高市早苗首相が悲願としてきた飲食料品の消費税減税が、政権浮揚策ではなく「高市降ろし」の引き金になりつつある。

政府は「骨太の方針」に、飲食料品の消費税減税について「8月上旬までを目途に方針を決定する」と明記した。現在検討されているのは、2027年4月から2年間、税率を8%から1%に引き下げ、給付と組み合わせて「実質ゼロ」にする案だ。
公約を守れば政権が危うくなる
高市首相にとって消費減税は、2月の衆院選で掲げた看板公約である。ここで撤回すれば、「選挙が終われば公約も終わり」という批判を浴びる。内閣支持率はすでに下落しており、官邸は減税断行を政権浮揚の切り札と考えているようだ。
しかし、自民党内には消費減税に反対する議員が多く、財源も決まっていない。超党派の社会保障国民会議でも、与党の減税案と野党の現金給付案の隔たりは埋まっておらず、結論を首相に丸投げする案まで浮上している。
つまり高市首相は、自ら設置した会議の結論を無視して減税を決断するか、公約を撤回するかという二者択一を迫られている。
減税がインフレ・円安を加速させる
今はインフレ・円安の局面ある。財源なき大型減税を行えば、需要を刺激して物価上昇圧力を強める。国債発行で穴埋めすれば、長期金利が上昇する。財政への不安が強まれば、円安が進む可能性もある。
政府が6月末に示した「骨太の方針」の原案では、財政健全化の文言が削られ、日銀の利上げを牽制するような記述が盛り込まれた。市場では財政拡張への警戒から円安と長期金利上昇が進み、「骨太ショック」とまで呼ばれた。
この状況で高市首相がさらに財源不明の消費減税を決めれば、円安・債券安・株安の「トリプル安」を招く恐れがある。
減税で一時的に食品価格を下げても、円安によって輸入物価が上がれば、その効果は相殺される。物価高対策のための減税が、別の物価高を生み出すのだ。
減税の混乱の責任を負わせて退陣に追い込む
自民党内では、減税を高市首相に決断させ、その混乱の責任を首相に負わせるシナリオも出ている。党内には反高市感情を持つ議員が少なくない。「高市首相との無理心中」を避ける動きが出ても不思議ではない。
財政規律派にとっては、減税に反対して高市首相と正面衝突する必要はない。首相に好きなように減税させ、円安や金利上昇が起きたところで責任を追及し、退陣に追い込めばいい。
高市首相にとって最悪なのは、党内の反対を押し切って減税を決めたのに、実施は翌年4月なので国民が効果を実感できず、市場への悪影響だけが先に現れる展開である。
減税を撤回すれば公約違反、強行すれば市場と党内を敵に回す。8月上旬の消費減税決定は、高市政権を救う「成長のスイッチ」ではなく、退陣のスイッチになるかもしれない。







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