「イオンモールおじさん」ファッション論争が映す中年男性批判のゆがみ

6月上旬、X上で「イオンモールおじさん」と呼ばれる中年男性のカジュアルファッションをめぐる批判が拡散し、大きな議論となった。

ポロシャツ、チノパン、ボディバッグといった実用的な服装を「ダサい」「不快」とする声に対し、男性側や擁護派から強い反発が起きている。

  • 議論の発端となったのは、✹✹☆(@a_rin_ur)氏の投稿である。同氏は「中年男性へのファッション批判から垣間見える女性たちの欲望」として、「おっさんは無害であるべき」という心理を指摘した。この投稿は230万回以上閲覧され、広く拡散した。
  • 批判の対象となったのは、地方のイオンモールなどで見かける中年男性の典型的なカジュアルスタイルである。ポロシャツ、チノパン、ボディバッグ、ハーフパンツ、パーカーなど、機能性や快適性を重視した服装がやり玉に挙げられた。
  • 批判側からは、「若作りや肌見せは避けるべきだ」「清潔感がない」「視界に入るだけで不快」といった声が上がった。服装の良し悪しを超えて、存在そのものへの嫌悪感に近い表現も目立った。
  • 一方、擁護側からは、「家族持ちの実用性を尊重すべきだ」「赤の他人の服装に口を出すべきではない」「女性が同じような外見批判を受けたら即炎上するのに不公平だ」といった反論が相次いだ。
  • 中年男性の服装は、若者向けファッションや流行の文脈では語りにくい。

  • メディア各社もこの論争を取り上げた。他人の格好を採点したくなる心理を考察したり、ボディバッグ問題をファッション業界の構造的課題と見立てたりして報じられた。アゴラでは黒坂岳央氏が、こうした批判を「弱者いじめ」である面を憂慮しつつ、子育て、仕事、家計、移動のしやすさなど、生活上の制約の中で、機能性と快適性を優先して選ばれている面が大きいと分析している。

  • 今回の論争は、単なるファッション論にとどまらない。ルッキズム、ジェンダーの非対称性、個人の自由、他者への配慮をめぐる価値観の対立を浮き彫りにした。

  • 特に問題なのは、外見批判が中年男性に向けられた場合、比較的許容されやすい点である。女性や若者に対する同様の批判であれば強い反発を招く可能性が高いだけに、批判の非対称性は無視できない。

  • 他人の服装に不快感を覚えること自体は自由である。しかし、それを公共の場で一方的に断罪し、属性ごと嘲笑することは、個人の尊厳を損なう行為になりかねない。

今回の一連の議論は、他人の外見に過度に干渉せず、多様な生き方を認める社会の成熟を改めて問うものとなった。結局のところ、「好きな服を着る自由」を再確認する機会になったといえるが、中年男性批判はなんでもありという非対称性が改めて確認された。

※東京都庁のクールビズ解禁で「おじさんのハーフパンツは見たくない」という非難が起こったことも記憶に新しいところ。

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