに、コンビニで万引きしてつかまった」

もし家族や身近な人にこのような急激な変化が見られた場合、「年のせい」「ストレスが溜まっているのだろう」と片付けてしまうのは危険かもしれません。実はその症状は前頭側頭型認知症(FTD)のシグナルなのです。

アメリカではトランプ大統領がFTDかどうかで論争が起こっていますが、日本ではピック病とも呼ばれます。万引きすることが特徴的な症状だからです。


ピック病とは?

ピック病は、脳の前半分にある「前頭葉」と、横側にある「側頭葉」が萎縮して発症する認知症の一種です。医学的には「前頭側頭型認知症(FTD)」と呼ばれます。

アルツハイマー型認知症が65歳以上の高齢者に多いのに対し、ピック病は40代〜60代の働き盛りで発症する若年性認知症が多いのが特徴です。

なぜ急に怒りっぽくなるのか?

人間が社会のルールを守って生活できるのは、脳の前頭葉が理性で感情や衝動をコントロールするブレーキの役割を果たしているからです。

ピック病になると、この前頭葉が萎縮し、感情のブレーキがきかなくなります。 その結果、以下のようなことが起こります。

  • 自分の思い通りにならないと、子供のように激しく怒る

  • 社会的なルールを守れなくなる(万引きや交通違反など)

  • 急に甘いものばかり食べるようになり、同じものばかり食べ続ける。

  • 言葉が出にくくなったり、相手の言った言葉をそのままオウム返ししたりする。

これは性格が変わったのではなく、脳の病気で我慢する機能が失われているのです。


アルツハイマー型認知症との決定的な違い

認知症と聞くと「物忘れ」をイメージする方が多いですが、ピック病の初期段階では記憶力は比較的保たれていることが多く、これが発見を遅らせる原因になります。アルツハイマーとの違いは、かなり明確です。

特徴 ピック病(FTD) アルツハイマー型認知症
初期の主な症状 人格の変化、怒りっぽさ、異常行動 物忘れ(記憶障害)、道に迷う
発症しやすい年齢 40歳〜65歳(比較的若い) 65歳以上(高齢者に多い)
萎縮する脳の部位 前頭葉(おでこ側)・側頭葉 海馬(脳の奥)から全体へ
病気への自覚 ほとんどない 初期は自分でもおかしいと不安になる

もし「おかしいな」と思ったら

もしかしてピック病かもしれないと思ったら、以下のステップを踏んでください。

専門医を受診する

「物忘れ外来」や、認知症専門医のいる「神経内科」「精神科」を受診してください。脳の萎縮を確認するためのMRI検査やCT検査、血流を見るSPECT検査などが診断に有効です。

地域の支援窓口に相談する

本人が受診を拒否する場合でも、まずはご家族だけでお住まいの地域の「地域包括支援センター」や保健所に相談してください。

接し方の工夫

怒っている本人を論理的に説得しようとしたり、正面から叱責したりするのは逆効果です。無理に止めず、気を逸らす(全く別の話題を振る、好きなお菓子を勧めるなど)ことが効果的な場合もあります。

ご家族の方へ:ひとりで抱え込まないでください

ピック病は、患者本人に病識(自分が病気であるという自覚)がないことが多いため、受診を勧めても強く拒絶され、家族が疲弊してしまうケースが非常に多いです。理不尽な怒りをぶつけられる介護者のストレスは計り知れません。

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