パレスチナ自治区のイスラム過激派テロ組織「ハマス」は6日、ガザ地区における同組織の行政機関を解散すると発表した。それに対し、イスラエルのギデオン・サール外相はXに投稿し、「ハマスの宣言はトリック(策略)だ」と指摘、「ハマスはまず武装を解除すべきだ。ハマスが武器を保持している限り、いかなる文民政府であってもハマスの意向に従うだろう」と述べ、ハマスに非武装化を改めて要求した。

テヘランにて、殉教したイスラム革命指導者の葬列に参列するアッバス・アラグチ外相(中央)。2026年7月6日、IRNA通信
イスラエル側はテロ組織のハマスを信頼していない。だから、ハマスの非武装化が実現しない限り、ガザ区からイスラエル軍の段階的撤退は考えられないというわけだ。
サール外相は「イスラエルはガザ地区の和平に向けた、いわゆる‘トランプ・プラン‘の実施を強く求めている。その核心となる原則は、ハマスおよびその他すべてのテロ組織の武装解除、ならびにガザ地区の完全な非軍事化だ」と明確に述べている。
ハマスとその同盟勢力は、2023年10月7日にイスラエルを攻撃し、ガザ地区での戦争を引き起こした。一連の殺戮行為の中で、イスラム武装勢力は1,221人を殺害し、さらに251人を人質としてガザ地区へ連れ去った。これを受け、イスラエルはハマスへの報復攻撃を開始した。ハマスの発表によれば、この戦争で7万人以上のパレスチナ人が死亡した。
ところで、ハマスの非武装化というテーマは、ハマスに武器や軍事資金を提供してきたイランの問題だ。イランがハマスに一切の武器、資金を供与しなければ、ハマスの非武装化は現実的になる。逆に、イランがハマスを軍事支援する限り、ハマスの非武装化は絵に描いた餅に過ぎない。
それゆえに、米国はイランとの戦闘終結交渉ではイラン側に核開発の停止と共に、ハマス、レバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ派など親イラン派の代理組織(プロキシ)への軍事支援の停止を交渉テーマとしてきた。実際、米国が提示した「15項目の停戦」(2段階の和平案)には、「武装組織への支援停止: ヒズボラやフーシ派など、親イラン武装組織に対する軍事・財政的支援の全面停止」が含まれていた。
しかし、イラン側がホルムズ海峡の封鎖というカードを駆使し、世界経済を人質にする非対称戦に乗り出したため、トランプ政権はホルムズ海峡の封鎖による世界的な経済ダメージ(原油高)を早期に打開するため、イランとの交渉では「現状復帰(戦争の終結とホルムズ海峡の再開)」と「核開発問題」に焦点を絞り、ハマスやヒズボラへの支援停止問題を議題から外してしまったのだ。
イスラエル側が米イランの戦闘終結交渉の合意に不満があるのは、核問題は将来の交渉に委ね、イランの代理勢力への支援停止問題は議題から外すことを飲んだトランプ米政権への不信感があるからだ。
ちなみに、レバノンのジョセフ・アウン大統領は6月5日、CNNとのインタビューの中で、イランが米国およびイスラエルとの紛争において、レバノンを交渉材料として利用していると非難した。同大統領は、「彼らは米国との交渉において、レバノンを駆け引きの道具として使っている。これは容認できない。レバノンへの内政干渉を止めるべきだ。レバノンの国益はイランの国益とは一致しない」と断言した。さらに、イラン革命防衛隊(IRGC)に対しは、「ここは君たちの国ではなく、我々の国だ」と宣言。そしてイランの支援を受けるヒズボラ民兵組織の指導者ナイム・カセム師を、「レバノン国民を代表する人物ではない」と述べている。中東地域での「イランの関与」を指摘したアウン大統領の警告は全くの正論だ。
いずれにしても、トランプ政権にとって、イランとの戦闘終結交渉では要求を詰め込みすぎてディ―ルが決裂するよりも、まずは「停戦」という最低限の合意を形成することが、これ以上の犠牲を防ぐために必要不可欠だ、という現実主義的な判断があったのだろう。
同時に、ガザ統治は別の枠組み(平和評議会)に委ね、国際社会やアラブ諸国の資金を投入してガザの非軍事化を進める方針をとってきている。そのため、「イランとの交渉理にハマス問題を扱う必要はない」という判断がトランプ政権内で主導権を握ったのだろう。
トランプ政権の対イラン交渉を批判的にいえば、トランプ米政権は「世界経済の安定と即時停戦」という短期的な果実を得るために、「中東の根本的なテロ脅威の排除」という長期的な安全保障を先送りした。その結果、ハマスやヒズボラの脅威が温存されることにもなる。
イスラエル政府は、自国の安全保障に直結するハマスやヒズボラの無力化が含まれていない米イラン合意に対して「我々を拘束するものではない」と受け取っているのは当然だろう。
パレスチナ人=ハマスではない。同じように、ヒズボラ=レバノンではない。ハマスの非武装化で得をするのはパレスチナ人だ。同じようにヒズボラの非武装化で利益を得るのはレバノン国民だ。
多くのパレスチナ人はガザ紛争でハマスの正体を知ったのではないか。イスラエル軍の攻撃を避けるために、ハマスは平気でパレスチナ人の子供たちを自身の盾に利用してきた。パレスチナ人を犠牲にしてもイスラエルを破壊したいイラン聖職者政権の指令のもとでテロを繰り返してきたのだ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年7月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。







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