グーグルの親会社アルファベットが、史上最高益を計上した。2026年4~6月期の売上高は前年同期比24%増の1198億ドル、営業利益は30%増の408億ドルだった。純利益は約4倍の1121億ドルに達した。とりわけGoogle Cloudの売上高は82%増の248億ドルとなり、AI需要の爆発的な拡大を裏付けた。(Q4 206)
ところが決算発表後、アルファベット株は時間外取引で一時3%程度下落した。最高益でも株価が上がらない。これはAIバブルが新しい段階に入ったことを示している。

最高益の大半は「含み益」
まず注意すべきなのは、1121億ドルという純利益の中身である。アルファベットの本業の営業利益は408億ドルだったが、株式などの保有資産から生じた「その他収益」は980億ドルに達した。このうち株式評価益は990億ドルで、税引き後の純利益を771億ドル、1株利益を6.26ドル押し上げた。(Q4 206)
つまり史上最高益のかなりの部分は、広告やクラウドから現金を稼いだ結果ではなく、保有株式の価格が上がったことによる未実現利益である。
この評価益を除いた調整後1株利益は2.85ドルにとどまり、市場予想の2.89ドルをわずかに下回った。決算の見出しは「純利益4倍」だが、投資家が見ていたのはその内側だった。(Reuters)
保有株の値上がりで利益が膨らむのは、企業にとって悪いことではないが、これは多分にAIバブルの影響だ。AI企業への投資で生じた含み益は、バブルが逆転すると危ない。
「金のなる木」が金を吸い始めた
より重大なのはキャッシュフローである。アルファベットの営業キャッシュフローは391億ドルだったが、設備投資は449億ドルに達した。この結果、フリーキャッシュフローは約59億ドルの赤字となった。四半期ベースでフリーキャッシュフローがマイナスになったのは初めてである。(Q4 206)

しかも同社は、2026年の設備投資計画を従来の1800億~1900億ドルから、1950億~2050億ドルへ引き上げた。AI用データセンター、半導体、電力設備を増強しても、需要がそれを上回っているという。(Reuters)
かつてグーグルは、検索サービスを世界中に広げても追加費用があまり増えない「資産の軽い会社」だった。一度検索エンジンを構築すれば、利用者が増えるほど利益率が高くなる。それが巨大な広告収益とキャッシュを生んできた。
だが生成AIは違う。回答を1回生成するたびに、高価な半導体と大量の電力を消費する。より優れたモデルを開発するには、さらに巨大なデータセンターが必要になる。
グーグルはソフトウエア企業から、発電所と半導体工場を背負ったインフラ企業へ変わりつつある。売上高が増えても、それ以上に設備投資が増えれば、株主の手元に残る現金は減る。
AI投資は軍拡競争になった
問題は、グーグルだけが設備投資を止められないことだ。マイクロソフト、アマゾン、メタ、オラクルもAIインフラへの投資を急増させている。米巨大IT企業5社の設備投資予想は、2026年1月時点の約4850億ドルから、7月には約7300億ドルへ膨らんだ。現在の軌道が続けば、5社の設備投資額は2027年にフリーキャッシュフローの合計を上回る可能性がある。(Reuters)
各社には投資を抑えるという選択肢がない。設備投資を減らせば、モデル性能やクラウド容量で競合に負ける。投資を続ければ、キャッシュフローが悪化する。これは典型的な軍拡競争である。全社が勝者になることはできないが、誰も先に降りられない。
グーグルはGeminiの利用者を増やし、クラウド事業も急成長させている。その一方、最先端モデルの投入遅延や、コーディング分野でOpenAIやAnthropicに後れを取っているとの懸念もある。巨額投資をしても技術的優位が保証されているわけではない。(Reuters)
バブルは利益が消える前に崩れる
今回の株価下落は、AI需要が消えたことを意味しない。クラウド売上高が82%増えた以上、需要は現実に存在する。
しかし、需要があることと、現在の株価を正当化できることは別問題である。バブル崩壊は、企業が赤字になった瞬間に始まるとは限らない。むしろ最高益を出しても株価が上がらなくなったときに始まる。市場参加者の関心が「どれだけ成長するか」から、「その成長のためにいくら使うのか」へ移るからだ。
ドットコム・バブルでも、インターネットそのものが偽物だったわけではない。技術は社会を変えたが、投資家が期待した速度と利益率では現金を生まなかった企業が多かった。AIも同じ道をたどる可能性がある。AIは本物だが、AI株がすべて適正価格とは限らない。
グーグルの本業は依然として強く、営業利益率も34%ある。すぐに経営危機になる会社ではない。それでも、史上最高益を発表しながら株価が下がった事実は重い。投資家はもう、「AIにいくら投資するか」では感動しない。「その投資から、いつ、どれだけの現金が戻るのか」と問い始めている。
AIバブルが崩壊するとすれば、その号砲は赤字決算ではない。最高益でも売られる決算なのだ。







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