消費税は減税せず引き上げ、社会保険料と年金負担を下げるべき --- 平尾 正憲

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食料品の消費税を、2年間に限って1%へ引き下げる案が議論されています。

物価高の中で、食料品の消費税を下げてほしいという声は理解できます。消費税はレシートに表示され、毎日の買い物で負担を実感しやすい税です。

しかし、私は消費税の引き下げには明確に反対です。

むしろ、消費税は最低でも20%以上に引き上げ、その代わりに社会保険料、年金保険料、法人税を下げるべきです。

本当に重い負担は、消費税ではなく、社会保険料と年金だからです。

毎月の消費税負担は、生活水準にもよりますが、食費や日用品を中心に考えれば数千円から1万円程度です。一方、社会保険料や厚生年金は、本人負担だけでなく企業負担分もあります。労使双方の負担分を含めれば、合計で毎月10万円近い場合もあります。

企業負担分も、企業が善意で払っているお金ではありません。本来なら賃金や設備投資、人的投資に回せたはずのお金です。

人を雇うたびに負担が増えるため、企業は雇用や賃上げに慎重になります。雇う人数を抑えれば、一人ひとりの労働負担も重くなります。

社会保険料は、手取りを減らすだけでなく、給与が上がりにくい構造そのものを作っています。

消費税は逆進的だと言われます。低所得者ほど所得に占める消費の割合が高いため、その点は否定しません。

しかし、社会保険料と年金保険料の逆進性は、それ以上に深刻です。働く人から広く重く取り、企業が人を雇うことにも負担をかけるからです。働くほど負担が重くなる構造は、低所得者を低所得者のまま固定する要因にもなります。

さらに、消費税を下げても、商品価格がその分だけ下がるとは限りません。

財源が曖昧なまま減税すれば、財政悪化への懸念から円安が進む可能性があります。円安になれば、輸入品、燃料、肥料、飼料、原材料の価格が上がり、結局は家計に跳ね返ります。

分かりやすい例を出します。

1ドル100円の時代に、コンビニのアイスクリームが110円だったとします。1ドル160円になり、輸入原材料や物流コストが上がれば、同じアイスクリームが176円になります。実際には、品質低下や量の削減といったステルス値上げも起こります。

税抜き100円のアイスクリームに消費税20%がかかり、120円で買える社会の方が、円安と供給力低下で176円になった商品を、消費税減税で少し安く見せる社会より、家計負担は低いのです。

「給与が上がらなくてもいいのか」という意見もあります。

しかし、物価は上がらず、給与だけ上がった方がいいに決まっています。物価上昇が給与上昇の必須条件だという考え方は間違いです。

持続的な実質賃金の上昇には、生産性の向上か、税・社会保険料負担の低下が必要です。負担率が同じままでは、名目賃金が上がっても引かれる金額も増え、手取りは思うように増えません。

また、物価高に追いつく賃上げも簡単ではありません。

1,000円で仕入れて1,200円で売れば、利益は200円です。物価が上がり、1,100円で仕入れて1,300円で売っても、利益は同じ200円です。これでは賃上げの原資は増えません。

賃上げのためにさらに値上げすれば、その値上げが社会を一周し、また仕入れ値や生活費を押し上げます。インフレと賃上げはイタチごっこになり、その間、設備更新や人材投資は遅れ、時間と成長機会が失われます。

食料品の消費税を極端に下げることには、生産者側の問題もあります。

農家や酪農家は、肥料、燃料、機械、資材、電気代、輸送費などに消費税を支払っています。一方、販売する食料品の税率が大きく下がれば、受け取る消費税は減ります。

仕入税額控除や還付の仕組みはありますが、還付までの間、事業者に資金繰りの問題が生じ得ます。価格転嫁できなければ廃業が増え、供給量が落ち、結局は食料品価格の上昇につながります。

もう一つ重要なのは、世代間格差です。

社会保険料や年金保険料は、主に現役世代に重くかかります。一方、消費税は、働いているかどうかに関係なく、全世代の消費に広く負担を求める税です。

社会保障財源を社会保険料に依存し続ければ、現役世代と企業に負担が集中し、手取り、雇用、賃上げを抑えます。

社会保障の財源を、労働への課税である社会保険料から、全世代や国内で消費する外国人にも広くかかる消費税へ移す。その上で、社会保険料と年金負担を下げる。

この方が、世代間の負担を平準化し、働くこと、雇うこと、賃上げすることへのインセンティブを高めます。

政治が見るべきなのは、レシートに表示される税額だけではありません。

社会保険料、企業の人件費、円安、通貨への信認、供給力、現役世代に偏った社会保障負担。これらをすべて含めて、家計負担を考える必要があります。

消費税減税は、目先の負担を軽く見せる政策です。しかし、そのツケを負うのは、結局、私たち国民自身であり、将来の子どもたちです。

平尾 正憲
平成生まれ、東京都三鷹市在住。現役世代の負担増と将来世代への責任を軸に、社会保障、税制、行政改革などを論じる。寛容と現実主義に基づく保守本流の言論を目指す。

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