ボクシングの元世界チャンピオンであり、映画やテレビでも大活躍されていたガッツ石松さんが亡くなりました。

ガッツ石松さんこと鈴木有二さん
私のような氷河期の世代には、ボクシングの元世界チャンピオンというよりも、テレビに登場していたボケたキャラのガッツさんの方がなじみがあるかもしれません。
しかし、ガッツさんのインタビューや出演番組を今見てみると、大変深みのあることをお話になっていることが多く、テレビでは天然ボケ的なキャラを演じておられたのではないかと思わざるを得ません。
特に、ガッツさんの猪木さんとの対談、ご自身の試合における心構えは、スポーツにおける勝負の本質を語っており、耳を傾けるべきです。「自らが負けると思っていたら勝負には勝てない」などの名言だらけです。そして、お笑い番組にも芝居にも大変真面目に取り組まれ、全力投球だったようです。
また、ガッツさんのお人柄や気遣いは、訪問された先での素人の人々に対する細かい心遣い、子どもに対する優しさ、ちょっとした冗談などからもうかがうことができます。生前、ガッツさんに会ったことがあるという大勢の人が、ネットにエピソードを投稿しているのです。
そのようなガッツさんから、我々は学ぶことがたくさんあります。
ガッツさんは、自らをネタにしてボケたふりをして笑いを取ることが非常に上手でした。
「自分を笑う」ということは、自らを客観的に見ることができなければなりません。自分を客観的に見るということは、それほど簡単なことではありません。強い自我と自信がなければ無理なのです。自分に自信がなければ、ついつい自分のことを実体より大きく語ってしまいがちです。現実に目をつぶって、実像よりも大きな自分を演出しようとします。
私の著書「世界のニュースを日本人は何も知らない」シリーズでも取り上げていますが、この「自分を笑う」という能力は、実は海外の先進国の人々と接触する際に非常に重要なことです。
つまり、特に欧州では、人々はこの人は「自分を笑うことができるかどうか」ということを割とシビアに見ているのです。それができるということは、自分の特徴や弱い部分を客観的に見て、他人の心をつかむために笑いを取ることができる、ということだからです。
自分の弱さを認め、他人にサービス心を発揮し、そしてその場の空気を和らげることができるというのは、これまさに気遣いがあるかどうかということです。それは大変高度な知的活動です。また、脳の高度な動きを司る「非認知力」の高さを示します。国際的に活躍できる人は、「自分を笑える人」です。サービス精神旺盛で、常に謙虚で、他人に気を使える人です。
ガッツさんは、ハリウッドの映画にも出演されていた数少ない国際派俳優でした。スティーブン・スピルバーグとリドリー・スコットの2名の巨匠の映画に出演したという、日本人俳優としては稀有な方です。ガッツさんの気遣いや感性の鋭さを、ハリウッドの巨匠たちは見抜いていたのでしょう。
真の国際派は、自分の経歴や持ち物、見た目を傲慢に自慢する人ではなく、常に自分を笑える人です。
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