酒を飲まない時代はやってくるのか?

我々の世代が会社勤めしていた80年代の事務所はタバコの煙でもくもくとしているのは当たり前。暇さえあれば煙草をくわえている前の席に座っている人に「暇なんですか?」ときけば「ざけるな、考えごとをしているんだ!」と怒られたりしたものです。それがこの40年ちょっとでこうも様変わりするとは誰も想像できなかったともいます。

タバコは「百害あって一利なし」とも言われるほどですが、酒はどうでしょうか?「酒は百薬の長」とも言うし、その昔は「赤ワインにはポリフェノールという抗酸化物質が入っていて体にいいのだ」と言われたこともあります。それは嘘ではないですが、近年はそのプラス要因よりアルコールのマイナス要因の方が大きいともされます。

ただ明白な変化は今の50代半ばぐらいから下の人たちの酒に対する価値観だと思います。日本だけの話をすれば会社でモノを言えない憂さを酒で晴らす、コミュニケーションならぬ「飲みニケーション」などとして会社によっては社長自らが酒を注いで回る、会社にバーがある、終業したら車座になって社内で乾きもので酒を飲むなどは案外近年でもやっている会社はまだあるかもしれません。が、参加者も減っているし、若い人は社内の人と酒は飲みたくないのであります。飲むなら仲間とか、自分のためになる人とか、単に酒を飲むにしても目的意識を持った飲み方をされる傾向が見て取れます。

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また体質的に飲める人でもオケージョン(飲む機会)がない限り飲まないという人も周りに増えました。では海外はどうかと言えば私がカナダで見る限り、人前での飲酒量は明らかに少ないと思います。ただ統計的に見ると純アルコール量(アルコールを100%で換算します)は日本人とカナダ人は年間、概ね同じぐらいの7リットル、アメリカ人が9.5リットルぐらい飲んでいます。ただ、カナダ人もアメリカ人も車で通勤している人が多いので外ではせいぜいビール一杯とか、ワイン一杯ぐらいしか飲ない人が目立ちます。(もちろん中にはガンガン飲む人もいます。)たぶん家で飲んでいる人が多いのではないのでしょうか?

ただどの国もアルコール摂取量が着実に減ってきているのはどの統計を見ても明らかです。世界で共通している現象であり、特に若者のアルコール離れが指摘されているのでアルコールに対する魅力が欠けてきたといったほうが良いと思います。SNSとか個の時代とかいろいろ社会学的な理由はあるようですが、タバコと同様、社会がアルコールを飲まねばならない状況から離脱しつつあるのでしょう。理由は社会が穏和になってきたこと、北米でストレスをためている人はアルコールではなく「お薬」を摂取する方が楽だからかもしれません。多くの「お薬」は多幸性となるため、アルコールに代わるストレス発散の代替と考えてもおかしくないと思います。

カナダはご承知の通り大麻が合法で、街中には「大麻屋(カナビス ストア)」がコンビニの数より多いぐらい存在します。昔は入り口から店の中は見えない様にしていたところが大半だったのに最近は店の中が丸見えのところが増え、金曜日の夕方となれば客でにぎわっているのが良く見えます。

酒をあえて飲まない人のことをソバキュリアン(Sobercurian)と言いますが、静かなブームであります。宗教的理由も背景にある人もいますし、健康上の問題もあります。アメリカで直近の禁酒法が制定されていたのは1920年から33年ですが、その後、大不況になりアメリカ政府が税収欲しさに禁酒を解禁したとされます。国レベルで禁酒するのですからすごいと思います。ちなみに小説や映画の「華麗なるギャツビー」の背景は1922年で禁酒法の真っただ中でしたが、映画ではパーティで酒がふるまわれていたのは裏ルートの酒が出回っていたのが理由です。

ではお前は酒無しで大丈夫か、と言われたらやってやれないことはないという忍耐力がついてきています。家では医者から指摘があり、相変わらず飲まないのですが、最近外で飲んでも初めの1杯はうまいけれど3杯目ぐらいからはどうでもよくなってしまい、むしろもういらないという拒絶反応すら出てきています。体が少しずつアルコールを求めない体質になってきたのかもしれません。

ということは飲むのはタバコと同じ、癖なのだろうと思います。私も昔はタバコを吸っていて3度目の禁煙で成功しました。なかなかつらかったです。アルコールも肝臓が悪いと医者に脅され、それを聞かないふりをしていて2度目の検査で爆弾を落とされて目覚めて正気になったわけで、なにかきっかけがあればやめられるものなのだなぁ、と思っています。

社会全体が酒を求めない時代になり、酒を飲もうとも誘われなくなってきたのは時代の移り変わりなのかもしれません。ストレスの発散方法が増えたということもあるし、ストレスをさほど感じない業務の人も増えたのかもしれませんね。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年6月14日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。

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