夫婦別姓を「諦める」ことが、リベラルとフェミニズムを復活させる

2月の総選挙での自民党の圧勝は「野党だけ多党化」が原因なのに、それを加速する動きが止まらない。大敗した中道改革連合からは、旧立憲民主党の “有名議員” の流出ばかりが騒がれる。

中道への合流直前まで代表代行だった吉田晴美氏の離党(ヘッダーはTBS)では、さすがに「それは違う」との声が出た。そもそも中道ではない “穏健リベラル” とは何を指すのか、たぶん本人にも説明できるとは思えない。

吉田晴美氏の離党は「常識では考えられない」 中道・階猛幹事長が強く非難、言葉が特にキツくなった理由:東京新聞デジタル
中道改革連合の階猛(しな・たけし)幹事長は6月16日の記者会見で、党所属の吉田晴美前衆院議員が離党の意向を表明したことについて、「私の...

とはいえ公平に見て、ぐだぐだと正式な合流を決めない中立公の3党にも責任はある。で、やっとその本当の理由が、報じられ始めている。

ずばり言うと、ネックは参院における非拘束名簿式の比例代表制だ。個人名でも投票可能で、上から順に当選する制度なので、組織力が弱い団体は合流すると議席を失う可能性があるのだ。

中立公に「新・新党」浮上 有力労組が前向き:時事ドットコム
中道改革連合と立憲民主、公明両党の合流を巡り、新たに新党を結成する「新・新党」構想が浮上していることが、31日分かった。複数の関係者が明らかにした。中道は1月に結成したばかりだが、中公は積極的で、立民の一部幹部や旧総評系の有力労組も前向きだ...

2年後の参院選に関し、立民が比例代表で擁立する労働組合の組織内候補を、公明が支援する案も検討。公明系候補の削減も視野に入れる。

時事通信、2026.6.1
(強調は引用者)

2025年の参院選だと、公明の比例で当選した4名は、いずれも30万票台。一方で立憲の比例では7名が通ったが、30万票に届いたのは首位の蓮舫氏のみで、各労組の候補は9~15万票に留まる。

中道が人気なら「党名票」を分けあって仲よく通れるが、そうでないのに合流すると、公明系だけが上位で労組系が全滅するリスクがある。それじゃもうナショナルセンターじゃないじゃん! と叫びたいが、現実は厳しい。

第1回参議院議員通常選挙 - Wikipedia

上のとおり1947年、初の参院選の「全国区」(個人名でしか投票できない)では、元全国水平社の松本治一郎が4位、のち民社党委員長となる佐々木良作が8位だった。宗教系では浄土真宗(7位)、天理教(11・12位)、一燈園(17位)など。

要するに宗教団体と比べても、日本に欧米型の(企業別ではない)労働組合は、政治を動かす “つながり” の形として根付かなかった。戦後80年を経て、寂しくもそれが野党の現在地なのだ。

トランプの戦争を支持しない日本人は、どんな野党を育てるべきか。|與那覇潤の論説Bistro
米国とイスラエルのイラン攻撃に対する、日本の世論がはっきりしてきた。幸いなことに反対派が圧倒的な多数だが、興味深いのは2003年にイラク戦争が始まった際との比較である。 イラン攻撃「不支持」82% 首相姿勢「評価せず」51% 朝日世論:朝日...

とはいえ、そうした選挙対策のテクニカルな話は、見えない場所で内々に協議してほしいものだ。ニュースになったと思ったら、毎回「話しあいましたが、結論は出ませんでした」では、応援する人ほどげんなりしてゆく。

むしろ表に出すべきなのは、「これをやりたいから」政党の枠を越えて合流する、賛成ならどの党からでも来てほしい、というビジョンだろう。

何度も紹介した『公明』7月号のインタビューでは、たとえばこんなのはどうですか? として、中道改革連合にぼくなりのアドバイスをしている。

野党は「日本のイスラエル化」に結束して反対せよ|與那覇潤の論説Bistro
戦後という時代も80年を越え、高市政権が "脱・戦後" へと爆走しているのを、誰もが知っている。だが問題は、走った果てにどこまで行くかだ。 あまり意識されないが、日本の戦後と180度逆の軌跡を歩んできた国は、イスラエルである。ぼく自身、最初...

同性婚や夫婦別姓婚を望む人に、名称よりも実質の面で道を開く「パートナーシップ制度」を打ち出してはどうでしょうか。「選択的夫婦別姓」に反対する保守層も、LGBTQなど性の多様性を認めないわけではない

それなら「戸籍上の婚姻」はあくまで男女かつ同姓に限りつつ、税の控除などで婚姻に準じた措置が受けられる、「男・男」「女・女」「男女で別姓」のいずれも利用可能なパートナー契約の制度を別途、新たに整備してはどうでしょう。

他の西側諸国でも、法的な同性婚ができない時代に、そうしてサポートした例は多くあります。この線で与野党を超えて意見の集約を見せれば、「中道やるじゃん」「これが “真ん中” の政治だ」との評価が高まるのは、間違いありません。

『公明』2026年7月号、28頁
(段落を変更)

最後の段落で有名な例はフランスのPACSだが、同性愛でも異性愛でもどちらも使える点が大事だ。それ抜きだと、制度を利用した人は「LGBTQだと知られる」ことになり、実質的なカミングアウトの強制になってしまう。

これが、地方自治体が “意識高い” アピールで制度を作っても、いままで普及しない理由だった。延々と引き延ばされる「夫婦別姓」の問題も、Wで解決できるなら、奇貨と呼ぶべきだろう。

LGBT活動家の主張を鵜呑みにする報道は公共的か
同性婚訴訟札幌地裁判決についてメディアは軒並み「同性婚を認めないのは違憲」との見出しで伝えたが、これは極めて誤報に近い。判決文にはそんなことは一言も書かれていないからだ。この裁判での原告側の主張は、「現行憲法においても同性婚は認められている...

先日、皇位継承の問題で動画に出た際のコメント欄でも痛感したが、理屈を超えてなにがなんでも明治時代に決まったスタイルを護持したい人がいて、それは基本、宗教的な信仰と同じだから、”説得” で変えるのは難しい。

いわゆる岩盤保守層と呼ばれる人たちだが、少数派といえども3割弱は常に占め、かつ政治的にアクティブである(旧立憲の支持層と異なり、選挙で逃げ出さない)。これはもう、一種の民族問題のようなものだろう。

第三者的には不合理な慣習・奇っ怪な信念としか映らないものでも、相手に「押しつけ」さえしないなら、互いに住み分けてゆくのが多民族共存のコツだ。それができずに本気で殴りあうと、最後はウクライナになってしまう。

ウクライナ政治の悲劇: 民主化への道はどう「戦争に」開かれたか|與那覇潤の論説Bistro
あまり知られていないが、ヘッダーの左の本の著者は私の指導教員である。専門が明治維新史なので、実は私も博士論文は「実証的」な明治史だった(笑)。かつ琉球処分という「領土の併合」を国際関係史の立場で研究したので、ウクライナでいま起きている問題に...

穏健ならぬ “過激リベラル” はこの間、そんな妥協は敗北だうおおおお! と叫び続けたが、彼らは選挙で役に立たない。見境なく殺傷兵器をSNSのケンカに持ち込み、相手に奪われ殴り返される。まさに無能な味方である。

そんな面々としっかり縁を切ることが、すっかり “蔑称” になってしまったリベラルやフェミニズムを甦らせる。「うおおおおじゃなくて、意見が違う人とも “共に生きる” 気あるんだ」。このイメチェンだけで、効果は絶大だ。

リンチではしゃぎ、煽るのは「後ろ暗い人」である: 河野真太郎氏の場合|與那覇潤の論説Bistro
執筆の邪魔もいい加減にしてほしいと思うのだが、いちど "やらかし癖" がついた人たちはどこまでも止まらない。そう、日本一の炎上言論人の集まりである「オープンレターズ」のことだ。 同レターは日本のキャンセルカルチャー、かつネットリンチの代名詞...

中道の執行部は幸い、そうした姿勢ではぐだぐだせず、一貫しているように見える。このままブレずに “真ん中” を進んで、両極の人たちがオワコンにしてしまったものを、取り戻してほしい。

参考記事:

中道改革連合を大敗させたのは「公約の左傾化」だった|與那覇潤の論説Bistro
大病をしてしまいお知らせが遅れましたが、今月刊の『潮』6月号にも連載「平成の回廊 創価学会と日本社会」が掲載。いつもどおり、同誌のWebサービスでも無料登録で全文が読めます。 【先行配信】「敗戦後」の責任論――「だまされた」ではすまされない...
なぜ「大学のフェミニスト」はおかしい人が多いのか|與那覇潤の論説Bistro
今月刊行の『表現者クライテリオン』2025年1月号にも、連載「在野の「知」を歩く」が掲載。綿野恵太さん・勅使川原麻衣さんに続く3人目のゲストに、美術家でフェミニストの柴田英里さんをお迎えし、「「議論しないフェミニズム」はどこへ向かうのか?」...

編集部より:この記事は與那覇潤氏のnote 2026年7月日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は與那覇潤氏のnoteをご覧ください

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