「願えばかなう」の正体は構造論である!

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書店の自己啓発コーナーに行くたび、私は少し身構える。

「願えばかなう」「引き寄せの法則」「人生は思考次第」。棚一段ぶん並ぶこれらの言葉は、一見やさしい。

しかし、突き詰めれば、「うまくいかないのは思考が足りないからだ」という構造になりがちだ。現実に打ちのめされた人が、すがった本からもう一度「あなたのせいだ」と打たれる。これは励ましの顔をした暴力だと、私は思っている。

わたしを変える魔法』(白石美帆著、同文舘出版)

フラクタルとは本来、数学・自然科学の言葉である。海岸線の入り組み方、ブロッコリー、シダの葉——小さなものと大きなものが同じ構造で存在する現象を指す。

これを心に応用すると、心の中の小さな葛藤と、外で起きる大きな対立は、サイズだけ違って同じ構造かもしれないとなる。「思考が現実化する」と言われると軽く感じるが、「同じ構造が拡大されて環境に出ている」と言われると、不思議と納得できる。

これは精神論ではなく構造論なのだ。

私自身、職場で同じパターンの人間関係トラブルを繰り返した時期がある。相手は変わるのに、起きることはいつも似ていた。当時は運が悪いと思っていたが、自分の中の同じ葛藤が、相手を変えて同じ形で現れていただけかもしれない。

本書に登場する優子さん(仮名)は、複雑な家庭で育ち、50代になっても諦めを抱えていた。それが学んで1年後、「ものを見て『すてきだな』って感動したり、人が楽しそうに会話しているのを見て『なんかいいな』と感じるようになった」と言う。

当たり前のことを50代で初めて感じた——逆に言えば半世紀あまり、彼女の世界にそれは存在しなかったのだ。彼女はその後パートナーと出会い、事業を始める。先に変わったのは世界ではなく、世界に向ける本人の温度だった。

もちろん、心と無関係に降りかかる理不尽もある。ただ、自分でコントロールできる範囲だけでも「私の心が私の世界のかなりをつくっている」と仮に置いてみる。

その仮置きだけで、見え方は確実に変わる。人は50代からでも「なんかいいな」と感じ直せるらしい。人を二度殴らない自己啓発もあるのだと、その事実に少し救われた気がする。

尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)

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