現金化が強制されなければ投資で損をしないのだ

資産の価値とは、資産が将来において創造すると期待される現金の現在価値であって、資産の取得とは、その取得時点において評価される資産価値と、同額の現金とを等価交換することである。取得後、資産価値の評価額は、経済環境等の変化に応じて、変動していくから、投資における不確実性とは、原理的に、この投資対象の価値変動に関するものになる。

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資産は、市場で取引されるとき、価格が付与される。不特定数の市場参加者が公正な条件で取引するとき、即ち、誰も特別な情報の優位をもたずに取引するときに形成される価格は、市場参加者の平均的な資産価値評価を反映したものになる。しかし、価格変動の背後には、市場参加者の平均的な価値評価の変動に加えて、その心理的動揺、大口取引による需給の一時的な歪みなど、多種多様な要因が複合して作用しているから、資産価値の変動に関する不確実性は、資産価格の変動に関する不確実性の要因であるとはいえ、両者は異なるものになる。

投資においては、不確実性の管理は決定的に重要である。なぜなら、不確実性は損失の可能性なのであって、故に、投資の基本は、損失回避のための対策、あるいは最大損失を許容範囲内に抑えるための対策を講じることになるからである。不確実性の管理においては、理屈上は、価値の不確実性を重視すべきであるが、現象として観察されるのは価格の変動だけだから、価格変動が基礎にならざるを得ない。

しかし、価格の下落は、必ずしも損失ではない。簡単な例として、満期10年の国債があり、利息が満期時に複利計算で一括して支払われるとする。これを満期まで保有するとき、国家財政が破綻して償還不能にならない限り、投資時点で収益率は確定していて、損失の可能性はないが、その間、市中金利の変動に応じて、価格は不確実な変動を続けている。

この場合、価格の変動があっても、価値の変動はないのだから、10年の投資期間を変更しない限り、価格変動は無視し得るものになるが、何らかの事由で現金化する必要に迫られ、投資対象の国債を売却せざるを得なくなったとき、価格が下落していれば、損失が発生し得るわけである。故に、損失を回避するためには、現金化が強制される事態を回避しなければならないのである。

森本 紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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