高い物価と仕事がないのは誰のせい?:世界に広がる急進的なポピュリズム政権

世界の世論を概観すると高い物価と就職への不安が押しなべて最も深刻な問題となっています。日本は例外的に就職が良いのですが、個人的には「上を作らない平等社会」が生み出した富の配分が上手に回っているのが理由だと考えています。

英国では新しい首相、アンディバーナム氏が下馬評通り就任しました。スターマー前首相と同じ労働党ながらも政策方針は真逆に近く、大きな政府を目指します。かつてマーガレット サッチャー首相は小さな政府を標榜し、英国を復活させた英国史上に残る大首相でありますが、バーナム氏はそのサッチャー氏を批判し、真逆の政策を掲げます。なぜそこまで反動的になるのでしょうか?

アンディ・バーナム氏インスタグラムより

個人的には今年初めにニューヨーク市長に就任したマムダニ市長と流れが似ているように感じます。つまり市民や国民の強い生活不満に対してそれを開放することを標榜する人に託す大転換であります。

サッチャーの小さな政府政策、ないしレーガン元大統領時代に見たアメリカ共和党の思想は政府部門をより小さくしながら民間の活力を引き出すという発想でした。経済学的には正しい理論にも聞こえるのですが、80-90年代までの理論だったのかもしれません。小さい政府と民間活力の導入は格差社会を作り、持てる者が持ち、99%の大衆を生み出したのです。これに社会はいよいよ我慢が出来なくなり、そこを再構築するためのリーダーを求めていたのかもしれません。

政治は民があってのものであります。その民が政治に強い不信感を持てば政権交代は当然あるわけで英国でも起こるべくして起きたとも言えるのでしょう。ではバーナム首相やマムダニ市長の政策は果たして中間層の引き上げができるでしょうか?

個人的には否、だと思っています。理由は「人間の欲望は政策では満たされないから」という抽象的な背景を考えています。英国は先進国の一つであり、長く世界トップを謳歌してきた歴史ある国です。ニューヨーク市は言うまでもなく世界のマネーと富豪が集まるところです。ここに住む人たちは基本的にスタンダードが極めて高いのです。このスタンダードは教育ベースと収入ベースが基本であり、大卒、院卒を含めた一定以上の高い学歴や職歴、あるいは高い年収を一時的にでも経験した人が多いのです。また高卒であっても情報を取り込み、自分なりにしっかり考える環境があり、近年の情報化の一環で多くの人たちの生活全般の知識レベルは高く、生活インフラの整備もあり、生活水準はたかいのです。

人間の性の一つに自分が一定のレベルに上がるとそれを下げられない「ラチェット効果」という経済理論があります。例えば普段買う食材をどこのスーパーで買うか、と考える時に日本ではあまりないのですが、訪米ではスーパーの質のランクが割と明白にあり、安いスーパーで値段で買うのは卒業し、より健康的で高品質なものにシフトしたい傾向はあり、それらの人はなかなか安いスーパーに戻れないのです。

私が見る英国人にしろニューヨーカーにしろ、かつて知ったおいしい経験を懐かしみ、その水準に戻してもらうことこそ良い政治である、と考えている節が見えるのです。しかし、そんなことできるわけがない、これが現実であり、弱肉強食を地でいったのが欧米経済であったのです。

これを今になって「食えないからもっとポピュリズムな政治をしろ」とするのは我儘であり、貪欲である、と私は思うのです。ましてやそこにいくら税金を投入しても経済のトリクルダウン効果は生じない、とほぼ断言してもよいと思います。

これは日本でも同じで、急速なポピュリズム政権は今世紀に入ってからだと思います。これもバブル崩壊で一度知った生活レベルを落とせない国民が政府にそのギャップを埋めるよう求めた結果とも言えます。

高市首相 首相官邸HPより

ここに国力の差が出てきます。ポピュリズムで民の不満を飴玉を与えることで抑制しつづけることが何時まで可能なのか、であります。私が見る限り、英国にもニューヨーク市にもないと思います。世界でそれが未だに可能なのは東京都だけじゃないかとも思ったりしてます。

では今日のタイトルである「高い物価と仕事がないのは誰のせい?」の答えは何か、といえば案外国民自身に問題があったのかもしれません。つまり自助努力の不足であります。例えばこのブログでは10数年前から日本にも物価高はやってくると指摘してきたはずです。ですがその頃はまだ激しい価格競争のど真ん中で、そんなことを主張するひろは阿呆と違うか、と思われていたのです。これがアリとキリギリスの話そのものなのです。

就職も欧米から中国まで散々です。何故か、といえば高位の学歴を取ったからには年収数千万円をもらえる仕事に就けないなら時を待つという人が増えてしまったからです。つまり自分を落とせないわけです。ただ、一部の人はそれに気がつき、AIとテクノロジーの進化に絶対に勝てないと思い始めた人が建設現場の作業員になってみる動きが出てきたのです。

私はこれもずいぶん前から自分を商品だと思い、就活で自分という商品をどう売り込み、どういう特徴があるかアピールできるようにしなさい、と何度も繰り返して述べてきました。今の日本ならば就職したければほぼすべての人がどこかに入れます。ですが、これも10年後にもそうなっているかは断定できないのです。

つまりこんな社会になったのは誰のせい、と言えば社会が進化したことであり、個々人がその変化のおいしい部分だけをむさぼり、苦い部分は見ないふりをしてきたことにあると考えています。どんな首相がでてもどんなポピュリズムな公約をする市長がいても物価高は収まらないし、就職市場が改善することもないのであります。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年7月23日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。

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