皇室典範の改正で会期延長する自維の「密約」に首相もびっくり

国会が異様な展開になってきた。自民党と日本維新の会の与党幹部間で、皇室典範改正案を最優先で審議し、維新提出の2法案は会期延長して成立させる「覚書」がかわされていたというのだ。

自民と維新の連立合意(2025年10月)

維新2法案より皇室典範を優先する自民

きっかけは、維新が重視する2法案の扱いだった。維新は、衆院定数削減と副首都構想を連立合意の柱としており、今国会での成立に強くこだわっている。吉村洋文代表も、皇室典範改正、副首都、定数削減について「今国会で実現させる」と明言し、総理とも確認したと強調している。

ところが、ここに皇室典範改正案が割り込んできた。麻生副総裁が執念を燃やし、その腹心の森英介衆院議長は、皇室典範改正案を「静謐な環境」で審議するため、最優先で取り組むよう与野党に要請した。これを受け、自民党側は定数削減法案と副首都関連法案の審議をいったん中断し、皇室典範改正案を優先する方向に傾いた。

だが維新からすれば、それでは看板政策が後回しになるだけである。そこで出てきたのが、会期延長を含めて2法案の成立を担保する覚書だった。皇室典範を先に通す代わりに、維新の要求も今国会で処理する。表向きは国会正常化のための調整だが、実態は皇室典範改正を最優先にしながら、維新にも成果を保証する密約である。

高市首相も知らないうちに会期延長の密約

この動きには高市首相も驚いたようだ。森議長の要請を受けて与党が審議中断に動いたことについて、首相側近は「寝耳に水だった」と不快感を示したと報じられている。高市首相は維新との連立合意の履行を重視しており、議長主導で国会運営が動いたことは、官邸にとって想定外だったのだろう。

一方で、自民党内の説明はちぐはぐである。小林政調会長は、覚書の存在について「認識していない」と述べた。自民関係者は「皇室典範改正を優先すると2法案が後回しになるため、維新が成立の担保を求めた」というが、維新は「自民が密約をリークして壊した」と反発している。

野党は当然反発している。野党側は定数削減法案と副首都関連法案について、審議の中断ではなく成立断念を求めている。TBSの報道でも、野党5党が結束して2法案の成立断念を要求している一方、維新側からは「今の国会で何もできないなら、維新の存在意義はない。連立離脱するのが筋だ」との声まで出ているという。

皇室典範に執着して暴走する麻生副総裁

この混乱の原因は、麻生副総裁が皇室典範を最優先にし、国会対策委員長を無視して森議長に野党との斡旋をやらせたことにある。皇室典範改正という国家の根幹に関わる法案を維新の定数削減や副首都構想と抱き合わせにして、会期延長の材料にしてしまった。

首相にとっても難題だ。維新との連立合意を守らなければ政権基盤が揺らぐ。しかし、皇室典範改正を急げば、野党の反発はさらに強まる。さらに密約の存在が表面化したことで、国会運営の透明性にも疑問符がついた。

この背景には、維新との連立を重視する首相と、維新の法案に関心のない自民幹部の温度差がある。おまけに国会対策の苦手な首相が、答弁拒否などで混乱を拡大している。このままでは法案が何も成立しないまま、会期末を迎えるかもしれない。

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コメント

  1. 早川蒼真 より:

    記事の指摘は鋭い

    一つは「密約」という言葉の使い方だ。
    与党内の政策調整はもともと非公開の場で進められるのが通例であり、水面下の調整そのものは珍しいことではない。
    今回問題なのは調整が非公開だったことではなく、
    ①本来中立であるべき議長が斡旋役として担ぎ出されたこと、
    ②首相にすら共有されていなかったこと、この2点に尽きる。「密約」「暴走」という刺激的な言葉に引っ張られて、通常の党内調整まで一緒くたに批判すると、的が広がりすぎてしまう。
    しかも、当事者間ですら「認識していない」「リークで壊された」と事実認識が食い違っている段階で、「密約が存在した」と断定的に描くのは、やや踏み込みすぎではないだろうか。

    もう一つは、記事の結びにある「このままでは法案が何も成立しないまま、会期末を迎えるかもしれない」という一文である。

    維新にとって定数削減と副首都構想は連立に残る意義そのものであり、党内から「今の国会で何もできないなら連立離脱するのが筋だ」との声まで出ている以上、吉村代表は何としても成果を持ち帰る必要に迫られている。
    だが、この強硬姿勢は「約束通り2法案を通せ」と自民に迫る交渉上のポジショニングであって、本気で政権を去る覚悟があるかは疑わしい。
    自民側も、皇室典範を通したい麻生氏の思惑と、連立を壊したくない高市首相の思惑がある以上、双方とも「何も成立しない」という最悪の結末だけは避けたいはずだ。
    日本の国会は会期末間際に土壇場の合意が成立することも珍しくなく、いま混乱している状況だけを切り取って全面停滞を予測するのは、書き手の願望や煽りが先に立っている印象を受ける。
    野党5党が成立断念を求めているのも事実だが、それは交渉のポジションであって、最終的な着地点とは限らない。

    こうした「このままでは○○になるかもしれない」という締め方は、外れたときに「あの人はまた当たらないことを言っている」と受け取られるリスクを常に抱えている。
    「あの人はいつも外れのことを言っている。でたらめばかり言っている」
    混乱の実況を伝えること自体には意味があるが、断定的な予測を重ねて外し続ければ、読み手の信頼はなくなっていく。

    連立の枠組みを維持したい首相と、看板政策の成果を必要とする維新、双方に「決裂させられない」動機がある以上、最終的には手打ちになる公算が大きい
    ここが本当に決裂の引き金になるのか、それとも交渉のブラフに過ぎないのか——まさにこの一点が、記事の予測の当否を分ける分水嶺になると思う。

    会期末まで残された時間は少ないが、皇室典範改正案と維新の2法案がどう決着するのか、あるいは本当に何も決まらないまま閉会するのか、注視していきたい。

    外したら「あの人いつも適当なことばかり言ってるね」ってことになるだけだ。