黒坂岳央です。
「自分に自信を持とう」
「あなたはそのままで価値がある」
こういう風潮の世の中ということもあってか、最近はどちらかといえば「自分を過小評価して自信がない人」よりも「実力以上に自分を過大評価する人」が増えた印象がある。
実はミスが多いといった能力が低いこと自体は、それほど深刻な問題ではない。適切に学習すれば伸びるし、教われば改善できる。自分自身も昔は本当に仕事ができなかったが、上司に恵まれたことで成長できたと思っている。
だが自己評価があまりに高い人は難しい。彼らはそもそも、自分に成長が必要だと思っていないし、間違いを疑わない。あらゆる面で「過小評価する人」よりも圧倒的に厄介なのだ。

Feodora Chiosea/iStock
自己評価が高い人は成長しない
人の成長は「現実→認識の修正→行動の修正」というループで起こる。
自分に自信がなく、過小評価するタイプはこのループが機能する。失敗しても「自分に何が足りないか」を考え、他人の指摘を受け入れる余地がある。そもそも、自信がないから「自分には学びが必要。修正が欲しい」と考える。彼らは苦しむ。だが、伸びる。
一方、自分を過大評価する人はこのループの入口で止まる。上司に注意されれば「上司が無能」、営業が振るわなければ「客のレベルが低い」、人間関係が壊れれば「周りがおかしい」。失敗の原因を常に外部に求めるため、認識の修正が起きない。
認識が変わらなければ行動も変わらず、結果として実力は本人が思っているよりずっと低い水準で固定される。
年を取ると「期待値」が上がる
ここに年齢という変数が加わると、問題はさらに深刻化する。社会や組織が個人に求める期待値は、年齢とともに上がっていく。
25歳で能力60なら「若いから伸びしろがある」と評価されるが、45歳で能力60なら「この歳でこの程度?」という評価に転じる。能力そのものは変わらなくても、期待値との差が開くことで相対評価は年々下がっていく。
そして自己評価が高すぎる人間ほど、このギャップに気づけない。「自分は間違っていない」という自己認識で、市場価値だけが静かに下落していく。
筆者が会社で働いていた頃、40代半ばの契約社員がいた。「いつか音楽で一発当てて、若い嫁さんをもらって子供を育てたい」と真顔で語っていたのを覚えている。
このセリフが10代のものなら誰も気にしない。むしろ将来性として好意的に受け取られる。だが同じ発言が40代から出た瞬間、周囲の受け取り方は一変する。
発言の中身は変わっていないのに、発言者の年齢が違うと「将来性」が「現実逃避」に変換されてしまうのだ。
自分を過大評価する人と関わってはいけない
筆者は人間関係の交流や出会いを大事にしたいと思っている。自分は人との出会いで大きく成長できたし、人生を変えることができた。根本的な考えとして「人を大事にしたい」と思っている。
しかし、人を大事にしたいからこそ同時に「絶対に関わらない方が良い人」も決めることは大事だと思っている。自分の中で明確な尺度があれば、関わるべきでない人を遠ざけ、限られたリソースを大事な人に使いたいからだ。
そうした観点で言えば、自分を過大評価しすぎる人は関わるべきではない、地雷だと思っている。理由を取り上げる。
1つ目、彼らは他責思考である。過大評価とセットになっているのはほぼ例外なく他責思考だ。
うまくいかない理由を常に外部に求める人間と組めば、失敗の責任は最終的にこちらに転嫁される。プロジェクトが失敗すれば「あなたの指示が悪かった」、関係が壊れれば「あなたの態度が悪かった」となる。こちらに責任を押し付けてくる人と一緒にいていい気持ちになることはないだろう。
2つ目、彼らはテイカーだ。自分の実力を過大に見積もる人間は、自分が提供している価値も同時に過大評価する。結果として、受け取る対価に対して常に不満を持ち、周囲からの搾取的な要求が続く。
筆者は昔、職場で仲良くなった人がいた。彼女は最初、かなり好印象だったが、付き合いが進むにつれて会う度にグチグチ周囲の悪口や愚痴を言うようになった。
昔から悪口、愚痴や不満が苦手で、我慢の限界に達した時に「相手からお世話になってることもあるのでは」とやんわりと指摘した。すると、「いつも貴重な時間を使ってあなたに話をしてあげているのに」と1時間以上猛烈に怒りはじめた。
この人物にとって関係は「対等な交換」ではなく「自分が一方的に与えている」という前提で構築されており、その前提を疑われることが最大の脅威なのだ。
◇
能力不足は学習で埋められる。しかし過大評価は学習そのものを止めてしまう。自己肯定感の高さは問題ではないが、それが自己評価の歪みを正当化する道具に使われた瞬間、その人間はフィードバックを受け付けなくなる。
人間は年齢相応の振る舞いを無言で期待される。過大評価する人は若い頃からずっと同じ場所で足踏みしたままなので、周囲は無言で離れる。そうやって年を取り続けると気づかない内に市場価値は低下し続ける。
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