「完全自律型ドローン」が戦場を制覇する時

衝撃的なニュースが流れてきた。ドイツ民間放送ニュース専門局NTVが12日、キーウからの情報として報じたところによると、ウクライナは前線で人工知能(AI)搭載完全自律型ドローンの試験を実施し、ドローンが自律的に人を殺害したという。ロシアとウクライナは戦闘用ドローンへのAI搭載技術の開発・配備をめぐる技術競争を繰り広げてきた。AIによって人の操縦なく自律的に人を殺傷する無人機は技術的には以前から製造可能だった。専門家によると、ウクライナの最前線ではまだそのような無人機は実用化されていないという。

特別軍事作戦に参加する軍人との会合に参加したプーチン大統領、クレムリン公式サイトから,2026年6月12日

この情報は、英国の科学雑誌「ニュー・サイエンティスト」が、試験に技術を提供したドローンメーカーのアレクサンダー・コハノフスキー氏の発言を引用して報じた。「我々は試験を行った。大規模に使用したことはない。この実験は、ウクライナ軍の反攻作戦の一環として、約2年前にバフムートとチャシフ・ヤール近郊で、名称不明の軍事部隊によって実施された」という。実験後、ウクライナ軍は調査のため、有人ドローンを現場に派遣し、自律型ドローンが兵士数名とトラック1台を破壊したことを確認している。

通常、自律型ドローンとは、人間のコントローラーによる操縦を必要とせず、AIや各種センサーを駆使して自ら周囲の状況を判断し、飛行・タスク実行を行うドローン。あらかじめ設定されたルートを飛ぶ「自動飛行」とは異なり、障害物の回避や目標物の追跡、状況に応じた経路の再計算をリアルタイムで独自に行える。ウクライナが実験した無人機はさらに一方進み、無人機自らの判断で殺害できる完全自律型ドローンだ。

報告書によると、内部コードネーム「ターミネーター」と呼ばれる10機のクアッドコプター型ドローンが使用された。これらのドローンは、前線に向かって飛行し、約10分で3~5キロメートルを移動した後、「ターミネーターモード」に切り替えるようにプログラムされていた。それ以後はAIモデルが引き継ぎ、自律的に標的を探し出し、攻撃を行った。

人工知能は戦車や接近するシャヘド・ドローンを確実に探知できるが、ロシア兵とウクライナ兵、あるいは戦闘員と民間人を区別することはできない。また、自律型システムは、電波妨害下でも正確に攻撃できるメリットがある反面、無人機自身が命を自律的に奪うことに対し、倫理的な課題が出てくる。

米国のシンクタンクCSIS(戦略国際問題研究所)の元ウクライナ政府顧問ケイト・ボンダー氏は、テクノロジー誌「IEEE Spectrum」で、「軍隊が戦闘において完全に機械に依存するようになるまでには、おそらくあと10年から15年かかるだろう」と予測している。

AIの軍事利用は増加の一途を辿っている。年初以来、ウクライナは占領地におけるロシアの補給路へのドローン攻撃を強化している。兵士がドローンを目標地域まで操縦するが、その後はAIによって選択された目標を攻撃する。

IEEE Spectrum誌によると、ウクライナ企業は命中率を高める目的でドローンに自律モジュールを後付けしている。一方、ロシアはネットワーク接続され、サーマルイメージングカメラを搭載したインテリジェントなShahedドローンへの依存度を高めている。

現在、前線における人的被害の75~85%はドローンによるものだという。ウクライナは2025年までに400万台の無人ロボットシステムを生産したと推定されており、2026年には500万台から600万台に達する見込みである。この数字には、グレーゾーンで運用される地上ロボットや、航空戦を補完するドローンボートは含まれていない。

兵力不足を解決し、人的犠牲を最小限に防ぐために、無人機、ロボット兵器が今後、戦場で益々重要な役割を果たすことは間違いない。それに伴い、戦争の仕方、戦略に変化が出てくることは必至だろう(「ロボット軍用犬が戦場に登場する時」2024年6月1日参考)。

国連は、ウクライナで5月に民間人の死傷者数が2022年4月以来最多を記録したと発表した。人権高等弁務官事務所(OHCHR)の報告書によると、5月には少なくとも274人が死亡、1,763人が負傷した。これは、死者191人、負傷者865人が記録された2025年5月と比較して93%の増加だ。報告書によると、死傷者の45%はロケット弾やドローン攻撃によるもの。前線付近では、短距離ドローンが民間人の死傷者の主な原因となっている。

13日早朝の外電によると、ロシア南部でウクライナのドローンによる攻撃があり、1人が死亡、3人が負傷した。クラスノダール地方のベニアミン・コンドラティエフ知事は「ウクライナのドローンがテムリュク地区を攻撃した」と述べた。この攻撃により、ロシアとクリミア半島を隔てるケルチ海峡に近いアゾフ海沿岸のテムリュク地区にある港湾ターミナルが被害を受けた。

ウクライナ軍はここにきてロシアの石油産業に対するドローン攻撃を反撃手段として用い、モスクワへの圧力を強めてきた。ロシア当局は最近、ガソリンの流通を制限している。

なお、NTVが12日に報じたところによると、ロシア兵士たちはプーチン大統領に対し、ウクライナのドローンによる脅威の高まりについて直訴している。兵士たちは、ウクライナ軍が使用するドローンによって引き起こされる問題について詳細に報告したという。ウクライナ軍はスターリンク衛星通信ネットワークを利用しているが、ロシアは年初にこのネットワークへのアクセスを失った。プーチン大統領は、モスクワの防衛強化を指示した。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年6月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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