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飛行機のオーバーブッキング(飛行機の座席数以上に販売すること)を、航空会社の単純なミスだと思っている人は少なくない。
【拡散希望】
ANAで予約していたのに、空港で「座席の余りがありません」と言われ、搭乗できませんでした。
理由を聞くと「そういうプランで予約されたから」とのこと…(は?)
大事な予定にも間に合わず
払い戻しもなし。
ちなみに台風欠航の振替での予約です。同じ経験をした人はいますか?
— ㊗️往復路ともに無事返金!されました。補償マイルの案内は一度も無かったけど、対象らしいので問合せ中。 (@inuto_nekoto_w) June 3, 2026
だが実態は違う。航空会社は、予約客の一部が空港に来ないことを見込み、座席数を超えて航空券を売る。空席で飛べば、その座席の価値はゼロになり空気を運ぶだけになるからだ。
つまりオーバーブッキングは、航空会社の収益を高める販売戦略である。予測が外れたときの協力金は、特別に誠実な対応ではなく、自ら作った座席不足を処理する費用にすぎない。
問うべきは、その費用が十分なのか。そして、誰が座席を失うのかを、購入前に利用者へ知らせているのかである。
ANAで目立った搭乗不能者
国土交通省が公表した2024年1〜3月のフレックストラベラー制度実績では、国内航空各社の不足座席数は1107席だった。このうちANAグループは739席を占めた。
ANAでは658人が自主的な便変更に応じた一方、81人は予約便に搭乗できなかった。全社合計90人のうち、実に9割である。
ANAが公表する当日1万円、翌日以降2万円という金額は、あくまで自主的に便変更へ応じた旅客への「協力金」だ。希望者が集まらなかった後、誰を搭乗させず、どう補償するのかは分かりにくい。
「協力金を払っているから誠実だ」という見方は甘い。過剰に売ったのは航空会社である。収益を上げるために取ったリスクなら、失敗したときの費用も航空会社が負うべきだ。
安い客が不利になること自体はあり得る
ただし、運賃の安い客が不利になること自体を、直ちに不当とは言えない。
米国では、オーバーセールスで強制的に搭乗を断る場合、航空会社が支払運賃、チェックイン時刻、会員資格などを搭乗優先順位の基準にすることがある。1万円のセール客より、直前に6万円を支払った客を優先したいという判断は、企業行動としては理解できる。
問題は、そこを利用者に説明しているかどうかだ。安い航空券に、変更不可、マイル積算率の低さ、座席選択の制限が付くのはよい。だが、混雑時やオーバーブッキング時に搭乗優先順位まで低くなるなら、それはサービス差ではなく、輸送される確実性の差である。
そこを曖昧にしたまま売るべきではない。
シンプル・セールで何が変わったか
ANAは2026年5月19日から国内線運賃を刷新した。安価な「シンプル」と「セール」は、事前座席指定が出発24時間前からになった。オンラインチェックイン時に空いている席を選ぶ仕組みである。
座席番号を持っていないからといって、予約便に乗る権利まで弱くなるわけではない。
しかし実務を考えれば、すでに座席番号を持つ客を外すより、まだ座席を割り当てていない客を調整対象にする方が容易だろう。
ANAの新約款には、座席数を超える旅客が搭乗手続きを求めた場合、まず自主的に搭乗を取りやめる旅客を募集し、それでも足りなければ「会社の定める搭乗優先順位」に基づいて搭乗を断る場合があると明記されている。
約款に書いた以上、法的な根拠は整えたのだろう。だが利用者が知りたいのは、「会社の定める搭乗優先順位」の中身である。支払運賃なのか。チェックイン時刻なのか。座席指定の有無なのか。会員ステータスなのか。乗継の有無なのか。
そこが見えなければ、自分が買った航空券のリスクを判断できない。
満席でなくても座席は足りなくなる
危険なのは、自分が買った便が購入時点で満席でなくても安心できないことだ。
航空便では、出発までに悪天候、機材トラブル、機材変更、前後便の欠航が起きる。欠航便の旅客が後続便へ振り替えられれば、もともと余裕があった便でも座席が逼迫する。
幹線なら、他社便や新幹線という代替手段がある。だが、ANAしか就航していない路線、便数の少ない地方路線、離島路線では事情が違う。1便に乗れないことが、数時間の遅れでは済まないこともある。
そのとき、座席指定済みの客と、出発24時間前まで座席番号を持たないシンプル・セールの客が同じ便にいる。後者が必ず不利になるとは断定しない。だが、最後まで調整しやすい存在になることは否定できない。
座席指定画面は空席そのものではない
利用者は、座席指定画面に空席が表示されなければ「もう席が埋まっている」と受け止める。しかし表示されるのは、航空機の物理的な空席そのものではない。
配慮が必要な旅客用の座席、機体バランス管理、運用上の調整席、上位会員や高額運賃向けに残す座席など、航空会社が事前指定に出していない座席は見えない。
台風や大雪は数日前から予測できる。航空会社が欠航、遅延、振替需要を見越して、座席指定に出す座席数を調整すること自体は合理的だろう。
だが、画面に「空き座席なし」と出ても、それが物理的な満席なのか、運用上の保留なのか、上位運賃・上級会員・振替客向けの調整なのかは分からない。ANAが恣意的に座席を隠していると断定するつもりはない。問題は、座席管理がブラックボックス化していることだ。
安いANAならLCCでよい
説明が広がれば、「ANAの安い運賃ならLCCでよい」と考える客も増えるだろう。ANA便でありながら、事前座席指定ができず、空席待ちも制限され、混雑時の優先順位も見えないなら、期待される「ANAらしい安心」とズレる。
LCCは座席指定や手荷物が有料であることを明示して売る。安さの理由を見せずに売るのは、公正な競争ではない。
欧米は自由と責任をセットにする
欧米でも、航空会社の収益管理は認められている。しかし、その自由には責任が伴う。
米国では、オーバーセールスで強制的に搭乗を断られた旅客への補償が、航空券価格と到着遅延時間に連動する。EUでも、本人の意思に反して搭乗を拒否された場合、飛行距離に応じた補償がある。
安い客が不利になる可能性は欧米にもある。だが、その代わり、選定基準の説明と補償が制度化されている。
ANAの協力金は固定的で、必要人数が集まるまで金額を引き上げる逆オークションにはなっていない。誰を搭乗させないのかも見えない。国交省の情報公開も、航空会社別の不足座席数や搭乗不能者数にとどまり、利用者が知りたい運賃種別や座席指定の有無までは分からない。
なお、米国では一定条件のもとで航空券購入後24時間以内の無料取消や予約保持が求められている。ANA米国サイトで購入した日本国内線にも同様の扱いが及ぶ場合がある。同じANA便でも、購入窓口によって消費者保護に差が出るのである。
国交省は情報公開を強化せよ
国交省は、フレックストラベラー制度の統計公開を充実させるべきだ。航空会社別の人数だけでは足りない。
少なくとも、搭乗できなかった旅客の運賃種別、座席指定の有無、チェックイン時刻、会員ステータス、選定基準、自主協力金と強制搭乗拒否補償の区別、実際に支払われた補償額は公表させる必要がある。
安い客を後回しにする余地自体は、国際的にもあり得る。だが、そのリスクを説明せず、補償も弱く、国交省も十分な情報を出さないなら、利用者保護としては不十分だ。
安い航空券とは、サービスが少ない航空券であってよい。しかし、航空会社が需要予測を外したとき、説明も十分な補償もなく最初に座席を失う航空券であってはならない。
ANAが安い客を後回しにできるなら、欧米並みに説明し、欧米並みに補償すべきである。







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