なぜCRE戦略は失敗するのか:不動産判断と経営判断の分断

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(CREが変える経営財務 ④)

企業不動産をどう評価するか。企業不動産は誰のために存在するのか。

これまで、不動産価格の多義性と、企業不動産の目的、すなわち事業・財務・承継のどの面に貢献しているかという二つの問いを論じてきた。

では、なぜ多くの企業で、この検討が十分になされないのか。

理由は単純ではない。しかし核心は一つに収斂する。不動産判断と経営判断が、社内で分断されているのである。これが、CRE戦略が失敗する最大の要因ではないか。

第一に、不動産は専門部署の問題に矮小化されやすい。本社、工場、倉庫、店舗、社宅、賃貸不動産——いずれも事業活動や財務に重い影響を与える経営資源である。

しかし実務では、固定資産台帳の管理、修繕・賃貸借契約への対応、固定資産税の支払い、遊休地の維持管理といった「管理部門の仕事」として処理されることが多い。これらは必要な業務だが、それだけでは不動産は管理対象の域を出ない。経営会議の議題に上がるのは新規投資や事業計画であり、既存不動産の評価は後回しにされやすい。経営戦略や財務戦略と連動させて最適化するという発想には、構造上至りにくい企業が多いのが現実だ。

第二に、不動産判断が「売るか、貸すか、建てるか」という処分・活用方法の選択に矮小化される。遊休地の扱いを問うこと自体は必要である。しかし、最初に立てるべき問いはそれではない。なぜその不動産を保有しているのか。事業戦略と整合しているのか。財務上どのような意味を持つのか。承継やM&Aにどう影響するのか。これらを検討せずに選択肢だけを比較しても、経営判断とは呼べない。不動産活用は「何を建てるか」からではなく、「企業価値にどう貢献すべきか」から始めるべきである。

第三に、過去の成功体験が的確な判断を鈍らせる。土地を持つ会社は強い、本社ビルを持つ会社は安定している——こうした感覚は今も完全には消えていない。本業に不可欠な拠点や、安定収益を生む賃貸不動産が企業価値を支える場面は確かに存在する。しかし人口減少、地価の二極化、金利変動、建築費の上昇、事業モデルの変化により、過去に価値を持っていた不動産が現在も同じ価値を持つとは限らない。過去の保有判断を無条件に延長することは、将来の経営リスクになり得る。

第四に、意思決定者そのものが分断されている。企業不動産の現場を知るのは管理部門、財務への影響を知るのは経理・財務部門、事業戦略を考えるのは経営陣、事業承継やM&Aを考えるのはオーナー経営者や外部専門家である。

これらの視点が一つのテーブルに乗ることは少ない。各部門はそれぞれの責任範囲で最適化しているにすぎず、誰も悪意を持って分断を放置しているわけではない。だからこそ、この分断は発見されにくく、長期間にわたって温存される。セクショナリズムの弊害である。

結果として、不動産は現場では管理されているが経営戦略には組み込まれず、財務上は資産として計上されているが企業価値への貢献は検証されず、事業承継の段になって初めて自社株評価や税負担の問題として顕在化する。

CRE戦略を機能させるために必要なのは、難解な理論ではない。自社の不動産に対して、横断的な問いを立てることである。

現在の事業に必要か。将来の事業戦略と整合しているか。財務上どのような役割を果たしているか。収益を生んでいるか、コストを生んでいるか。承継やM&Aの際に資産となるか、負担となるか。これらに即答できない企業不動産は、経営資本としての位置付けが曖昧になっている可能性が高い。不動産の問題は、不動産だけを見ていては解けない。経営、財務、事業、承継の視点を重ねたとき、初めて判断の方向性が見えてくる。

CRE戦略が失敗するのは、不動産の専門知識が不足しているからではない。より本質的な問題は、不動産判断が経営判断から切り離されていることにある。管理部門の問題として扱われ、処分・活用方法の話に矮小化され、過去の成功体験に引きずられ、事業・財務・承継の視点が分断される。その結果、不動産は企業価値を高める経営資源ではなく、ただ保有される固定資産になってしまう。

CRE戦略とは、不動産を経営に戻すことである。保有するのか、売却するのか、活用するのか、賃借に切り替えるのか——その判断は、不動産単体ではなく、企業価値、事業戦略、財務戦略、承継戦略の重なりの中で行われるべきである。企業不動産は土地や建物ではない。それは、経営の意思決定そのものである。

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