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企業向けに温室効果ガス排出量の計算方法を定めているGHGプロトコルが、昨年から算定ルールの大幅な見直しを進めています。
論点はたくさんありますが、炭素クレジットなどの環境価値を利用する場合について、1)同時同量、2)同一市場、という2点の基準を設けることが多くの企業に影響しそうです。
現在は同じ暦年であれば数か月前に発電された再エネ由来の環境価値を利用することができます。また、全国各地はもとより海外由来の環境価値を利用することもできます。筆者が繰り返し指摘してきた炭素クレジットの問題点(のごく一部)です。
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「不可避な排出」に対する未来への資金循環メカニズムは現状の炭素クレジット市場では実現できません。すべて「過去」のCO2削減や再エネ発電量に応じてクレジットが発行されているためです。
新興国の高効率調理器具導入や植林活動、途上国における再エネインフラ整備などの支援になっているのであれば「寄付」でよいはずです。「カーボンオフセット」と言って自社のCO2排出量を相殺した場合、高効率調理器具、植林活動、再エネインフラに対してCO2の相殺分と同じCO2排出量を割り当てなければなりませんが、そんなことできませんよね。
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この2点について、GHGプロトコル側が看過できないため厳格化する方向のようです。発電と証書利用の時間と場所を可能な限り一致させようというのが今回の改正の要諦となります。現在の議論では、たとえば発電と証書利用の時間差を1時間以内に収めよう(つまり太陽光発電由来の脱炭素ナイターはNG)、日本国内であれば東京電力管内、九州電力管内などの10送配電エリアの中に収めよう(中国やアフリカ由来の環境価値はNG)、といったイメージで進んでいるそうです。
ところが、このGHGプロトコル改正に対して、Amazon、Apple、GM、Schneider Electricなど世界中の企業と気候変動団体らが反対の声明を発表しました。
いわく、「ボランタリー炭素クレジット市場が利用しづらくなり民間部門の脱炭素化が遅れる」「電気料金が高騰する」「同時同量、同一市場の義務化ではなく従来通り任意のままにすべき」とのことです。
呆れました。筆者には、「手軽にカーボンオフセットを利用したい」「見かけ上のCO2排出量を相殺できれば、大気中のCO2が1グラムも減らなくて構わない」「グリーンウォッシュを継続したい」という主張に見えます。署名した全66企業・団体のリストを末尾に示します。
なお、環境価値を利用する際に「同時同量」「同一市場」の2点を満たしたとしても、前述の図のとおり「勘定の不一致」と「非倫理的」という解決不可能な問題が残るため、どんなに改善を図っても【炭素クレジット=グリーンウォッシュ】という筆者の結論は変わりません。
炭素クレジットやカーボンオフセットなどに頼らず、地道な省エネ活動や再エネ導入(自然破壊や人権侵害、ライフサイクル全体ではCO2が減らないなど問題だらけだが)に取り組む企業であれば、今回のGHGプロトコル改正などまったく気にする必要はないのです。
最後に、今回のGHGプロトコル見直しに反対している66社・団体のリストを示します。
66の署名団体は、16か国に本部を置き、220の国と地域で事業を展開する33,500以上の組織を代表しています。年間売上高は4.7兆ドル以上、従業員数は4,900万人以上で、300GWを超えるカーボンフリー電力プロジェクトの調達、促進、および/または生産に携わっています。
エネルギー購入者および会員団体:
1. Akamai Technologies
2. Amazon
3. American Honda Motor Co., Inc.
4. American Hotel and Lodging Association
5. Apple
6. AT & S Austria Technologie & Systemtechnik AG
7. BOE Technology Group Company Limited
8. BYD
9. CableLabs
10. CalBroadband
11. California Retailers Association
12. Corning Incorporated
13. Dollar Tree
14. eBay Inc.
15. FedEx Corporation
16. General Motors (GM)
17. GoerTek Inc.
18. Hewlett Packard Enterprise (HPE)
19. Hemlock Semiconductor (HSC)
20. Hon Hai
21. LENS TECHNOLOGY CO., LTD
22. Luxshare
23. LyondellBasell
24. Mars
25. Patagonia
26. Oatly
27. PTC, Inc.
28. Retail Industry Leaders Association
29. Salesforce
30. Sabey Data Centers
31. Steel Dynamics, Inc.
32. Sunwoda Electronic Co.,Ltd
33. Suppliers Partnership for the Environment (SP)
34. Trane Technologies温室効果ガス排出量算定・市場専門家、モデリング担当者、NGO:
35. 3Degrees, Inc
36. ACORE
37. Baringa
38. Ceres
39. EKOEnergy
40. Energy and Environmental Economics (E3)
41. Ever.green
42. Green Strategies, Inc.
43. REsurety
44. Schneider Electric
45. Stevens Institute of Technology
46. Sustainability Roundtable, Inc.
47. Tabors Caramanis Rudkevich (TCR)
48. TimberRock
49. Trio
50. WattTimeクリーンエネルギー開発事業者、金融機関、協会、パートナー:
51. ACCIONA Energia
52. Alcazar Energy
53. American Clean Power
54. Asociación de Generación Renovable (AGR)
55. Business Council for Sustainable Energy (BCSE)
56. Clean Capital
57. CleanMax
58. Clearloop
59. Fortum
60. HASI
61. ib vogt
62. Sol Systems, LLC
63. Solar Energy Industries Association (SEIA)
64. Statkraft
65. Vattenfall
66. Zettawatts
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