自民党内に、新たな議員グループ「国力研究会」が発足する。名前だけ聞くと外交・安全保障や経済政策を議論する普通の勉強会に見えるが、その顔ぶれとタイミングを見ると単なる政策研究会ではない。高市早苗政権を支える事実上の「総主流派工作」と見るべきだろう。

発起人は異例の大物ぞろい
報道によれば、「国力研究会」は高市政権の政策を政府・与党一体で推進するための議員連盟で、5月21日に初会合を開く予定だ。初回講師にはジョージ・グラス駐日米大使を招く予定だというが、そんなことはどうでもいい。
注目されているのは、その発起人の顔ぶれだ。麻生太郎副総裁を筆頭に、茂木敏充外相、小泉進次郎防衛相、小林鷹之政調会長、加藤勝信氏、西村康稔氏、萩生田光一氏、中曽根弘文氏、松山政司氏、有村治子氏、山谷えり子氏らの名前が報じられている。高市氏を支えた麻生氏だけでなく、総裁選で高市氏と争った茂木氏、小泉氏、小林氏まで入っている。
これは「高市派」の結成というより、「高市政権に逆らわないための保険」に近い。派閥解消後の自民党では、表向きは派閥政治が終わったことになっている。しかし政治家が集団で動く必要が消えたわけではない。資金、ポスト、選挙、総裁選。これらをめぐる力学は何も変わっていない。名前が「派閥」から「勉強会」や「議連」に変わっただけである。
むしろ今回の「国力研究会」は、派閥よりも便利な装置かもしれない。派閥なら「誰の派閥か」が問われるが、勉強会なら「政策を勉強しているだけ」と言える。会費も月額300円程度と報じられており、参加のハードルは低い。
旧安倍派を軸にした「総主流派」体制
政治ジャーナリストの解説では、規模は300人級になる可能性も指摘されている。これが実現すれば、自民党内の大半が何らかの形で高市政権支持グループに組み込まれることになる。その政局的な意味は大きく3つある。
第一に、高市政権の党内基盤を固めることである。高市首相は保守層の人気は高いが、もともと自民党内で圧倒的な派閥基盤を持っていたわけではない。そこで麻生氏を軸に、旧派閥横断で「高市を支える空気」をつくる必要があった。
第二に、高市再選をにらんだ包囲網である。総裁選で争った候補者まで発起人に入れることで、「ポスト高市」候補をあらかじめ政権支持の枠内に取り込む効果がある。敵を倒すより、敵になりそうな人物を同じテーブルに座らせる。いかにも麻生流の権力技術である。
第三に、旧安倍派の再編である。西村康稔氏や萩生田光一氏の名前が出ていることは見逃せない。政治資金問題でダメージを受けた旧安倍派にとって、「国力研究会」は復権の足場になり得る。林芳正氏など宏池会のメンバーが排除されていることから非宏池会の結集ともいえる。
国力研究会とは何か。ひと言でいえば次期総裁選を見据えた総主流派体制だが、中心は超高齢(85歳)の麻生氏で、300人規模となると派閥としては機能しない。「派閥が100人を超えると分裂する」というのが自民党の経験則である。総裁候補が入っていることからみても、高市再選のエンジンになるとは思えない。
自民党は派閥政治への批判を受けて派閥解消を進めたはずだが、気がつけば「研究会」という名の新しい結集軸が生まれている。看板を替えただけで、永田町の力学は変わらない。「国力」というのも政策ではない。自民党は今までもこれからも、地方政治家の仲よしクラブである。







コメント