政府提言「貯蓄から投資」、脇は締めよ:異常な動きをする日本の株価

政府が「2040年までに家計金融資産に占める株式や投資信託、債券の比率を40%に引き上げる目標を掲げる調整に入った」(日経)と報じられています。25年末の約2倍を目標にするそうです。

政府は過去、何度も「貯蓄から投資を」を提言してきました。バブル崩壊で含み損を抱えた個人投資家所有の株式が長年塩漬けになるも、近年の株価上昇でそこから解放され、高級腕時計などが売れるようになり、社会全体でお金が廻る時代が再度到来したことは大きな変化でした。それまでは家計を預かる主婦が「株をやれば損をする可能性がある」というリスク認識を極端に拡大解釈して「含み損が1円でも発生すれば不安でしょうがない」という方が相当いたことも事実でありますが、その認識も少しずつですが、変わってきているように見えます。

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日本のマネーに対する制度整備は大きく遅れていました。アメリカやカナダでは個人で運用する確定拠出年金や退職貯蓄プランが長く国民の間で普通に利用されています。これは国が準備する年金では到底生活できないことが分かっているのでその上乗せ部分を個人が各々設計し、運用する仕組みであります。私も活用しています。これの優れているところは所得税の繰り延べという発想なのです。

例えばカナダである年の所得税額が5万㌦(550万円)あったとします。この時、退職貯蓄プランに5万㌦移し替えると所得税はゼロになります。その代わり将来この退職貯蓄プランから引き出した額は引き出し額全額が「所得」とみなされ、課税対象になります。ですが、通常、リタイア後に引き出すことを前提としているのでその頃は他の所得がない可能性が高く、税率も低めで抑えられるなら税の長期繰り延べができるのみならず、低税率で引き出せるという1つで2つおいしい仕組みであります。

日本がこれを真似してできたのがiDeCoであります。仕組みは極めて似ています。

ではIDeCoの加入者はどれぐらいいるかと言えばわずか5.4%であります。カナダの退職貯蓄プランが22%程度、アメリカの確定拠出年金は約55%と比べ、日本はせっかく制度ができたのに今一つ盛り上がっていないというのが最大の相違点です。

年金絡みのプランは基本的に投資期間が超長期になり、かつ継続的に資金が投入されやすい仕組みです。お勤めの方が自社株を給与天引きで少しずつ買う「持株会」がありますが、それと似た発想で少しずつ資産は増え、その資産は株価上昇や配当金で増えやすくなります。また以前、株式資産は指数関数的に増えると申し上げました。例えば100円の株が10%上がると110円で、上げ幅だけ見れば10円です。ところがこの株価が300円に成長し、その時ある好材料が出て10%上がれば30円上昇となります。この時、絶対金額だけ比べると10円と30円の差があり、100円の株価で見れば見かけ上30%も上昇したことになります。いわゆるテンバガーと称する株価10倍になるようなケースはこの指数関数的な上昇で爆発的な資産増大がはかれるわけです。

では日本株は北米株と同様の軌跡を辿れるか、ここが私の今日の「脇を締めよ」というポイントです。北米株は何故成長し、株価は長い右肩上がりになりやすいのでしょうか?基本的には企業戦略において弱肉強食の理論があるからだと考えています。多くの企業は買収に次ぐ買収で大きくなっています。食われる側、つまり被買収企業も経営者のツッパリではなく、機関投資家向けの議決権行使助言会社が「この買収は妥当」「反対」という意見表明をすることで多くの機関投資家=大株主はその意向に沿う形になるので経営側が「あんな会社に買収されたくなーい!」というわがままはほぼ聞いてもらえない仕組みがあるとも言えます。

先日も私が株を所有している企業が買収されることになり、悩んでいたらプロキシーファイトで経営側の代理人から「あなたどうするの、経営側に賛同してね」と説得工作の電話がかかってきたのですが、その時、私が質問したのは「助言会社はなんて言っているの?」でした。それぐらい助言会社の判断はピュアで重要だということです。

北米ではその時に勢いがある企業が勝る仕組みがあり、中途半端な経営では勝てないどころか生き残り出来ないとも言えるのです。

一方、日本の経営はここまでアグレッシブでありません。それこそ業界には似たような会社がずらりと並びます。北米ではあまり考えられません。先日、日本でアイスクリームの談合がありましたが、カナダの国営CBC放送がよほど珍しかったのか、日本の「珍ニュース」として取り上げていました。いわゆる企業の横並び姿勢は株価には当然刺激が少なくなります。なぜなら一つのパイを皆できれいに分けるわけです。こんな発想は北米にはほぼないのであります。

株価が上がるかどうか、これはおのおの企業の体質にもよります。またその業種がイケているのか、と言うこともあります。昨今の日経平均の爆上げは私はほとんど無視しています。なぜならごく一握りの銘柄に資金が集中しているだけで過半数の株は「置いてけぼり」であり、先々崩れやすい状況にあるからです。日本の株価はこういう異常な動きをする特性があるゆえにあまり政府が株を買いましょう、投資をしましょう、という前のめりになるのはのちのち、「下がったじゃないか!」というクレームを受けやすくなるのでどうかな、と思うのです。

個人の投資を拡大させる前に企業体質を変えないと日本の株価が北米のように安定した成長にはならないと思います。北米では経営者も従業員も「おらが会社」「うちの会社」と思っちゃいません。「会社は俺のものじゃない、俺は会社から必要とされるプロなのさ」というドライさも時として必要なのでしょう。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年6月24日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。

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