不動産高騰で閉店に追い込まれる東京の個人飲食店

内藤 忍

代官山にあるタルトフランベの名店「コテ・フー」が今月末で閉店すると聞き、予約して出かけてきました。

タルトフランベとはフランス・アルザス地方およびドイツ南部の伝統的な薄焼きピザに似た郷土料理です(写真)。

私が知る限り高品質なタルトフランベが楽しめる東京の飲食店は他にはありません。サクサクとしたタルトフランベの生地とアルザスワインの極上の組み合わせがもう楽しめなくなるのは本当に寂しい限りです。

東京ではこの手の個人経営の飲食店が閉店に追い込まれるケースが増えています。

今回の閉店の理由は正確には知りませんが、店主は営業を続けたい意向で、恐らく賃借物件の契約の問題のようです。

都心部においては家賃が高騰しており、定期借家契約の場合、更新時に大幅な家賃の引き上げが提案されることは珍しくありません。また、古いビルを建て替えしてバリューアップする事例も増えており、建て替えに伴う立ち退き要請があったのかもしれません。

別の場所に移転するにしても、東京であれば家賃が上昇していることには変わらず、またタルトフランベ用の薪窯を備えた内装にはかなりのコストがかかります。

最近はSNSで目を引くような、いわゆる「映える」メニューや奇抜な演出がないとネット上で話題にならず集客しにくくなっているという現状もあります。

タルトフランベは一度食べるとその美味しさの虜になりますが、見た目は地味で具がのっていないピザのように見えてしまいます。

ピザとは別物の深い味わいはお店で食べないとわかりません。そしてアルザスのワインを合わせることで他には無い職人の味が楽しめるのです。

このような地道に質の高い料理を提供している店が見た目の派手なお店の中で埋没してしまう。東京の魅力的な食文化を支えるのはこの手の素晴らしい個人飲食店ですが、職人気質の個人店にとっては難しい環境です。

「コテ・フー」は現状は東京の移転先が見つからず一旦閉店してしまうようです。再開については今のところ白紙のようです。

定期的に通っていたお気に入りのお店が無くなってしまうのは、とても寂しく残念なことです。飲食関係者の方で力になれる方がいればご連絡ください。

Nicholas Ahonen/iStock


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2026年5月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。

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