トランプ米大統領は10日、イランとの協議を継続する一方、米国とイランの間の停戦はすでに終了したとの認識を示した。軍事的な圧力を強めながら、外交交渉の窓口だけは閉ざさない「強硬と融和」の両面戦略が鮮明になった。

イラン最高指導者モジタバ・ハメネイ師(Wikipedia)とトランプ大統領(ホワイトハウス)
「対話には応じるが停戦は終わった」
トランプ氏は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で、「イラン・イスラム共和国が『対話』の継続を要請し、我々はこれに同意した」と表明した。
その一方で、「米国は停戦が終了したことを、極めて明確な言葉でイラン側に伝えた」と強調した。米国は交渉には応じるものの、先月の暫定合意によって成立した軍事行動の停止には、もはや拘束されないという立場だ。
米国とイランは先月、約4カ月に及んだ戦闘を終結させるための暫定的な覚書を結んだ。しかし今週、イラン側による商船や米軍関連施設への攻撃と、米軍によるイラン領内への空爆が相次ぎ、停戦は事実上崩壊した。
ホルムズ海峡をめぐる対立
交渉の最大の焦点は、世界の原油・天然ガス輸送の要衝であるホルムズ海峡だ。米国はイランに対し、海峡を国際船舶に開放し、通航する船舶を攻撃しないと公に表明するよう要求している。
これに対し、イラン側は海峡の管理は「イランの専管事項」であると主張している。米国は、イランが船舶攻撃を停止しなければ、核問題を含む包括的な合意には進めないとしており、交渉が決裂した場合の軍事的選択肢も排除していない。
トランプ氏の発言は、停戦という安全網を取り外し、軍事行動の自由を確保したままイランを交渉に引き戻す「強制外交」といえる。対話継続は融和姿勢というより、イランに譲歩を迫るための最後通告に近い。
モジタバ師は「必ず復讐する」
一方、イランの最高指導者モジタバ・ハメネイ師は11日、米国とイスラエルによる父親で前最高指導者のアリ・ハメネイ師殺害について、報復を宣言した。
国営テレビで読み上げられた声明では、復讐は「国民の要求」であり、「必ず実行されなければならない」と主張。「殉教した指導者と、二つの戦争におけるすべての殉教者の血を、犯罪者である殺人者たちに償わせる」と訴えた。
モジタバ師は3月8日に最高指導者に就任したが、2月28日の米イスラエルによる空爆で負傷したとされ、就任後も公の場に姿を見せていない。今回の声明は、革命防衛隊や国内強硬派に配慮し、父親の路線を継承する姿勢を示す意味合いが強い。
対話と報復が同時進行
米国が「停戦終了」を宣言しながら交渉を続け、イランも協議を求めながら最高指導者が報復を誓う。双方とも全面戦争を避ける余地を残しつつ、国内外に弱腰と受け取られないよう強硬姿勢を競っている。
しかし、停戦という最低限の歯止めが失われた状態では、現場の攻撃や誤算が再び大規模な軍事衝突につながる危険性が高い。交渉の窓口は残ったが、米国とイランの関係は「戦争を止めるための対話」から、「戦争を続けながら行う対話」へと移行しつつある。







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