「どうせ転ぶんでしょ?」と、あなたは笑うかもしれない

AndreyPopov/iStock

「でも、転ばないなんて無理じゃない?」——はい、出た。

この台詞、もう何百回聞いたかわからない。整骨院でも、講座でも、なぜか飲み屋でも聞く。

正直に言おう。その通りだ。

どれだけ体操をやっても、転倒はゼロにはならない。ぼくの整骨院は再院率ほぼゼロを誇っているが、それでも転ぶ人はいる。ゼロは、無理。認める。

……で、話はここで終わらない。

ストレスゼロで一生歩ける! 5ミリの壁体操』(福嶋尊著)サンクチュアリ出版

歩き続けるために本当に大事なのは、「転ばないこと」だけじゃない。

転んだ、そのあと。ここで運命が、きれいに二つへ分かれる。

頭が真っ白になった、その先で想像してほしい。

あなたは今、地面に倒れている。
痛い。恥ずかしい。早く立たなきゃ。周りの視線が刺さる。
——頭の中、まっしろ。

わかる。ぼくもわかる。転んだことのある人間なら、全員わかる。

そしてこの「まっしろ」のまま焦って立ち上がる。これが、いちばんまずい。骨が折れていても、脱臼していても、無理に動けば一発で悪化する。

なのに、だ。病院でも本でも、みんな口をそろえて「転ばないようにしましょう」。

……いや、それはもう聞いた。何百回も聞いた。転んだあとの話を、誰かしてくれよ。と、ずっと思っていた。

「転ばない」より「大ケガをしない」

医療の現場では、あえて「転ぶ練習」をすることがある。脳梗塞のリハビリだ。

麻痺と付き合いながら「絶対に転ばない」なんて、無理。だから発想をひっくり返す。「転んでも、大ケガをしない」。そのための受け身を、みっちり練習する。

これ、あなたにもできる。

転ぶことそのものを恐れるんじゃない。転んでも壊れない体の使い方を、先に知っておく。 それだけで「転んだらおしまい」という呪いが、ふっと軽くなる。

不安が強いほど体はこわばって、皮肉なことに、よけい転ぶ。

逆に「もしものときはこうすればいい」と知っている人間は、足取りが軽い。強い。堂々としている。

転倒はゼロにできない。でも、被害は選べる。

まずはそこから始めよう。次回、具体的な「転び方」を教える。乞うご期待、というやつだ。

念のため言っておく。これは根性論じゃない。技術の話だ。知っているか、知らないか。転んだ瞬間、その差がまるごと出る。だから怖がる前に、覚えてしまえばいい。

※ここでは、本編のエピソードをラノベ調コラムに編集し直しています。

尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)

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