労働者が資本家になってAIの利益を得る「ストックオプション」

AI革命は、人類史上最大規模ともいわれる設備投資競争を引き起こしている。巨大データセンター、半導体工場、ロボット、自動化設備などへの投資額は膨れ上がり、人的資本が物的資本に代替される時代に入りつつある。

その結果、企業の利益は賃金よりも株価や企業価値として現れやすくなっている。この変化に対応するには、「労働者は給与だけで報われる」という従来の発想を改める必要がある。その有力な手段がストックオプションである。

AI時代は物的資本が利益を生み出す

従来の製造業では、企業価値の源泉は熟練工や技術者の人的資本だったが、AI時代では状況が異なる。最先端のAIを開発するためには、優秀な人材も必要だが、それ以上に数兆円規模のGPUやデータセンターへの投資が不可欠になった。半導体製造でも同様で、最新工場は1つ建設するだけで数兆円を要する。

つまり企業価値を決める要素は、人的資本だけではなく、莫大な物的資本へと移っているのである。だから企業利益も、賃金より株主リターンとして現れる割合が大きくなる。AI革命で急成長した企業の株価が爆発的に上昇しているのは、その象徴だ。

サラリーマンも資本家になれる

だからといって、「資本家だけが豊かになり、労働者は取り残される」と考える必要はない。その橋渡しをする制度がストックオプションである。

スペースXでは、給与の代わりや報酬の一部として株式を受け取っていた元従業員や技術者が、上場によってミリオネアになったと報じられている。

韓国でも半導体ブームの恩恵は株主だけのものではない。サムスン電子やSKハイニックスでは、巨額の利益を従業員にもボーナスや株式で還元し、AIブームの成果を労使で共有している。

日本でも象徴的なのがキオクシアである。ベインキャピタルは買収後、役員だけではなく部長・課長クラスを中心とする約600人の従業員にストックオプションを付与した。結果的には株価の急騰によって、1人当たり税引き前で10億円を超える含み益を持つケースまで生まれた。ファンドによる企業再編が、サラリーマンを資本家に変えたのだ。

日本は税制改革でもっと普及できる

フランスの経済学者トマ・ピケティは、「資本収益率(r)が経済成長率(g)を上回ると富は資本家へ集中する」と論じた。この分析自体は説得力があるが、これを累進課税で解決する政策には現実性がない。

むしろ労働者自身が資本家になれば、生産性向上のインセンティブも維持できる。企業価値が上がれば、自分の資産も増える。社員は経営者や投資家と利益を共有する立場になり、企業の成長がそのまま自らの豊かさにつながる。ストックオプションには、単なる報酬制度を超えた意味があるのだ。

海外では、ストックオプションへの課税が軽い国ほどベンチャーキャピタル投資が活発であることが知られている。日本も近年、税制適格ストックオプションの行使期間延長や上限額の引き上げなど制度改善を進めてきたが、アメリカと比べるとまだ十分とはいえない。

機械にできる仕事は機械にやらせて人間は自由になる

AIで「ホワイトカラーが失業する」といったネガティブな面ばかり取り上げられるが、これは今まで人間のやっていた仕事を機械にやらせ、人間が自由になることだ。問題はその利益を人間が取れないことなので、人間が株主になって機械の利益を取ればいいのだ。

マルクスは「自由時間の拡大」を革命の目的とし、ケインズは「100年後の人類は週休3日になっているだろう」と予想した。ストックオプションは資本家と労働者の対立を解決し、すべての人にAIの利益を分配する革命である。

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