最後の棲家、老人ホーム探し:それは誰かに頼りたいという気持ちの表れ

日経に「おひとりさまの老人ホーム探し、70歳が適齢期 後悔しない6つの視点」と言う記事があります。70歳で老人ホーム探しと言うのはまた極端な話だと思いながら記事を拝見させていただきました。

最後の棲家は何処が良いか、湯河原とか軽井沢のような場所の話ではなく、どのようなところに安住を求めるか、と言う話をすれば10年間、介護事業の裏方仕事をして、老人ホームを所有経営する者として言わせていただければ条件が許す限り在宅がベストであります。介護サービスは日本でも高くなり、保険外ですと内容次第で1時間3000円から8000円ぐらいかかり経済的負担は大きいのですが、できる限り在宅が良いと考えています。

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日本とカナダの介護や老人ホームの仕組みが違い過ぎるとことは確かにあるのですが、私が老人ホームへの入居を勧めない理由は別のところにあります。

まず自立するという意識が欠けてきてしまうのです。今まで3食自分なりに作り、買い物に行き、洗濯をするという生活サイクルにおける生きるための努力は老人ホームに入ることによってそれこそ半減から場合によってはゼロになります。緊張感が一気に消え、自立せずとも誰かに頼ることが萌芽します。よく「老人の赤ちゃん返り」と言うのですが、高齢者になると幼児化しやすくなり、ホームに入ることで自立せずに受動的人生でも生きて行けるようになるのです。

ゴールデンウィークに旅館にお泊りになった方も多いでしょう。日本人のメンタルにおいて旅館への期待とは「上げ膳据え膳」であります。最近でこそ旅館側の人材不足で「布団は自分で」「部屋食は無し、食堂にどうぞ」が増えていますが、家族旅行で一番ほっとしているのは奥様ではないかと思うのです。日常の喧騒から解放されるわけでそれこそ3-4日滞在したいと思うはずです。同様に日本の正月の定番、お節料理は女性陣が調理台に立たずとも日持ちするものを毎日、食べるという発想から来ており、女性も正月ぐらい台所に立たなくてもよいだろう、というのが背景であります。

この非日常は数日間という短期間であるがゆえに意味があるわけで、非日常が日常になってしまえばそれはその人たちのメンタルに大変革が起きてしまうわけです。もちろんそれに順応できる方がいればそれは良し。そうではない人も多いわけです。

私の知るケースでも老人ホームに入った途端亡くなった方がいらっしゃいます。何故亡くなったか、直接原因は別のところにあったわけですが、別の間接原因は必ずあったはずです。それは「なじめない」ではないかと思うのです。

また別のケースでは、ある老人ホームは病人が多く、入居者も見るからに健康を害している方が多いところがありました。ここにまだお元気な方がお試しで入居したのですが、数日で「止めます」と。理由は「『気』を持っていかれた」と。人間とは不思議なもので若い方に囲まれていると元気はつらつになりますが、病院に入院していると伏せてくるのと同じでそこには独特の「空気」が存在しているのです。そしてその空気に自分が吸い寄せられるわけです。元気な人が病人だらけの老人ホームに行けば「気」は一気にもっていかれるのです。

私のところの老人ホームは平均年齢は90歳を超えています。ですがなるべく楽をさせないようにしています。料理も手伝える人は手伝う、お運びも一緒にやるといったように自立能力を最大限引き出すよう運営しています。もちろんできる人だけでよいのですが、そうすることで多少なりとも生きがいを感じてもらえるのです。なので開業2年を超えましたがお亡くなりになった方はいません。皆さんピンピンしています。

出来れば在宅で最後までいるのがベストです。70歳までに老人ホームを見つけようなどという後ろ向きな発想はせずにどうやったら今の生活を維持できるか考えるのです。そして長生きするぞという意識をもち、健康に留意することが最も基本的であり、大事なことでもあります。朝、体操をする、規則正しい生活をする、散歩など必ず家の外に出る、といった習慣は大事です。買い物が大変な場合はそれこそオンライン配達を利用したらよいでしょう。水のボトルなどは重くて持てないという方が殆どです。ならばオンラインで12本とか24本単位で家に配達してくれるのですからそれを利用しない手はないと思います。ご家族の人がそのアレンジをしてもよいでしょう。

老人ホームに入りたいという意識がある場合、それは誰かに頼りたいという気持ちが芽生えてしまったということです。それは楽なようですが、自立していた時の自分が遠い昔の話になってしまうとも言えます。可能な限り在宅が私はベストだと思うし、それを前提に老後人生を組み立てるほうが健全だと考えています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年5月6日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。

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