史上最大の経営破綻として歴史に残る東芝が、半導体専業のキオクシアとしてよみがえった。同社が発表する2026年3月期連結決算は、売上高が2兆2697億円、純利益は89%増の5137億円。27年3月期には、トヨタを超える4兆円の営業利益を予想している。
経営危機に陥った東芝が解体されて生まれた東芝メモリは、いまや東証プライム市場で時価総額24兆円規模に達し、ソニーを超える東証プライム第5位の企業となったのだ。

「総合電機メーカー」からの脱却
キオクシアの主力は、東芝が基本特許をもつNAND型フラッシュメモリーである。AIデータセンター投資の拡大によって、長期記憶用メモリーの需要が急伸した。米テック大手がAIインフラに巨額投資を続けるなか、メモリー市況は一気に回復した。
特に目を引くのは利益率である。2026年1〜3月期の売上高営業利益率は54%とされ、前年同期比で43ポイントも改善する見通しだ。会社側も「売価の上昇は非常に大きなスピードで進んでいる」と説明しており、今回の好業績は単なる数量増ではなく、価格上昇の恩恵が大きい。
このスピードは、かつての東芝では実現できなかった変化である。総合電機メーカーとして多くの事業を抱えるコングロマリットで、意思決定が遅く、政治や官庁との関係にも縛られていた東芝とは違い、キオクシアはフラッシュメモリーに集中投資できたのだ。
外資系ファンドの外科手術
象徴的なのが、ベインキャピタルの存在である。2018年、ベインなどによる買収額は約2兆円だった。ところが上場時の時価総額は1兆円に満たず、半導体市況の悪化もあって、上場延期を繰り返した。日本では「外資に安く売られた」という批判もあった。
しかし足元ではキオクシアの株価は年初から4倍に上昇している。日本企業は「国策」や「総合力」という言葉で事業を抱え込むが、キオクシアは外資系ファンドによって解体・再生され、株主資本主義に徹することで初めて実力を発揮したのだ。
これは1980年代にアメリカの投資ファンドが企業買収でコングロマリットを解体し、生まれ変わらせた歴史を思い起こさせる。これはさまざまな犯罪を生んだが、結果的にはこうした外科手術がアメリカ経済をよみがえらせた。
株主資本主義の外科手術が日本経済を救う
この成功をもって「東芝復活」と呼ぶのは早計だ。半導体産業は好不況の波が大きいギャンブルとして知られる。今の急成長はAIに牽引されている面が強いが、AIデータセンター向けでは、広帯域メモリー(HBM)を持つDRAMが主役である。NANDはスマートフォンや民生機器にも広く使われるため、市況変動が激しい。
それでもキオクシアの奇蹟が示した意味は大きい。総合家電メーカーという古い器に閉じ込められていた日本企業の実力が、その呪縛から解放されて花開いたのだ。サラリーマン社長にはできない思い切った「選択と集中」を可能にしたのは、外資系ファンドの株主資本主義だった。
いまだに自民党には「新しい資本主義」と称して株主資本主義の行き過ぎを批判する政治家が多い。日本のレガシー企業にとっては、外資系ファンドは脅威だろう。しかしここまで落ちぶれた日本経済を回復させる手立ては、外科手術しかないのだ。キオクシアは日本企業の立ち直る方向を示している。







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