忙しい人ほど本を読む:「時間ができたら」は永遠に来ない

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結論から言う。忙しい人ほど本を読んでいる。「時間ができたら読む」と言う人に、その時間は来ない。死ぬまで来ない、と断言していい。人は暇になると、もっと暇になろうとするからだ。

だらだらスマホを見て、気づけば夕方。「今日も読めなかった」。その繰り返しだ。

速効読書』(石川和男著)青春出版社

そもそも人間は、先延ばしをするようにできている。「明日から本気を出す」。そう言って、翌日は体調を理由に、その翌日は急用を理由に、また先送りする。先送りは、やっていないのと同じだ。明日になれば全開でやる気が出る、などということは絶対に起きない。追い込まれて初めて、人は実力以上の力を出す。

「今日中に終わらせないとヤバい」という緊張でも、脳内にノルアドレナリンが分泌され、危機回避や緊急事態への対応が可能になる。オフィスが火事になれば、人は資料を抱えて階段を駆け下りる。「資料を作成してから避難する」人はいない。ピンチが、集中力を一気に引き上げるのだ。

石川さんが税理士試験に専念し、時間が腐るほどあった時期は、かえって集中できなかった。「いつでもできる」と思うと手が動かない。逆に働きながら学んだ時期は、通勤の15分、昼休みの20分という切迫感が頭をクリアにした。合格したのはその時期だ。

ただし、追い込まれさえすればいいわけではない。ムダな努力を続けることも危険だ。大学受験のころ、勉強しても成績が上がらず、「成績アップ本」も赤本も効かなかった。成果が出ないと、努力そのものがバカらしくなる。

学生の頃、数学が追試になり、落第寸前まで追い詰められた。慌ててクラスの秀才に頭を下げると、教わったのは当たり前のことだった。教科書の重要な箇所だけ覚えろ、と。そのとおりにやって合格できた。やり方を根本から変えなければ、努力は報われない。

ここで読書の話に戻る。読書も同じだ。覚えるために読む本と、使うために読む本は、まったくの別物だ。ビジネスパーソンの強みは、読んだことをすぐ試せる「実験場」を持つことにある。中間管理職のころ、何度言っても動かない部下が、本で読んだ一節を試した翌日に動いた。

「早く報告してくれると助かる」と弱さを見せただけだ。人は正しさでなく、関係性と理由で動く。よく本を読む休職中の友人は「なるほどで終わる」と言っていた。

試す場がないからだ。「明日の会議で使える」「あの部下に刺さる」と使う前提で読むと、無意識にフィルタリングが始まり、必要な部分だけが頭に残る。蛍光ペンで塗りたくった本より、1か所だけ折った本のほうが、あとで効いてくる。読書は知識の蓄積ではなく、思考の訓練だ。道具は、使ってなんぼなのだ。

尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)

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