イーロン・マスク氏が率いるスペースXは新規株式公開(IPO)に伴う公募で750億ドルを調達し、6月12日にアメリカのナスダック市場に上場予定です。公開価格は1株135ドルで時価総額は約1兆7700億ドル(約283兆円)となると報じられています。

このニュースを聞いて私が思い出したのは、宇宙ビジネスの成長期待でもテスラ株の動向でもありません。昨年まで盛り上がっていた「湾岸タワマン狂想曲」の光景です。
東京の湾岸エリアのタワーマンションは買えば値上がりすると言われ、新築物件の抽選に当たればそれだけで数百万円、数千万円の含み益が確定する「プラチナチケット」になっていました。
私も以前のブログで取り上げたことがあります。当時はまだ価格が割安で、特に晴海フラッグは周辺の価格に比べ格段に低い値付けがされていました。
その後、タワーマンションの価格がどんどん高くなっていき、このまま買わなければ一生買うことができないという強い焦燥感を持つ人達が低金利を背景に物件に殺到しました。
しかし、そんな実需の人たちだけではなくタワーマンションを投機の対象として転売によって利益を狙う人たちも増えていきました。
新築マンションの抽選に一喜一憂していた人たちの熱気は、まさに今のスペースXの株式に対する熱気と重なります。
スペースXの株式価値はアップル、エヌビディア、マイクロソフトといった世界のビッグテックに並ぶ規模になっており、将来の事業拡大に対する期待が大きく織り込まれた水準になっています。
もし、今後株価が2倍になれば時価総額は600兆円近くになり、3倍なら900兆円に近いレベルです。現状の事業規模とリスクから考えればかなり無理のある数字ではないでしょうか。株式価値の伸び代(アップサイド)は極めて限定的だと思います。
そして、もう1つのタワマン狂騒曲との共通点は、恐らく投資しようとしている人々の多くがスペースXの宇宙開拓という壮大なビジョンに共鳴して長期保有しようとしているわけではないという点です。
湾岸タワマンで転売して短期で利益を狙おうと目論んでいた実需を伴わない転売ヤーと全く同じです。
多くのIPO参加者は上場直後の上昇タイミングを利用して短期で利益確定させ売り抜けようとしているはずです。
スペースXに続いて今秋以降にはオープンAI、アンソロピックといった類似企業の上場も控えています。これらの企業にも今後投資資金は分散されていきます。これも湾岸タワマンが次々と建設され供給過剰になっているのに似ています。
インデックス投資家の1人としては大型のIPOが相次ぐことで株式市場全体の需給に悪影響が出たり、インデックス算出に歪みが生じるといったデメリットが無いことを祈ります。
編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2026年6月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。







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