どう読む?米中首脳会談:抱えている自国の問題が大き過ぎる両大国

これを書くのは米中首脳会談の一日目が終了した時点。つまり、このブログが公開されてまもなくに少人数のワーキングランチがあります。ただそのあと共同声明の発出予定はありません。私が見た限り、今回の会談の方向性は見えました。予想と違った点も含め、私の気づきとしてコメントさせていただきます。

トランプ大統領と習近平国家主席 ホワイトハウスXより

最大のポイントは中国が非常に気遣いをした会談であり、上手な演出をするために極めて周到な準備をした点であります。空港への出迎えは韓正副主席。前回が楊潔篪国務委員でしたからここで既にランクアップさせています。全体の基調はロイター通信が報じたように「建設的戦略安定関係」の構築であり、ライバルからパートナーへの位置づけの変更であります。

また今回アメリカを代表する企業群のトップを同行しましたが、それの意味するところはビジネスディールが主眼であったことを物語っています。つまりアメリカは売り込みに行ったわけです。一方の中国側は先の全人代で承認されたように中国のハワイと称する海南島を自由貿易の特区とすることで西側諸国との貿易の窓口をもう1つ作ることを推し進めています。ここでは既に6600品目の関税が撤廃され、世界の物資が集まり、加工されここから国内外に流れる新たなる拠点が生まれつつあります。つまり中国側も経済開放のアピールをし、「手と手を取り合って共に歩もうじゃないか」という戦略が明白に出ています。

またトランプ氏が9月に習近平夫妻をアメリカに招待したことを受け、今回の首脳会談においてある特定の成果を引き出すというより冷たい関係だった米中関係を正常化させ、更に発展させるための立ち位置の転換をさせるように見えます。

メディアにはトランプ氏の譲歩というニュアンスも見られます。確かにそう取られてもおかしくはないほどトランプ氏は各種政策で苦しんでいた中でこれ以上失策もできないし、敵も作れないというギリギリの状況でした。ここで中国と喧嘩することで一部のトランプファンを歓喜させるのか、中国とディールすることで農家から企業、従業員まで国民全般にメリットをもたらすものにするか、その判断を道中の飛行機で考えたということだと思います。

では経済以外の話はどうなったのか、これがほとんど聞こえてこないわけです。唯一、台湾については習氏が台湾問題については今後も含め、触ってくれるな、くぎを刺したとされます。つまり台湾問題の議論をするのではなく、議論の余地すらないという壁を作ったわけです。トランプ氏が本件で特に応戦したとの情報はなく、アメリカ側の発表でも台湾問題は触れていません。つまり今のところ、私が当初から予想したように台湾問題をめぐる議論はなかったとみています。

もちろん2日目の会談もあるし、メディアに漏れてこない話もあるし、数日たってからトランプ氏あたりから「こんな話をした」と漏れ聞こえてくることはあるかもしれませんが、台湾問題はサイドラインの話の可能性が高いと思います。よって日本が期待した日中関係改善の取り持ちは無いのではないか、と言う気もします。となればAPECまでに日中関係を多少でも改善させる方法は限られてしまいます。私なら首相の親書を石破氏か、6月の大規模な訪中団の団長を河野洋平氏が務めるのでどちらかに託して自らが問題の収拾を行う案が考えられますが、首相の性格からすればやらないでしょうね。

今回の米中首脳会談で我々の最大の関心事は地政学的に米中の間にある日本の政策や立ち位置がこの会談の方向性次第で大きく影響を受ける点です。高市氏としてはカナダがアメリカにいじめられているのと同様、日中関係の悪化を受けて積極外交に打って出ているわけです。来月もフランスでのG7で主要メンバーに会うのにわざわざ英国とイタリアの首相に個別訪問して会談する計画になっています。(英国は首相のステータスが危ういためどうなるかは未定。)結局それは米中という大国依存型からの脱却ということになるのかもしれません。これは別項で本テーマについて来週ブログを一本アップしますのでそこでもう少し考えたいと思います。

期待と違っているのがイラン問題。今のところそれに触れる感じが見えません。極秘に何かディールをするのかもしれませんが、イラン問題もほぼ無意味な延長戦に入っているので振り上げた拳をどうやって下ろすか、習近平氏の秘策でも出てくるのかと思っていましたが今のところは不明です。

感じたのは思った以上に両大国とも抱えている自国の問題が大きく、世界情勢に目を向けて何か共同で解決させようという余力がないように思えます。かつて「アメリカがくしゃみをすれば日本は風邪をひく」と言われました。最近、この有名な格言を耳にすることはほとんどなくなりましたが、現実としては変わりません。ただ、少なくともカナダも日本と同様だったのにアメリカとの関係悪化を受けてを政策を大きく変更させているように日本も風邪をひかない予防線を張る、そのような展開は今後、あり得るのでしょう。

技術が日進月歩であるように世界情勢もぐるぐる変わり、昨日の常識は今日の非常識というぐらい目まぐるしい時代になったと感じます。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年5月15日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。

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