皇位継承をめぐる国会論議が迷走している。衆参両院の正副議長は、皇族数の確保策として「議長見解」を取りまとめているが、ややこしくてほとんどの人には意味がわからない。
この議論では皇室の危機を招いている皇室典範の男系男子の維持が最初から前提とされ、その枠内で皇族数をどう確保するかという、きわめて狭い議論に押し込められているのだ。

赤旗より
奇妙な「議長見解案の取りまとめ」
この点を最も明確に批判しているのが日本共産党だ。赤旗によれば、共産党の小池晃書記局長、社民党の福島みずほ党首、「沖縄の風」の高良さちか幹事長は5月29日に国会内で記者会見し、衆参議長見解案の取りまとめは「極めて拙速」だと批判した。
小池氏は、天皇の制度は憲法に基づいて議論すべきであり、男系男子の継承を「不動の原則」とする前提で進めることに反対した。憲法第2条は天皇の地位を「世襲」としているが、これは男系という意味ではない(政府の公式見解)。
にもかかわらず、現在の国会論議は「男系男子」を最初から結論として置き、その結論に合わせて制度をつぎはぎしようとしている。その結果、出てきた案は非常に奇妙なものだ。
第一の案は、女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持するというものだ。一見すると女性皇族の活躍を認める案に見えるが、その配偶者や子には皇族の身分を与えないとされている。これでは安定的な皇位継承にはつながらず、皇族数の減少を先送りするだけである。
第二の案は、旧宮家の男系男子を皇族の養子に迎えるというものだが、これも無理がある。戦後、一般国民として生まれ育った人を、ある日突然、皇族という特別な身分に戻すことになり、憲法が否定する「門地による差別」に抵触する。
これは重要な指摘である。憲法14条は、すべて国民が法の下に平等であり、門地によって差別されないと定めている。旧宮家の血筋を理由に一般国民を皇族にするなら、それは血統によって特別な法的地位を与えることになる。
なぜ「男系男子」にこだわるのか
そもそも、なぜそこまでして男系男子にこだわるのか。過去に女系天皇は存在した。側室制度がなく、少子化が進み、皇族数も減っている現代において、男系男子だけに皇位継承を限定すれば、制度そのものが先細りするのは明らかだ。
国民世論も、女性天皇を容認する方向にある。毎日新聞の世論調査では女性天皇容認が72%に上り、共同通信の2024年調査では女性天皇に賛成が90%、女系天皇に賛成が84%だったと報じられている。
それにもかかわらず、国会では女性天皇・女系天皇の議論を避け、女性皇族の身分保持と旧宮家養子案だけで「立法府の総意」を作ろうとしている。これは「国民の総意」ではなく、「男系維持派の都合」にすぎない。
天皇制を守る共産党の現実論
保守派は「伝統」を口にするが、最近の歴史学の成果によれば、男系男子は古来の伝統ではない。伝統とは制度を存続させるための知恵であり、男系男子に固執した結果、皇位継承資格者が極端に限られ、制度の安定性が失われるのは本末転倒である。
ここで共産党の主張は、皮肉にも最も現実的である。共産党は天皇制そのものに批判的な立場を歴史的に持ってきた政党だが、現在の皇位継承論議では、憲法にもとづいて国民の総意に立ち返り、女性天皇・女系天皇を正面から議論せよと主張している。これはイデオロギーではなく、制度設計としてまっとうな議論である。
皇位継承論議で問われているのは、男系か女系かという形式だけではない。象徴天皇制を、これからも国民に支持される制度として維持できるのかという問題である。そのためには、憲法、国民世論、男女平等、制度の持続可能性を正面から考えなければならない。今回は共産党だけが正論を言っている。






コメント
記事の指摘は鋭い。
しかし本記事には議論の根幹を揺るがす看過できない誤りが含まれているため、まずそこを指摘させてください。
## 最大の問題点:「過去に女系天皇は存在した」は明確な誤り
記事中の「過去に女系天皇は存在した」という一文は、はっきり言って間違いです。
あるいは「女性天皇」との混同です。ここは皇位継承論の根幹に関わるため、最も強く指摘しておきたい点です。
両者は明確に区別する必要があります。
– **女性天皇**(過去に8方10代存在):本人が女性の天皇。父方をたどると必ず天皇に行き着く「男系女子」。
– **女系天皇**(過去にゼロ):父方をたどっても天皇につながらず、母方を通じてのみ皇統につながる天皇。
推古、持統、元明、元正、孝謙、後桜町といった歴代の女性天皇は、いずれも男系です。
2005年の皇室典範に関する有識者会議報告書も、過去の10代8方の女性天皇を「男系女子」と整理しており、2021年の有識者会議報告も、歴代の皇位は例外なく男系で継承されてきたと記しています。
したがって記事のこの一文は単なる用語ミスではなく、議論の前提を崩しかねない致命的な誤りです。
この区別を曖昧にしたまま「だから男系にこだわる必要はない」と論を進めるのは、議論として成立していません。
## 「男系男子は古来の伝統ではない」も雑な表現
この表現も不正確です。正確に言えば、**男系継承は歴史上かなり一貫しているが、皇位継承資格を法律上「男系男子」に明文化して固定したのは明治皇室典範以降**、ということです。
2005年報告書も、明治典範制定までは皇位継承についての明文規定はなかったものの、皇位は皇統に属する男系の者により継承されてきたと整理しています。
「明文化されたのは明治以降」という事実と、「男系という実態が伝統ではない」という主張は、まったく別物です。記事は両者を混同しています。
## 養子案=「門地による差別」という断定にも飛躍がある
皇室制度はそもそも憲法第2条で皇位を「世襲」としており、血統原理を前提とした特別な制度です。
> 第二条 皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。
一般国民の平等原則とは別の地平で設計された制度だと憲法に明確に書いてあります。
もう少し落ち着いて憲法を読み直して欲しいと思います。
まとめ
制度の持続可能性を議論すること自体は重要ですが、まずは歴史的なファクトと憲法上の特殊性を正しく踏まえた、正確な議論が必要不可欠であると考えます。
「女系天皇は過去に存在した」という前提に立った議論は、出発点ですでに崩れていると言わざるを得ません。