党首討論で、忘れらていた消費税減税が争点としてよみがえった。高市首相は衆院選で飲食料品の消費減税の検討を加速すると公約したが、実務者協議で浮上したのは税率を1%に引き下げ、中低所得者に1%分を給付する「実質ゼロ案」だった。

日本経済新聞
玉木代表が消費減税にブレーキ
党首討論で国民民主党の玉木雄一郎代表は、飲食料品の消費税負担が1人当たり年間約4万円であることを確認したうえで、負担軽減そのものには賛成したが、1%案には問題が多いと指摘した。
農業者や免税事業者に新たな負担が生じる可能性があり、外食と持ち帰りの税率差も10%対1%に拡大する。そして何より、2年後に税率を1%から8%へ戻せば、中間層にとって大幅な増税になる。
玉木氏は「今は消費税を減税すべき時じゃない」と言い切った。代わりに住民税減税や所得連動型給付を実施し、将来の景気悪化時に機動的に消費税率を変更できる制度を整えるべきだと提案した。
減税ポピュリズムの先頭を切って消費減税を掲げてきた野党の代表が、インフレと金利上昇を前にブレーキを踏んだのだ。
チームみらいも減税撤回を要求
チームみらいの安野党首も、食料品の消費減税にはデメリットが多いと指摘した。税率を下げても店頭価格が同じだけ下がるとは限らない。農業や外食産業にしわ寄せが生じ、2年後には再び増税をめぐる政治的混乱が起きる。消費減税をやめ、所得連動型給付に一本化するよう求めた。
実際、税率を8%から1%へ引き下げても、企業が将来の値上げを前倒しすれば、店頭価格の下落幅は理論上の6.5%ではなく、その半分程度にとどまる可能性がある。
2020年にドイツが付加価値税を引き下げた際も、減税分の価格転嫁は約7割だったとの研究がある。高所得者ほど食料品の購入額が多いため、一律減税は生活困窮者に集中して支援する政策でもない。
高市首相は8月上旬まで先送りで撤退戦
これに対して高市首相は、消費減税を撤回しなかった。国民会議の結論が8月上旬になっても法整備には間に合うとして、7月いっぱい議論を続けるよう小野寺議長に求めた。結論を先取りせず、国民会議の取りまとめを尊重するという。
安野氏から「君子豹変す」と政策転換を促されると、高市首相もこの言葉を大切にしていると応じ、「先に言ったことが違っていたら改めて、最善の方策をとる」と述べた。これは消費減税を実施する決意表明というより、撤退戦の表明と見るべきだろう。
誰もやりたくないが首相だけこだわる減税
党首討論によって、死に体だった消費減税は確かにニュースの中心によみがえったが、政策として復活したわけではない。むしろ討論で明らかになったのは、推進する側よりも反対する側の論拠の方が具体的だったという事実である。
インフレが続き、長期金利が上昇する中で、財源も明示しないまま年間数兆円規模の恒久財源を失う政策を実施すれば、市場は政府にインフレを抑える意思がないと判断しかねない。しかも、2年後には税率を8%へ戻すという時限減税である。消費者にとっては最初に少し値段が下がり、忘れたころに大幅な増税がやってくる。
党首討論でよみがえったように見える消費減税は、政治日程から考えると不可能だ。8月上旬までに国会を開いて審議する見通しもなく、もう高市首相のメンツを守る以外の意味はない。







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